今回は、職種に合わせた表現法です。
これまでは、質問の意図とその攻略を主軸に進めて来ましたが、ここでは戦略的な側面から進めて行きます。
オールマイティーな書類は存在しない
先に言っておきますが、オールマイティーな応募書類など、書こうとしても書けません。
多くの人が、志望動機以外は同じ内容にしていますが、実はとても効果的な方法とは思えません。
事業内容や職種が違えば求める人材像も違って当然です。しかし、志望動機だけをそれに合わせて書いても、大半の文章はどこにも通用する内容になっているので、的が外れているかも知れないのです。
企業は、「本当にこの会社に入りたい。」「この仕事がしたい。」と思っている人を探しています。
また、採用担当者は、毎年何通もの応募書類を読んでいるので、書いた人の意気込みや志望度などは、大体想像が付くものです。
最も悲しいのは、本当に熱望しているのに、その思いが伝わらない事です。
では、どの様に書けば良いのかを紹介します。
基本手順
応募書類を作成する際には、実際に書く前に幾つかの戦略的な情報収集が必要となります。
企業訪問や説明会などの企業研究の中で、特に注意を払って頂きたいのが職種に関する情報収集です。
職種を意識した文章作りとは、質問毎に回答を考えるのではなく、一枚の応募書類全体で自分のイメージを伝える事を意識した文章作りの事です。
一般事務・経理事務・受付・営業・販売・サービス・介護など、同じ会社でも職種によって求めているスキルや人材像は違います。
この手法は、履歴書でもエントリーシートでも同様ですが、以下の4つの手順が基本となります。
①企業研究や各質問の内容から、企業側の求める人材像探る。(自分なりにイメージする)
②自分のどの部分が、その人材像にマッチしていると思うのかを選択する。(伝えたい情報を絞る)
③適切なエピソードを選択する。(経緯・実例・瞬間描写の選択)
④マッチしていると思う部分を伝えるために、どの質問で何を表現するのかを決める。
POINT
基本手順で肝心なのは、まず自分自身がどう考えているのかに忠実になる事です。
勿論、正解などありませんが、自分が納得できる内容かどうかが大切です。
また、はじめから魅力のある文章を書こうと意気込むと、相手に気に入られるための文章作りになってしまい、自分の言葉にならないので、はじめは自分の思う通りに書いてみる事です。
応募書類は貴方の分身です。従って自分の思う事を素直に書くのが大前提となります。
アレンジと再構成
基本手順の次は、他者の評価を参考にアレンジしたり、回答の再構成を行う事です。
その際重要なのが、基本手順の②がちゃんと相手に伝わるかどうかという点を確かめる事です。
例えば、自分では「機敏な行動力」を伝えたいと考えていても、読んだ相手が「行動力は伝わると思うが機敏さはよく分からない。」という評価なら、もっと違う表現で”機敏さ”をアピールできるよう、アレンジするか、別のエピソードで再構成するかを考える必要があるという事です。
アレンジと再構成を考える上で有効なのが、大学の就職課や専門家に添削を受ける事です。
友人や知人に読んでもらう事も重要ですが、書き始めの時期(書き慣れる)までは、専門家の添削を受ける事をお勧めします。
添削とは、単に漢字の間違いや文法のチェックをするだけでなく「書き手の気持ちが文章に出ているか」という視点で行うのが普通です。
従って添削をする方は、単なる良し悪しではなく、なぜこのような文章にしたのかを、会話を通して確かめながら進めるので、書いた方も、そこで自分の書いた文章を再確認しながら見直すことができ、新たな発見やアイデアが生まれやすくなります。
POINT
添削を受ける時の心得として、まず大前提となるのが「謙虚さ」です。
謙虚さとは、単に控えめな態度を取る事ではなく、相手の下に入り教えを乞う姿勢の事です。
どのような評価や指摘を受けようが、自分自身の向上のためのヒントを得る事ができると信じて添削を受ける事です。
大袈裟かも知れませんが、この姿勢はそのまま仕事に必要なスキルでもあります。
但し、添削者との相性というものもあります。
自分がどうしても納得がいかない時や、添削者が文章を作るような場合は、他の人に相談した方が良いと思います。
自己イメージの確立(その気になる)
以上の手順を踏まえ、職種に合わせた書類作成の最終仕上げは、一言で表現すると「その気になる」という事です。「書いた本人なので当たり前」と言う声が聞こえて来そうですが、実際に会ってみると、
書類を読んで感じたイメージよりも評価が低くなる人は以外に多いのです。
自分に自信があるかのように書いている人が、面接では小さな声で顔も俯き加減、というケースは多くの採用担当者が経験しています。
本当の自分を表現しているのであれば、自信を持ってなり切る事です。
履歴書の具体例
ここでは、履歴書の例文を2つ紹介しますので参考にしてみて下さい。
志望する企業や職種によって伝えたいイメージを微妙に変える事で、それぞれの志望度の高さをさらに強くアピールしている点や、同じエピソードでも、角度と的を変えて表現する事で、相手に与える印象も変わるという点を分かってもらえると思います。
しかし、ここに紹介する例文は、表現の違いを分かりやすく説明するために多少の演出を加えているで、「現実感」や「身近な例」という点では少し疑問がある人もいるかも知れません。
あくまでも、職種に応じた書き方の、一つの例として紹介します。
また、同じ人間が書くので、人柄が全く変化する訳ではありませんが、自分の全てを一枚の応募書類だけで伝え切る事など出来ないので、最も効果的に印象付ける方法として、自分の中の最も伝えたい一面に的を絞って書く手法を紹介します。何度も言うように、応募書類は1社1枚が基本です。
貴方にしか書けない、魅力のある書類を作成して下さい。
例文1【事務職編】応募先:地元中小企業/食品卸売業
研究課題または興味ある科目
私は、6名の仲間と「裁判員制度の課題と対策」という研究課題に取り組んでいます。その中で私はアンケート作りを担当し、現状の問題点を明確に把握でき、なお且つ対策のヒントとなるような質問作りに悪戦苦闘しました。今後社会人の方500名に回答を得て、この制度に皆がもっと積極的に関れる社会にするための、私なりの対策案を考える予定です。
課外活動又は学外活動
私は「食育の会」というボランティアに参加しています。小学生に、食品の製造過程を紹介する活動をしており、今春から紹介パネル制作のチーフを務めています。18名で模造紙20枚を約2カ月かけて制作するのですが、皆のモチベーションを維持するのが最大の課題です。そのためには、まず自分自身が本当に楽しんで活動している姿を示す事が大切だと考えています。
趣味・特技
気の合う友人と「節約旅行」を楽しんでいます。私は限られた資金と時間で最大限の喜びを味わうのが大好きなので、旅行プラン作りに励んでいます。
資格・免許など
・パソコン検定1級: エクセルでは、データの整理やグラフ作成が得意です。
ワードでは、旅行の日程表などを作るのが好きです。
現在はパワーポイントを勉強しています。
・普通自動車1種免許(AT車限定)
・TOEIC 610点:現在800点以上を目標に猛勉強中です。
自己の特徴
忙しさは私にとって『栄養』です!! 私は、周囲の人から「常に忙しい人」と言われており、いつも時間に追われています。ボランティア活動やゼミでの研究の他に、週4日のアルバイトと多忙な毎日ですが、役割を担える事が自分の成長に繋がると信じて、スケジュール帳に予定を書き込む毎日を楽しんでいます。また、忙しい分だけ人の役に立てているとも考えています。
私は常に誰かの役に立ちたいと願っているので、どんなに忙しくても「忙しいのではない、必要とされているのだ。」と言い聞かせています。
志望動機
『スタッフのお母さん的存在になる事』が私の目標です。
私は、事務員に一番大切な事は「たのもしさ」だと感じています。正確さと俊敏性、さらに周囲への気配りも兼ね揃えている人こそ、たのもしい事務員だと思います。貴社の目指しておられる「顧客に頼りにされる存在」にも、この考えは当てはまると考えます。そのために私は、何事にも積極的に、且つ謙虚に取り組み、あらゆる経験を積む事で、お客様やスタッフの方々に信頼を得て、将来は頼もしいお母さんのような存在になります。
◆求められている人材像の推測 ⇒ テキパキ働く・正確で丁寧・明るい元気・素直・勤勉
◆伝えたい情報 ⇒ 明るい自分・目標を持って頑張る・役割を担っている自分・勉強好きな自分
例文2【営業職編】応募先:食品系の商社、海外拠点もあり貿易も行っている
研究課題または興味ある科目
裁判員制度について研究しています。裁判員への関心度などを調査するため500名分のアンケートを作り、社会人の方に回答を頂く活動を行っています。今のところ「自分は裁判員にはなりたくない。」という意見が7割を占めています。私は、この制度に皆がもっと積極的に関れる社会にするためには、私達の様な若い世代が真剣に社会に向き合う事が重要だと感じています。
課外活動又は学外活動
私が参加している「食育の会」というボランティアでは、年に4回小学校で食品の製造過程を紹介する活動を行っています。私は幼い頃から園芸が好きで、知人の農家を訪ねては野菜の作り方や苦労話を聞くのが楽しみだったので、後輩達にも食物を作っている方々の想いや、有り難さを伝えたいと思っています。準備は大変ですが子供達の笑顔が何よりのご褒美です。
趣味・特技
よく歩きます。通学をはじめ、一寸した移動は全て徒歩で行います。体力作りや気分転換、さらに学習に大変効果があるので、今後も続けたい習慣です。
資格・免許など
『目指せ海外赴任!!』 得意の英語を活かして海外で仕事をするのが私の夢の一つです。そのために現在TOEIC800以上を目指して猛勉強中です。会話の基本は聞く事からと考え、洋画を字幕無しで観る訓練も始めました。あい間の時間は全て英語で埋め尽くす毎日です。また、ビジネスでも通用する英語力を身に付けたいので、世界経済の勉強も並行して行っています。
自己の特徴
私は、やりたい事はやる性格です。周囲の人から「常に忙しい人」と言われており、いつも時間に追われています。興味のあるボランティア活動やゼミでの研究の他に、週4日のアルバイトと多忙な毎日ですが、役割を担える事が自分の成長に繋がると信じて、スケジュール帳に予定を書き込む毎日を楽しんでいます。また、限られた時間を有意義に過ごす為に、常に先を考えて行動する習慣も身に付ける事が出来ました。私にとって忙しさは”栄養”です。社会に出てもこの姿勢を持ち続けたいと思います。
志望動機
『世界と福岡の架け橋になりたい!!』という夢を実現するためです。
私は地元愛が強く、大好きな福岡の食文化を世界に広げ、地球規模で福岡のファンを増やしたいと考えています。貴社海外事業部の主力である九州食文化の世界進出計画は、まさに夢の実現に繋がる魅力的な仕事の一つです。 2年以内に現地調査員になり、5年後には企画開発チームの一員になる事を目標に、勉強と挑戦の日々を過ごしている自分を想像しています。「いつでも・どこでも・何にでも」をモットーに仕事に打ち込みます。
◆求められている人材像の推測 ⇒ 自分を明確に持っている人・実行力・挑戦心・タフな人
◆伝えたい情報 ⇒ 目標を持って行動する自分・時間管理能力・実行力・夢を持っている自分