ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フェアウェル さらば、哀しみのスパイ

2010-07-31 13:50:18 | は行
冒頭とラストが実に印象的でした。

「フェアウェル さらば哀しみのスパイ」66点★★☆


1980年代初頭。
ソ連の中心にいた幹部が
自らスパイとなった「フェアウェル事件」。

ソ連崩壊のきっかけとなった大事件ながら
ほとんど世間に知られていなかった話を
「戦場のアリア」の監督が
映画化したものです。


1981年、モスクワ。

フランスから出向中の家電メーカー技師
ピエール(ギヨーム・カネ)は
ひょんなことから
KGBの幹部グリゴリエフ(エミール・クストリッツァ)に出会う。


実はグリゴリエフは
ソ連の未来に行き詰まりを感じ
極秘情報をフランスに流しているスパイだった。

コトの重大さを知らずにスパイ活動を
手伝ってしまったピエールは
「もうやめる!」と騒ぐものの


次第にグリゴリエフの孤独で崇高な志に惹かれ
危険な仕事に足を踏み入れていく・・・・・・。


いわゆる「スパイ映画」からイメージすると
いっぷう変わった作品だと思います。

まず
主人公がいかにもスパイ然というタイプではなく
ギリギリ新聞の編集長?くらいの
ラフさと気負いのなさ。

演じるクストリッツァが渋い!のはいいんですが。

そしてまた
彼を手伝う一般人ピエールも
すご~く頼りなく

任務遂行もなんだかあっけない。


後半はぐんと緊迫感が出て
“らしく”なりますけどね。

ただ、この
「本当はやばくてスリリングな状況なんだろうけど
表面的には静かで
どこか実態のない、間の抜けた感じ」が
もしかしたら
東西冷戦時代の実体なのかもしれないと感じました。


また、劇中に
主人公が自分自身を重ねる
「狼の死」(アルフレッド・ド・ヴィニー 1843年作)
という詩が出てくるのですが

これが素晴らしい。

資料にあった全文をいま読んで
改めて体が震えました。

どこかで目にする機会があれば、ぜひ。


★7/31からシネマライズで公開中。ほか全国順次公開。

「フェアウェル さらば哀しみのスパイ」公式サイト
コメント (4)
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瞳の奥の秘密

2010-07-30 13:11:06 | は行
ミステリ&大人のドラマ好きには
最高の選択になるでしょう。


「瞳の奥の秘密」88点★★★★


本年度アカデミー賞
最優秀外国語映画賞受賞作です。←なげーな。


舞台はアルゼンチン、ブエノスアイレス。

裁判所を定年退職したベンハミン(リカルド・ダリン)は
25年前のある殺人事件をもとに
小説を書きはじめる。


それは若い新婚夫婦を襲った悲劇。

事件は一応の解決をみていたが
しかしベンハミンが
記憶の封を開けるうちに
ある衝撃的な真実が明らかになる。。。


なんてよくできた映画なんだろう。


まず驚いたのは
主人公たちの“化け”のうまさ。
25年前と現在を、同じ俳優が演じてるんですが
そうとは思えないように
それ相応に老け、そして若々しくなる。


役者の成熟度の高さに感服です。


話にはミステリー、ロマンス
シリアス、センチメタルと
いろんな要素がうまく織り込まれ、

復讐劇としては
「告白」を越える“せいせいした感”がありました。


ちょっと単純?と感じる謎解き部分は
「主人公の回想と小説」ということでうまくすり抜け
反面、冒頭の詩的にぼやけた映像にも
ちゃんと意味があったり
なかなか計算が細かい。


なにより注目していただきたいのは
主人公の相棒である酔っ払いのパブロ(ギレルモ・フランチェラ)。


この人、まるでウディ・アレンのような
ひょうひょうとした風貌でダメダメな雰囲気をかもし出し
かつピリッと効く存在感が強烈。


こんなに忘れられない脇役に
出会ったのは久しぶりです。

ぜひ堪能してくださいー。


★8/14からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「瞳の奥の秘密」公式サイト
コメント (7)
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日本のいちばん長い夏

2010-07-28 03:17:04 | な行
歴史から学ばない人間は
また同じ過ちを繰り返す・・・・・・

誰かの言葉でしたっけ。

「日本のいちばん長い夏」59点★★☆


1963年(昭和38年)6月20日。
文藝春秋が企画した
有名な座談会を再現した映画です。


内容は
終戦時に政治や軍の中枢にいた人や
当時、戦地にいた作家や俳優、
そして沖縄で生き残った元看護婦など28人が

「あの戦争はなんだったのか」を
思い思いに話し合というもの。


制作・著作にNHKの名があるのが
すべてを表しております。
マジメです。


当時のニュース映像をはさんだり
とてもわかりやすく作ってあり

終戦前、政府がこんなふうに揺れてたんだ、とか
いや、まずポツダム宣言ってなんだっけ、とか

とかく無知な身には
大変、大変に勉強になりました。



さらに座談会出席者を
ジャーナリストの田原総一朗、鳥越俊太郎
料理評論家の山本益博、
漫画家の江川達也や
「ガンダム」の富野由悠季などなど

多彩なキャストが
演じているのが話題のひとつ。

彼らがどう演じ、語るのかに
興味があって観たようなものなので
その点は、まずまず納得ですね。


とくに彼らに自身の言葉で
戦争を語るシーンを入れたのは正解。

田原総一朗さんの話とか
興味深かったです。


こういう映画は
やっぱり学校でみせるべきでしょ。
中学生だったら楽勝でわかるんじゃないかなあ。


と、非常に有意義な作品ですが

どうしても変化に乏しい画と
固い内容ゆえ

約2時間のうち意識を失う瞬間が
必ず1度は訪れるのではと推察され…グー。。


★8/7から新宿バルト9ほか全国で公開。

「日本のいちばん長い夏」公式サイト
コメント (2)
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ベスト・キッド

2010-07-25 17:32:50 | は行

今年の夏映画は、豊作だなあ!

「ベストキッド」80点★★★★


1984年の大ヒット作のリメークですが
すごくいいですよ、これ。


母親の転勤でアメリカから北京に引っ越してきた
少年ドレ(ジェイデン・スミス)

カンフー道場に通う少年らに
いじめのターゲットにされてしまう。  

そんなドレに手を差し伸べてくれたのは
アパートの管理人ハン(ジャッキー・チェン)。

ふだんは寡黙でどこかとぼけた雰囲気のハンだが
実はカンフーの達人だったのだ!


ドレはいじめを克服するべく
ハンにカンフーを習いたいと申し出るが――?


いやー
気持ちよく楽しめました。

ズッコケあり、難しいことなくて
単純なんだけど
でも作りがしっかりしている。


番長が大好きな
「バック・トゥー・ザ・フューチャー」時代の
ハリウッド映画の雰囲気がちょっとあるんですよ。


しかも、役者がいい!


まずはウィル・スミスJr.の
ジェイデン・スミスくん。

この子、こんなに演技うまくていんかいな?!


ちょっと生意気で
ネコのようにしなやかで動きが機敏。

ソファで「コテン」と寝てしまう
その寝姿もまるでネコそっくり。

天性の愛くるしさだけでなく
それを発揮する術(すべ)を
お父さんから
徹底的に教えられているんだろうなー。

それこそ演劇版ベスト・キッドやなー。


そして師匠役が
なんたってジャッキー・チェンですからねー。

カンフーマスターなだけでなく
おとぼけな芝居もおかしいし
なんだか、すごく渋みが増してカッコイイんですよ。

ちょっと雰囲気が
ダスティン・ホフマンみたく見えました。


この夏、お子さんと見るなら
「ヒックとドラゴン」か本作がオススメです☆


★8/14から全国で公開。

「ベスト・キッド」公式サイト
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ソルト

2010-07-24 16:43:17 | さ行
アンジー、久々の主演作です。

「ソルト」70点★★★


米CIAの優秀な分析官
ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)
ある日、ロシアからの亡命者を尋問する。

彼はロシアが凄腕スパイを
アメリカに送り込んでいることを話す。

そのスパイの名は、ソルト――!

弁解する隙もなくソルトは
一瞬にして同僚から
追われる身になってしまう。

しかし
そこには二重三重の裏があった・・・。


「ウォンテッド」(08年)みたく
最新CGを駆使した
スタイリッシュアクションかなあと思ったら

これが意外に硬派な作りで
へえと思いました。

オリジナル脚本は男性が主人公だったそうで
なーる、かなりハードボイルドです。


半端な人間描写、感情描写をせず
主人公は黙して語らず

その身体能力の高さだけでずんずん進む方式が
ボーンシリーズっぽい感じ。


二重三重の裏切りがちとややこしかったり
冷戦時代など話の背景がちっと古くさいのも含めて
正統なスパイ映画かな、と。


目をひいたのはアンジーをかばう同僚役の
リーヴ・シュレイバー。

この人、いかつさと優しさのバランスがいい。
「ディファイアンス」もよかったもんね。


アンジーのアクションも進化しており

動くエレベーターを追っかけるシーンとか
「ありえねえ」と思いつつも
けっこうな臨場感と「痛そう」な体感がありました。


実際に撮影でケガを負ったそうで
かなりマジやったんでしょうね。
ほんと、お疲れさまでした。


実は
これも「つづく」だったんですが
そんなにガックンしませんでした、ハイ。


★7/31から全国で公開。

「ソルト」公式サイト
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