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海と毒鉄

2007-07-26 00:24:17 | essay
アクアポリスを知っているだろうか。

1975年7月19日~1976年1月18日の間、沖縄国際海洋博覧会が開催された。
1945年(昭和20年)アメリカの統治下に入り、1972年(昭和47年)5月15日、日本に復帰するまで、実に27年間。沖縄の発展を願う人々も多かった筈だ。そんな中での海洋博開催は、役所主導のご都合主義でありながらも、それでも希望を感じさせるものではなかったろうか。入場者は約348万人を数えた。

この海洋博、大阪万博と比べると、施設としてはこれといったものも無かったらしい。ただ、唯一、このアクアポリスは例外とされている。
アクアポリスは、海洋博に際し建造された「半潜水型浮遊式海洋構造物」である。ポリスは「都市国家」であるから、人間が居住する空間であり、それが海に浮き、移動し、半潜水するという、ある意味トンデモな巨大人工物である。
総工費約130億円、縦横約100m、高さ約30m、海洋博では約200万人が同施設を訪れた。

俺がここを訪れたのは1988年(昭和63年)。当時既に錆が酷い状態だったが、その巨大さと海上石油採掘施設のような無骨で不気味な風貌にゾクゾクした。中に入ったことは覚えているが、内部の様子は殆ど覚えていない。水中を覗ける丸窓があったこと位だろうか。俺が訪れた数年後、1993年11月に閉鎖。2000年10月23日に解体処分されるために中国上海へ移設された。海洋博終了後、国・県・公社・第三セクター・株式会社とたらい回しにされていたらしい。結局は1400万円の鉄屑となる運命に。

少し調べてみようとぐぐってみたが、やはりデジカメもインターネットも無かった時代。ほとんど資料が無い。また、掲載されたリンク先も404が多い。数少ない資料から判明した事実をここにメモしておく。
余談だが、新聞社のウェブサイトというのはどうにも気に喰わない。過剰なまでに著作権を主張し、古い記事をどんどん消す。要するにケツの穴がちっこい。こういう守りの姿勢は自滅を招く。分からんかね。分からんやろね。

現在では、世界最大のアクリルパネルを備える大水槽にジンベイザメが泳ぐ沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館などの施設が建設され、話題を呼んでいる。

それにしても、巨費を投じたあれだけの巨大建造物があっさり廃墟と化しスクラップになるとは。もてあますのも仕方ないか。寂しい気もするが、廃墟としてのアクアポリスのほうが、よりロマンチックな気もする。或る公共事業の墓標として沖縄の海で朽ち果ててゆく姿を見たかった。それだけが残念でならない。



kokonoさんの旅行記 >> ◆アクアポリス◆
http://4travel.travel.msn.co.jp/e/msn/traveler/kokonofukuoka/album/10044162/
海洋博開催当時のスナップ写真。


CiNii - アクアポリスの設置まで (沖縄海洋博 : 完成されたアクアポリス) (主集 50年度秋季大会(関東)研究協議会・研究懇談会課題)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003779863/
[PDF] http://ci.nii.ac.jp/cinii/servlet/CiNiiLog_Navi?name=nels&type=pdf&lang=jp&id=ART0004786673
http://ci.nii.ac.jp/cinii/servlet/CiNiiLog_Navi?name=web&tourl=webcatplus-equal.nii.ac.jp%2flibportal%2fDocDetail%3ftxt_docid=NCID%3AAN00079427
概要が記された論文と掲載誌。

海洋政策研究財団:ニューズレター
http://www.sof.or.jp/ocean/newsletter/032/a01.php
(2008-09-09 追記 URL変更 http://www.sof.or.jp/jp/news/1-50/32_1.php)
当時、建造に反対していた元技術者の総括。

沖縄タイムス 社説 2000.10.24
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20001024.html
アクアポリスがタグボートで曳かれていった翌日の社説。
(2008-09-09 追記 魚拓 http://megalodon.jp/?url=http%3A%2F%2Fwww.okinawatimes.co.jp%2Fedi%2F20001024.html&date=20070725222810)

沖縄国際海洋博覧会(海洋博) 沖縄観光情報 Webサイト:真南風プラス (財)沖縄観光コンベンションビューロー
http://www.ocvb.or.jp/card/ja/0000201049.html
現在の記念公園について。

Amazon.co.jp: 公式長編記録映画 沖縄海洋博: DVD: ドキュメンタリー映画
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FUTUVU/
http://db.geneon-ent.co.jp/search_new/show_detail.php?softid=451166
2006/07/21 発売