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気ままに生活してるシニアの残日録

映画「コレクティブ 国家の嘘」を観る

2023年06月18日 | 映画

自宅で映画「コレクティブ 国家の嘘」(2019、ルーマニア・ルクセンブルク・独、アレクサンダー・ナナウ監督)を観た。この映画は、2015年10月30日にルーマニア・ブカレストのライブハウス「コレクティブ」で起きた火災により60名以上の若者が死亡し、多数の人が負傷した事故の原因について政府を追及したスポーツ新聞記者と政府の新しい保健大臣になった若手改革政治家をめぐる物語だ。

火災により27名の若者が死んだ、しかし、その後本来助かったはずの若者が次々と病院で死亡し、死者は60名以上になった。そして病院の内部者から弱小スポーツ新聞社に通報があり、病院の診療態勢は不適切で、製薬メーカーからの消毒液を何倍にも薄めて使って院内感染が発生していたのがわかった。製薬会社も認可を受けた消毒液の希釈倍率を守っておらず、この薬を認可した当局もなぜ認可したのかハッキリしない。

それぞれの関係者が患者の救済より利益の確保を重視し、賄賂、腐敗、事実隠蔽などをして既得権を不当に維持していたことが次々と暴かれていく。病院経営者は腐敗していたが医療従事者の良心は残っており、内部告発により事態が明るみに出るというところが唯一の救いだ。

そして疑惑が報道されると政権は倒れ、医療担当の保健大臣もウィーン出身の若手の大臣となる。この新大臣が制度改革を目指すが、既得権益者からあらゆる妨害を受ける。新聞社にも記者の家族にも何が起こるかわからない脅迫も届く。ところが、改革の途中で選挙が行われ、問題を放置していた政党が再び多数をとり政権につくことになった、この結果を聞いた記者たちと改革を推進してきた保健大臣は・・・・

この映画で毅然と政権の不正を追及したのが弱小新聞社だということが意味深である。大手新聞社も既得権益者であり、例によって見て見ぬふりをしていたのだろうか。

ルーマニアという国は今まで全く知らなかった。ちょっと調べてみると、オスマン帝国の傘下、そこから独立、王制、王制廃止・共産主義体制、政変により共産主義廃止、NATO加盟、EU加盟という変遷で、激動の歴史を有している。現在は共和制、議会制民主主義、日本とも外交関係・経済関係もある。医療体制が政府も含めてこんな状態でEU加盟の条件を満たしているのか疑問だが、今後、少しルーマニアのことも勉強しないといけないと思った。