今日は地震で起き、外は雨上がりの曇り空、。家でたまってしまった、録画の取り崩しにかかった。
手始めに4月28日にNHKのBSで放映された、モーツァルトの「後宮からの逃走」を見た。最初にメイキングVTRが放映された。昨年のザルツブルグ音楽祭で話題をさらっただけのことはあり、凡人には思いもつかない発想のオンパレードだった。冒頭の旅客機の離陸シーンから演奏会場がザルツブルグ空港の格納庫であることを知らされる驚き。そしてTV撮影のロケではなく、同時進行の状況を観客はワイヤレスイヤフォンで聴き、オペラの進行に合わせ、場面に移動して観る。と言った作成現場の舞台裏までがオペラ観賞の対象とする試みだった。しかも観客はワイングラス片手にオペラの進行に合わせ動きまわり、立って聴いたり、ソファーで見たり思い思い勝手に動いている。したがって観客も画面に登場する。観客の人選はどのように行われたのかは定かでないが、いづれもが紳士・淑女と思われる人たちだった。
しかも当初コンスタンツェ役とされたダムラウが直前のキャンセルも話題の種だが、当代随一のプリマドンナにしてみれば、口パクで後録(or前録)で演技だけならわかるが、この環境で同時進行は拒否して当然と言えるかも。しかも演出は、近時のバイロイト演出同様、牽強付会の解釈で、ファッション界の大御所に囲われ者となったコンスタンツェの救出劇に改変されてしまった。反面この演出を許すスポンサーがいることもすごいし、お金を出して出かける人がいることもすごいことだと思うが、私はついていけない。
肝心の音楽もモーツァルトの良さが響かなかった。一人オスミン役のクルト・リドルが歌も演技も際立って存在感があった。驚くべきはこのTVオペラがすぐにBD,DVDで発売されたことだ。正直買う人がいるのかと思うが、世の中捨てるものがいれば、買うものもイル。多様性が認められてこそ文明社会なのだろう。其の意味ではヨーロッパの文化は深い。私も歳をとってしまった・・・・・・・・・・・。
・モーツァルト:歌劇『後宮からの逃走』全曲
コンスタンツェ:ベルモンテの婚約者/デジレ・ランカトーレ(ソプラノ)
太守セリム/トビアス・モレッティ(セリフ)
ベルモンテ:スペインの貴族/ハビエル・カマレーナ(テノール)
ブロンデ:コンスタンツェのイギリス人の召使/レベッカ・ニールセン(ソプラノ)
ベドリッロ:ベルモンテの召使/トーマス・エベンシュタイン(テノール)
オスミン:太守の監督官/クルト・リドル(バス)
ザルツブルク・バッハ合唱団(合唱指揮:アロルス・グラスナー)
カメラータ・ザルツブルク
ハンス・グラーフ(指揮)
演出:エイドリアン・マルトハーラー
収録監督:フェリックス・ブレルザック
衣装:レナ・ホシェック
収録時期:2013年
収録場所:ザルツブルク音楽祭、
私の手持ちあれこれ
私が最初に聴いた全曲は、学生時代だ。お金がなく当時国内盤より安く入手できた輸入盤あさりで見つけた、ヨゼフ・クリップスとウィーン国立歌劇場盤だった。これはかの雑誌レコード**でも評判はいまいちで、しかも手にしたのは作りの雑な悪名高き米国版の廉価盤セラフィム盤だった。何せ、レコードのラベルが、平気で順序がでたらめに張り付け私の購入したのは3幕が二度出てくる代物だった。でも安物LPプレイヤーできく分にはあまり抵抗はなかった。むしろモーツァルトのオペラ全曲が聴けたことに満足した。いま改めて聞くと、クリップスとウィーンの響きが素敵なのにクリップスはウィーンを追放されたわけがわからない。
オペラとして映像を観たのはLDでのカールベームとバイエルン国立歌劇場だった。世評どうり素晴らしい。おそらくこの歌劇の良さ=ピーター・シェファーが映画アマデウスでのべた、ドイツ民衆のための歌芝居の最高表現に思える。
ここでのキャストも粒ぞろいで歌も演技も申し分ない。惜しむらくはベルモンテのアライサが歌はともかく演技がちょっとという感じだが、ないものねだりだろう。オスミン役のタルヴェラは見る前はミスキャストと思っていたが、役作りができていた。
モーツァルト:歌劇『後宮からの誘拐』全曲
コンスタンツェ:エディタ・グルベローヴァ
ベルモンテ:フランシスコ・アライサ
ブロンデ:レリ・グリスト
ペドリッロ:ノルベルト・オルト
オスミン:マルッティ・タルヴェラ
セリム:トマス・ホルツマン
合唱:バイエルン国立歌劇場合唱団
管弦楽:バイエルン国立歌劇場管弦楽団
指揮:カール・ベーム
演出:アウグスト・エファーディング
収録:1980年4月、バイエルン国立歌劇場
個人的には私の1オシはシュべチンゲン音楽祭の実況版だ。NHKの録画を楽しんでいたが、EuroArts盤のDVDをバーゲンで800円で購入し、コストパフォーマンス的には最高に楽しめる。ハンペの演出が、明暗を心理面に対比した舞台作りが素晴らしい。またオスミン役のクルト・リドルがの存在感は舞台に溢れブロフォビィッツの掛け合いは見事だ。惜しむらくは女声陣がベーム盤にくらべ見劣りすることか?
・モーツァルト:歌劇『後宮からの誘拐』全曲
太守セリム:マティアス・ハービヒ
コンスタンツェ:ルース・アン・スウェンソン
ブロントヒェン:マリン・ハルテリウス
ベルモンテ:ハンス・ペーター・ブロッホヴィッツ
ペドリッロ:マンフレート・フィンク
オスミン:クルト・リドル
南ドイツ放送合唱団
シュトゥットガルト放送交響楽団
指揮:ジャンルイージ・ジェルメッティ
演出:ミヒャエル・ハンペ
収録時期:1991年5月12日
収録場所:シュヴェツィンゲン、ロココ劇場
ショルティ盤はモジンスキーの舞台からして美しい、また登場人物が舞台に映える。中でもオスミン役のクルト・モルの存在感が際立ち他を圧倒して、その分他者が貧弱に感じてしまうのが惜しい。ショルティの推進力のある音楽も素晴らしい。
・モーツァルト:歌劇『後宮からの誘拐』全曲
太守セリム:オリバー・トピアス
コンスタンツェ:インガ・ニールセン
ブロントヒェン:リリアン・ワトソン
ベルモンテ:デオン・ウォルト
オスミン:クルト・モル
コヴェントガーデン歌劇場合唱団
コヴェントガーデン歌劇場管弦楽団
指揮:ゲオルグ・ショルティ
演出:エリシャ・モシンスキー
収録時期:1987年11月
収録場所:コヴェントガーデン歌劇場
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