ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ソーシャル・ネットワーク

2010-12-29 11:35:30 | さ行
来年、一番期待値が高いのは
コレでは?

「ソーシャル・ネットワーク」90点★★★★



ハーバード大2年の
マーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は
頭脳明晰なハッカー。

ある夜、カノジョにフラれたマークは
腹立ち紛れに
一晩であるサイトを立ち上げる。

それは大学の女子を
ランク付けをするサイトだった。

女子からは大ブーイングをくらうが
それはのちに
世界5億人を夢中にさせる
ソーシャル・ネットワーキング・サービス
「フェイスブック」の萌芽となり――?!


リアルタイムに存在する天才を
ノンフィクションをもとに描いたこの話、

本来はちんぷんかんぷんの
理系話なはずなのに

わかりやすいし
めちゃくちゃハマりました。

学生時代に友人たちと
「何かやろうぜ!」的になる
パワーや楽しさも思い出したし。


冒頭の口論のシーンを
ちょっとがまんしてやり過ごせば(笑)
その後はめくるめくジェットコースター展開が
待ってます。


いけすかないけど
悪人じゃないキャラを
しっかり構築し、

彼が何を考えて、何を目指したのか
実際には本人しかわかりそうにない
感覚的な部分を

非常に明確に表したところが
いやぁやられたなあという感じ。


しかも映画観てから
原作本を読んだのですが

本人は一切取材に応じてなく
周囲の証言から
人物像を立ち上げているんですねえ。


さまざまに言い分のある
証言者たちの話をもとにしているのに
キャラをヘンにぼやかさなかったところが
映画としてのおもしろみになった。
はたまた本人が
実際シンプルな人物なのか(笑)


「ネットで儲けるのに
広告を出すのはクールじゃない」

「フェイスブックは完成しない。
ファッションと同じ」

などなど

時代の寵児となるヒトとは
頭脳だけでなく
「自分が何をしたいか」が
常にハッキリとしていること

そしてなにより
感性が不可欠なんだなあとつくづく。


最先端の立身伝を
映画というアナログメディアで見るのも
なんだか感慨深かったです。

公開が待ち遠しいですな~!
そうそう公式サイトも超クールす!

★1/15から全国で公開

「ソーシャル・ネットワーク」公式サイト


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デザートフラワー

2010-12-25 13:59:45 | た行
アフリカの遊牧民から
トップモデルになった少女の
実話です。


「デザートフラワー」74点★★★☆


ソマリアの砂漠に生まれた
13歳のワリス(リヤ・ケベデ)は

お金で結婚させられそうになり
家族のもとを逃げ出す。


ソマリア大使である叔父のツテで
イギリスに渡ったものの
やがて路上生活をすることに。

そんな彼女に目を止めた
人物が現れて……。


まさに“映画のような”
真実のシンデレラストーリー。


ワリスを演じるのは
スーパーモデル、リヤ・ベデケで

おどおどとした小娘が
カメラの前で
パッと光輝くオーラを放つさまを
リアルに表現してます。


ホームレスだったワリスを助ける
アパレルショップの店員(サリー・ホーキンス)が
「プラダを着た悪魔」の先輩役
エミリー・ブラントなみの存在感をみせたり

モデル事務所の女社長など
一見クールで非情にみえる人々が
スッと助け船を出すところなど


階段を駆け上がっていく
サクセスストーリーの部分は
まずまず期待どおりでした。


ただこの映画には
実はもうひとつの
重要な社会的なメッセージが含まれているんです。


それはアフリカ女性の多くが苦しんでいる
ある問題についての告発。

それは衝撃的でもあり
すごく大事なことなんですが

ただ映画がどんどん
その「真に伝えたいこと」に
引きずられすぎていっちゃうんですねえ。


社会的問題を扱っても“娯楽”として
成り立っている映画は
たくさんあるんですが


この場合は
ファッションモデルという
ネタがあまりに華やかなだけに
観る側が期待する娯楽と
社会派の部分が
必要以上に分離してしまうのかもしれません。


結果、映画としての
バランスが悪くなってしまったのは
残念でした。


ただ全体観ても
平均点以上なことは
間違いないす。


★12/25から新宿武蔵野館で公開中。ほか全国順次公開。

「デザートフラワー」公式サイト
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エリックを探して

2010-12-23 22:32:10 | あ行
ケン・ローチ監督って
こんなハッピーな映画も撮るんだなあ。

「エリックを探して」84点★★★★


マンチェスターの郵便配達
エリック(スティーヴ・エヴィッツ)の人生は
どうにもうまくいっていない。


車で事故るわ
妻には出て行かれるわ
あげく妻の連れ子だった息子たちは
反抗期で言うことを聞きやしない。


仕事仲間たちはエリックを気づかうが
本人はもう神経衰弱ギリギリ。


そんな彼の前に突然
神と崇めるサッカー選手
エリック・カントナ(本人!)が現れる!


だがその姿は
エリックだけにしか見えないようで……?!


ケン・ローチ監督といえば

アイルランド独立戦争を描いた
「麦の穂をゆらす風」(06年)の深刻さも

不法移民労働を扱った
「この自由な世界で」(07年)のシビアさも
最高だったけど

この映画も最高でした。



ファンタジーが混じるような展開になっても
人物造形や背景に
しっかりリアリティがあるので
ラクにのっかれるし


それになんたって
主人公を助ける仲間たちが最高なんです。


労働を共にし
サッカーという趣味を共有する彼らは
とことん暗~く深刻なエリックを
なにかと気にかけてくれる。

仕事仲間というよりも
やっぱ人生の仲間、という感じで

その結託具合やずっこけ加減が
なんとなく
「フル・モンティ」とか
「ブラス!」とかを思い出させるんですねえ。


冒頭はかなり深刻そうなんだけど
愉快な仲間たちの笑いが盛り上げ
しかしまた深刻になり……という

アップダウンのテクにのって
笑いながら、めいっぱい楽しめました。


サッカーに無知でも
全然問題ありません、ハイ。

ちなみにエリック・カントナという人は
本当にサッカーのネ申、な人らしい。


現在は監督業のかたわら
俳優としても活躍し
「エリザベス」(98年)や「クリクリのいた夏」(99年)
最近では「マルセイユの決着」(07年)なんて
作品にも出てるそうです。


★12/25からBunkamuraル・シネマほか全国で公開。

「エリックを探して」公式サイト
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きみがくれた未来

2010-12-22 23:32:08 | か行
ザック・エフロン
人気あるんですねえ。


「きみがくれた未来」67点★★★


ティーン向けアイドル映画の体でも
しっかり作ってある。

やはりこういうのが
ハリウッドのキャパの深さでしょうか。


大学進学を控えた
チャーリー(ザック・エフロン)は
11歳の弟サム(チャーリー・ターハン)の
面倒をよくみる、よき兄貴。

二人は息のあった
ヨットレースのコンビでもあった。

が、そんなある日
悲しい事故が起こってしまう。


罪悪感に囚われたチャーリーは
人生を先に進めることを
やめてしまうのだが……。




贖罪にとらわれる青年を描いていますが
暗さはなく
光射す映像は温かい感じ。


ボケ役の友人なども出てきて
深刻に落としすぎないよう調整されてます。

吸血鬼の出てこない
明るい「トワイライト/初恋」か?という
ラブロマンスなシーンもあり

しかしそこから一転、
意外な展開になるあたり

読めるといえば読めるけど
意外に魅せますね。


ただ死者とどう別れ
どう共に生きるのか、という
重いテーマはまだまだ未消化。

そんなカンタンに
消化できる話じゃないですしね。

いまそこに迫るのはやはり
イーストウッド御大の
ヒアアフター」(2/19公開)だろうなぁ。


それにしても
この達者な弟役のチャーリー・ターハンくん

誰かに似ていると
観ながらずーっと思ってたんですが…

あっ!コリン・ファースだ!


お、親子……?違うか。


★12/23からTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開。

「きみがくれた未来」公式サイト
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2010年ベスト&ワースト映画

2010-12-21 16:58:52 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)

今年ももうこんなシーズンかあ。

2010年のベスト&ワースト映画を
発表いたします。

まずベスト映画。

1位 セラフィーヌの庭
2位 瞳の奥の秘密
3位 ブライトスター いちばん美しい恋の詩
4位 ちょんまげぷりん
5位 17歳の肖像
6位 乱暴と待機
7位 白いリボン
8位 クロッシング
9位 キック・アス
10位 フローズン・リバー

次点 パリ20区、僕たちのクラス
    しあわせの隠れ場所
    彼女が消えた浜辺
    ベンダ・ビリリ!
    マイレージ・マイライフ
    (500)日のサマー
    あの夏の子供たち
    100歳の少年と12通の手紙
    Ricky
    ヒックとドラゴン
    ヘブンズストーリー
    インビクタス 負けざる者たち
    ハーブ&ドロシー
    川の底からこんにちは
    ローラーガールズ・ダイアリー
    エリックを探して


続いてワースト映画。

1位 サヨナライツカ
2位 NINE
3位 ノルウェイの森
4位 運命のボタン
5位 ブルーノ
6位 第9地区
7位 恋するベーカリー
8位 ウルフマン
9位 私の優しくない先輩
10位 雷桜

次点 シーサイド・モーテル
    サベイランス
    シュアリー・サムデイ
    武士の家計簿
    NECK ネック
    告白
    アデル
    誰かが私にキスをした
    桜田門外ノ変
    50歳の恋愛白書
    イエロー・ハンカチーフ
    東京島
    ミックマック
    座頭市 THE LAST
    春との旅


毎度、順位は点数と合ってないと思いますが
ご容赦を~


ベスト映画は
完成度&驚き度の高いものが上位。

ワースト映画は
ガッカリ度&残念度の高いものが上位です。


いや~今年は難しかった!
いい作品も本当に多かったけど
去年の「ディア・ドクター」
「グラン・トリノ」みたいに
完璧断然!というのがなかった感じ。

邦画に残念作が多いのも
キビシイところ。


ちなみにいまのところ
来年2011年の上位確実なのは

「わたしを離さないで」(来春)
「ソーシャル・ネットワーク」(1/15公開)
ですね~。
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