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気ままに生活してるシニアの残日録

映画「ちいさな独裁者」を再び観る

2023年09月12日 | 映画

以前観た映画で面白かった「ちいさな独裁者」(2017、ドイツ・フランス・ポーランド、監督ロベルト・シュベンケ、原題Der Hauptmann)を見直してみた。原題は「将校」とでも訳すのが適当か。

敗色濃厚なドイツでは、兵士の軍規違反が続発していた。命からがら部隊を脱走した21才の一兵卒ヘロルトは、偶然将校が乗った車が事故で放置されていた所に遭遇した。その車の中を調べてみると、軍服や軍隊手帳などの将校(大尉)の持ち物がそのまま放置されていた。機転をきかせたヘロルトはその軍服を身につけ大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを言葉巧みに騙して服従させていく。大尉の軍服の威力の味を知ったヘロルトは傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついには脱走兵収容所にたどり着き、そこで思いもしないことを始めた・・・・

どうもこれは最後のテロップをみると実話らしいから驚きだ。大尉になりすましたヘロルトが何時バレるのかとハラハラしてみていると、みんなその制服と流ちょうな話しぶりにだまされ、信用して、ヘロルトの出す命令に従ってしまう。脱走兵収容所長がおかしいと思って電話で管轄の司法省に確認の電話をするが司法省も「私はゲシュタポの管轄下にある」などという説明に了解してしまう、異議を申し立てても審査する方もヘロルトの説明を信じてしまう、という信じられないことが起こる。

主人公のにせ大尉に対して最後までやっていることがルールに反しているとして抗議し、司法省に確認を求めた収容所長ハンゼンや一部の兵隊たちがいた一方で、にせ大尉の「自分は総統から直接指示を受けて後方の状況を調査している」という言葉を信じ、収容所長よりも上の総統からの指示ということに絶対服従をする収容所警備責任者ヒュッテなどがいた。ヒュッテは普段から所長とはうまくいっていないようだ。自分が警備責任者だったらどうしただろうか、考えさせられる。軍隊組織において、直属の上司の指示を無視してその上司より上だという初対面の将校からの指示だったら納得できないことでも従うか。そういう問題を突きつけている気もする。

ネタバレになるので結末を書くのはやめにしておくが、このようなことが実際に起こったというのが信じられない。多少の誇張などはあるだろうが、面白い映画だった。