斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(15) 【クラウドファンディング】

2020年09月16日 | 言葉
 近頃よく見聞きするコトバである。ウイキペディアによれば、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、「不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと」という意味。コンピューターネットワークを経由することからクラウドコンピューティング(cloud computing)の「cloud(雲)」と誤記されやすい。
 大別すると、金銭的リターンのない「寄付型」、金銭的リターンが目的の「投資型」、権利や物品購入の形で支援する「購入型」の3種。国もアベノミクス政策の一環と位置付けて2014年5月の国会で金融商品取引法を改正、後押ししている。

 最近、全国紙のスポーツ欄で、こんな記事を見かけた。「2000安打達成」が迫ったジャイアンツ坂本勇人選手を応援するため、球団親会社の新聞社が企画し、応募者への返礼として「ライオンハヤト」のぬいぐるみ(高さ53センチ)に記録達成を伝える特別紙面を添え、応募者へ届けることになった--と。「2000」並びで2000個限定。筆者も坂本選手の大ファンゆえ応募しようかと考えたが「価格2万円」とあるのを見て諦めた。値段の方は「2000」の10倍。残念そうな孫の顔が浮かぶが、年金暮らしに2万円は痛い。

 これなどは「購入型」だ。従来なら「記念グッズ販売」の見出しの記事で済ますところを、クラウドファンデングという目新しい(?)コトバに絡ませた点がミソ。形は違っても中身は変わらない。こんなコトバの使い方もあるわけだ。親会社はコロナ禍の時代にあっても黒字と聞く。であれば看板選手の「2000安打達成」を、もう少し太っ腹に祝ってあげても、よろしかろうに。