とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

歌劇「ルル」の魅力 

2007年02月11日 | オペラ
ベームのルルは原曲だが、未完に終わった「切り裂きジャック」のクライマックスは組曲で締めていた。
このCDの良さはカール・ベームの職人芸の極致だろう。ただF・ディースカウもイブリン・リアーも声だけでこのオペラを表現するのは至難だ。というよりは声だけではこのオペラのストーリーすら理解できない。ヴォツェックほどには満足感が得られなかった。
したがって、ブーレーズがパリでツェルハ補作の完全版の初演し、その後CDが出た時も購入をためらった。
だがそれがDVDとなると話は違った。このDVDはブーレーズとP.シェローのバイロイトのリングのコンビなので舞台に期待したが、肩透かしを食った。
ストーリーに至極忠実で、驚いた。このDVDではT.ストラータスの演技に見惚れた。この人は映像の人だと思う。CDでの彼女の歌声は知らない。私自身彼女を知ったのはLDの時代だ。サロメも、椿姫もコシでも彼女は光る。
余談だがなぜ日本での人気が無いのか不思議だ。個人的にはパバロティとドミンゴを敵に回し、道化師と外套を演じた彼女が省みられないのは残念だ。
いずれにしても「ルル」は彼女が原点となった。惜しむらくは映像の鮮明さが欲しかった。

最近NHK BSHiでの放映を録画したDVDを見直した。
’96年のグラインドボーン音楽祭のLIVE:初々しく登場し、魔性の女へと変貌する様を演じるクリスチーヌ・シェーファーの魅力に尽きる。ストーリーのどぎつさを舞台の円形・回転を利用し明るい舞台でオブラード包んだ演出が私には好ましく思えた。
’02年のチューリッヒ歌劇場の二幕原典版ではシェーファーとは対照的に、ローラ・エイキンのルルは暗めの舞台に端から魔性の女として登場する。
場面展開での映像の多様とむき出しのそれこそ体を張った演技する様は正しく近代舞台芸術だ。歌手にまで肉体美を要求する時代なのかと思うと「ごくろうさん」と声を掛けたくなる。
「ルル」の表現はどこまで広がるのだろうか、今後の楽しみでもある。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿