ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

リトル・ランボーズ

2010-10-31 21:43:04 | ら行
これね~
詩人のランボーかと思ってたら
スタローンの「ランボー」なんですよ(笑)
ウケました。

「リトル・ランボーズ」77点★★★☆


1982年、イギリス。

11歳の少年ウィル
厳格な家庭で育ち、
テレビなどの娯楽を一切禁じられていた。


ある日、ウィルは
学校で不良少年カーターと知り合い
彼の家で生まれて初めて
映画を見ることに。

それはS・スタローン主演の
映画「ランボー」

すっかりランボーの虜になったウィルは
カーターと一緒に
“なりきりランボー”の
自主制作映画を撮ることになるが……?



とにかくキュートでチャーミングな映画!
笑いのテンポもうまくて
ウケました(笑)

純粋培養された少年ウィル
如才ない悪ガキ、カーター

キャラの対比もうまく

ふたりの友情の過程が
素直な流れで描かれていて

すがすがしく
ちょっとホロッとさせる。


ウィル役の子もすごくいいけど


悪ガキ、カーター役の子がまた
ニクいほどいいんだ、これが。


舞台が1980年代だけあって
デュラン・デュランやザ・キュアーなんて
音楽やカルチャーも満載で
懐かしい!


番長の大好きな
「僕らのミライへ逆回転」もそうですが

素人が映画を作る話には
映画好きの心をくすぐる“遊び”がたくさんあって
いいよねえ。


折しも「エクスペンダブルズ」が
大ヒット中のスタローン御大、
この映画に快く協力してくれたそうですよ。

さすが、太っ腹!
リスペクトされる人間はそうでなくちゃ。

★11/6から渋谷シネクイントほかで公開

「リトル・ランボーズ」公式サイト
コメント (2)
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100歳の少年と12通の手紙

2010-10-30 19:42:22 | は行
子どもの難病ものは
ホントもうかんべん!と思うんだけど
この映画は大当たりでした。


「100歳の少年と12通の手紙」80点★★★★


10歳の少年オスカーは
白血病で入院中。

ある日、彼は病院で
元プロレスラーだという
はっちゃけた女性ローズと出会う。


みんなが自分を腫れ物のように扱うことに
ウンザリしてたオスカーは
ズケズケ物を言う彼女とすっかり打ち解ける。

しかしオスカーに残された時間はわずか。

そんな彼にローズは
「一日を10年と考えて生きる」ことを提案する。

1日で10歳年を取ることになったオスカーは
思い切って好きな子に告白したりと
人生を謳歌し始める……。


決して「泣かせ」目的じゃなく
しんみりしないし
そして真理がある、イイ映画です。


まず1日に10歳年を取る、という
アイデアがおもしろい。

まだ10歳なのに
「30代は苦悩のときだ」なんて
眉間にシワよせる
オスカー少年がかわいくて

そういう考えかたひとつで
毎日が違ってくる、という見本ですね。

ほどよく入るファンタジー部分も
「アメリ」みたいにチャーミング。


なによりこの映画を輝かせているのは
威勢いいマダム・ローズのキャラ。


遠慮なくガリガリ削ってくる言葉に
ハッとさせる真理がいっぱいあるし

彼女の行動は
「病気の人に対してどう接したらいいのか」
「どうしたら彼らに、有意義な時間を過ごさせてあげられるか」
「そのために自分のできることって何なのか」

といった
みんなが悩む問題の参考になる。

だから
家族が病気だったり、介護問題を抱えてる人にも
ぜひおすすめしたいんです。


番長も父が入院したときに
つくづく思ったことですが

人間にとって
「やらなければならないこと」
「生きる目的」があるって
めちゃくちゃ大事なことなんですよねえ。

毎日することなくて
ボーッとしてると
ホントどうしようもなくて
心が先に病んでいく感じ。

でも入院中に父は
翌年、写真展開催が決まって
その準備をしなきゃいけなくなったら
がぜん生き生きしてきたんですよねえ。

ってな感じで
大切なこといっぱい詰まった映画。
おすすめです

★11/6からTOHOシネマズシャンテほかで公開

「100歳の少年と12通の手紙」公式サイト
コメント (7)
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ハーブ&ドロシー

2010-10-29 19:44:18 | は行
こんなふうに年をとりたいナ~。

「ハーブ&ドロシー」75点★★★☆


マンハッタンのアパートで
猫と暮らしながら
大好きなアート作品をコレクションし続ける
夫妻を追ったドキュメンタリーです。

1960年代、
アート好きの郵便局員ハーブは
図書館司書のドロシーと結婚する。


二人は少ない給料で
現代アートをコツコツと買い
1LDKのアパートに
作品を飾って楽しむようになる。

その後、30年以上にわたって
夫妻が集めたコレクションは
いまや相当な価値を持つものになり……というお話。


この夫妻、米国ではユニークかつ
貴重なコレクターとして
雑誌やテレビにも出ている有名人らしい。

不覚にも番長知らなかったですが
(一応美大卒……。ま、いつものことですが)

当時、彼らは
ウォーホルなどポップアートは高すぎて買えず

まだ注目前だった
ミニマル&コンセプチュアルアートを
買い集めたというのは
非常におもしろい話でした。

そのなかには
いまや超・有名になった
ロバート・マンゴールドにリチャード・タトルなどが
いたりして

現代アートに興味がある人は
迷わず必見、ですね。


ただこの映画がおもしろいのは
アート畑の人だけに
向けたものじゃないってところ。


夫妻のユーモラスで知的なキャラと
好きなものに囲まれて暮らす楽しさが

日本人女性監督の繊細な視線で
描かれているのがいいんですねえ。

この監督は
狭いアパートで何を撮影すれば
二人の人となりが表現できるかを
感覚的にわかっている。

結婚48年になる連れ合いどおしの
やりとりの可笑しみや
ふとした動きも見逃さない。


レスポのナイロンバッグをひっかけて
アートを買いに行く
ドロシーおばさんの
普通さがたまらなかったりね(笑)


全体のまとめかたもうまく
ルポルタージュとして美しく整っていました。


そしてしみじみ
貯金がなくても
子どもがいなくても
狭いアパート暮らしでも

気の合うパートナーと猫と
楽しく暮らすのって
サイコーかもねえと思いました。


★11/13から渋谷イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「ハーブ&ドロシー」公式サイト
コメント (2)
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マザーウォター

2010-10-28 11:46:31 | ま行

シリーズに
いい感じに変化が起こりました。

「マザーウォーター」73点★★★

「かもめ食堂」「めがね」「プール」から続く
(「トイレット」はちょっと別枠ね)
おなじみのメンバーによる
ゆる系ムービー新作です。


舞台は京都。

街中を流れる川に沿うように
水に関わって生きる3人の女性たち。

ウィスキーしか置いていないバーを営むセツコ(小林聡美)
コーヒー屋のタカコ(小泉今日子)
豆腐を作るハツミ(市川実日子)。


そして散歩する女性(もたいまさこ)と
赤ん坊(1歳未満かなあ)
そんな人々をつないでいく、という話。


発売中の週刊朝日の評にも書きましたが
このシリーズは本当に
わかってる人が
そこに流れる空気を買うという感じ。

趣味でもないのに『クウネル』を買う人
いないでしょ?という。

おなじみメンバーの呼吸と間合い。
淡々とした日常と
やさしい色調のセンスいい画。

そして
おいしいごはんのある景色を
まずは楽しみたい、という。

プレス資料の表紙もかわいいよなあ。



ただ、これがあまりに
「おっしゃれ~」で気持ちいい
雰囲気だけに流れちゃうと
鼻白むというか
参加しにくいものがあるんですが


今回はけっこう
素直に「気持ちいいな」と感じました。

まず
京都の裏路地という
舞台の目の付け所がいい。

“水”というテーマが
非常にわかりやすいんです。

そして
小泉今日子さんの登場で
空気にメリハリがついた。
(実はドラマ「すいか」つながりですねえ)


さらに
あまり子どもに縁がなさそうだったこの世界に
「ポン」と赤ん坊というモチーフを
入れたのも新しい。

しかも町中で育てる子ども、というのがポイントで
次なる潮流を感じさせました。


なんか回を重ねるごとに
こういうシリーズって
必要だなあと思ってきました。

つまりは『寅さん』みたいなものかなあと。

ぜひ続いていって欲しいですね。


★10/30からシネスイッチ銀座ほか全国で公開。

「マザーウォーター」公式サイト
コメント (2)
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クロッシング

2010-10-25 22:33:04 | か行
この20年で最高の
リチャード・ギアな気がします。


「クロッシング」81点★★★★


犯罪多発エリアである
ニューヨーク、ブルックリン地区。

団地に巣くうギャングの一味のなかに
タンゴ(ドン・チードル)の姿がある。

ボスとも対等に渡り合う彼には
実はある秘密があった……。


そのころ
NY市警の麻薬捜査官サル(イーサン・ホーク)は
家族のために家を買おうと奮闘していた。

が、命をかけて働いても
その給料はあまりにも安い……。

おなじNY市警の
ベテラン警官エディ(リチャード・ギア)は
波風立てずに勤続20年を過ごしてきた。


だが、退職を前にした彼に
やっかいごとが舞い込む。

やがて3人の男たちの運命は
微妙に交錯していき……。



病みすぎて血だらけで
もう傷がどこだかもわからない

そんなアメリカの現状を
冷ややかに切り取った犯罪サスペンスです。


警察の腐敗ストーリーは
いままでも多く見てきましたが

ここには
「そりゃ腐敗もするわな」と
いやだけど思わざるを得ない
やりきれなさと、現実味があります。

その根深い闇のなかで
生きなければならない3人の男。

一見別々なその運命の糸を
絶妙にクロスさせた構成もうまく
引き込まれました。


監督は「トレーニング デイ」の
アントワン・フクーア。

この人は役者扱いが
相当にうまいのかもしれない。

主演3人はいずれも実力派俳優だけど
いや、なんだか実力以上の何かを
ずるずると引っ張り出されているような
感じがするんです。


イーサン・ホークが
悪魔に魂を売るときの目。

ドン・チードルの
消せないの清廉さの宿る目。

そしてリチャード・ギアの
全てを諦めて死んだ目。

それぞれの“目”がとても印象的。

特に事なかれ主義の複雑な役を演じる
リチャード・ギアがめちゃくちゃいい。
ホントにびっくりしました。

ラストも心に残ったなあ。

おすすめです。

★10/30からTOHOシネマズシャンテほかで公開。

「クロッシング」公式サイト
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