ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

池袋に映画を観に行って(その2)

2023年09月03日 | 映画

(承前)

さて、今日池袋で観た映画は、最近改装された新文芸座の「トスカの接吻」(1984、スイス、監督ダニエル・シュミット、原題Il Bacio Di Tosca)だ。シニア料金1,100円、30人くらいは入っていたか。女性や若い人が結構来ていた。

この映画はミラノに実在する音楽家のための養老院“ヴェルディの家”を舞台に、そこに住む往年のオペラスターたちが全盛期を思い出して語り歌う姿を捉えたドキュメンタリーだ。

実は今年、藤田彩歌著「カーザ・ヴェルディ、世界一ユニークな音楽家のための高齢者施設」という本を読んで、本ブログでも取り上げたところだったが(こちら参照)、そのカーザ・ヴェルディに関連した映画があることを私が日頃よく拝見しているブログ「人生の目的は音楽だ!toraのブログ」で教えられたため、早速観に行ってきたものだ。

藤田氏の著書は、カーザ・ヴェルディが現在では高齢者とは別にミラノ市内の音大に通う学生を最大16名まで受け入れており、その若手音楽家の一人として入居した著者の体験談であった。それは、カーザ・ヴェルディがどういう考え方で運営されているのか、そこに住んでいる往年の歌手たちがどういう生活をしているのか、施設の中はどういう感じになっているのか、などを著者と歌手たちとの交流を通じて理解した経験をもとに書いているものであった。

今回観た映画「トスカの接吻」は藤田氏の著書のアプローチとは異なり、カーザ・ヴェルディに住んでいる往年のスターたちが映画監督などの撮影スタッフを前にして、往時を回想しながら元気に語り合い、歌う姿を放映するものである。映画では、1920年代のミラノ、スカラ座の花形オペラ歌手、サラ・スクデーリをはじめ、作曲家のジョヴァンニ・プリゲドャ、テノール歌手のレオニーザ・ベロン『リゴレット』を得意としたジュゼッペ・マナキーニなどが、往年の自信満々の表情で、それぞれの得意とする題目を披露している。

歌手の皆さんは、キチンと着飾り、背広を着て、かくしゃくとして元気で衰えない声を披露している。観ていて元気が出てくる。いつまでも元気でいてほしい。


(藤田氏の本から拝借)

さて、ミラノには一回だけ観光で行ったことがあったが、その時はこの施設があることをまだ知らなかった。ミラノ中心街からそう離れてないところにあるので訪問することもできたのに残念である。藤田氏の本によれば、週に一度、施設の一部(食堂やコンサートホール、教会など)を見学することができるそうだ。

なお、藤田氏の本には施設の写真などもある(上の写真)、これは中庭からみたもので天気も晴れている日だが、映画では自動車の往来が激しい目抜き通りに面した表玄関を映しており、季節も雪が残った時期だ、このイメージとの違いに驚いた。

ヴェルディファンやオペラファンなら観て良い映画だと思うし、できたら、映画とともに藤田氏の本も手に取ってほしい。

(完)