ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

2020年ベスト映画発表!

2020-12-29 00:50:11 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)

まさに生涯忘られることのないであろう、1年となりました。

2020年ベスト映画発表します!

 

(1位)本気のしるし 劇場版

(2位)ハニーランド 永遠の谷

(3位)ある画家の数奇な運命

(4位)おもかげ

(5位)在りし日の歌

(6位)レ・ミゼラブル

(7位)パラサイト 半地下の家族

(8位)ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像

(9位)なぜ君は総理大臣になれないのか

(10位)山の焚火

 

(次点)

風の電話

プリズン・サークル

ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

異端の鳥

PLAY 25年分のラストシーン

行き止まりの世界に生まれて

一度も撃ってません

黒い司法 0%からの奇跡

ホモ・サピエンスの涙

精神0

ハピチャ 未来へのランウェイ

娘は戦場で生まれた

名もなき生涯

この世界に残されて

 

今年はジャンル問わず、洋画邦画問わずなベスト10。

いつもながら思い返して「今年、コレ!」なベストです。

(公開年が前のものも1作、今年公開作としてランクインしてます)

 

リンク貼っておきましたので

少しでもご観賞の参考にしていただければ幸いでございます。

 

映画&芸術のありようについて、さまざまを考えた2020年。

あらためてそれは

人類に絶対に必要な栄養だ!と実感しました。

Netflixなど配信でもたくさんの良作を観ましたし

紹介しきれなくて申し訳ないですが

いや、どの作品も、素晴らしかったす。

 

 

・・・・・・で、ここでまったくのおまけな

主題歌賞を発表!(いらねー。笑)

 

やっぱり「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の 「炎」(LiSA)っすね。

映画の“続き”として、ここまで残るのはスゴイし

「言葉」のちからを仕事柄、考えさせられもしました。

 

あとね、「超・勝手に主題歌にしたい賞」は

米津玄師氏の「迷える羊」(『STRAY SHEEP』収録曲)×「TENET テネット」!

この曲を聴くたびに、映画のシーンが思い浮かぶんですよねー(笑)。

 

って勝手なことを書いている本ブログ、

今年も読んでいただき、ありがとうございました。

2021年も、たくさんの映画に出会えますように――!

 

心に炎(ほむら)を灯して――

いくぜ!(笑)

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私をくいとめて

2020-12-19 00:01:55 | わ行

綿谷りさ原作×大九明子監督。

「勝手にふるえてろ」タッグ再び。

 

「私をくいとめて」71点★★★★

 

************************************

 

黒田みつ子(のん)、

都内でおひとりさまライフを謳歌する31歳。

 

休日ともなれば、ひとりで話題のスポットに行ったり

ひとり焼き肉を楽しんだり。

 

彼女には脳内に相談役の「A」がいて

彼と会話しながら、楽しく不自由なく暮らしているのだ。

 

が、そんなみつ子に、最近気になる人が。

それは会社に営業にくる、年下男子・多田くん(林遣都)。  

 

彼もこっちを気にしてるよね?まんざらでもなくない?

いやいや。年下だし、カノジョいるでしょ、ないわー、いや、意外とある???

 

――と、脳内会話も暴走気味のみつ子は

果たしてどうする――?!

 

************************************

 

小気味よく走る会話に

これがいまの30歳おひとりさま女子の最前線かあ――と

興味深く拝見いたしました。

 

 

脳内キャラと会話し、楽しげにおひとり様ライフを送る

黒田みつ子(31)。

 

「すっげーつまんねえ自分」の日々を

ひとりで立つ自由さと、行動力をもって

ワクワク&キラキラにしようとしてる様子は

 

50になったワシからみても

共感できるし、カワイイ。

 

20年の差を超えて

ああ、やってること変わんないなーという感じもあるんだけど

 

反面、

根底にある世代的なあきらめ感とか、

我々の世代より、さらにめちゃくちゃ将来を不安視してるんだろうな――という

たしかな感覚もあって、ちょっと切なかったり。

 

それにね

脳内にいる妄想キャラとの対話とか

やってることが「おらおらでひとりいぐも」のおひとりさま、75歳・桃子さんと同じじゃん?

ってところが、妙におもしろかったり

いろいろ感じ入るものがありました。

 

主演のん氏もとても良く、

イタリアに嫁いだ親友役の橋本愛氏とのやりとりは

やっぱり「あまちゃん」を思い出させて

なんだかホロリするし

 

それに

デキるキャリア女史役、片桐はいり氏が

やばいほど、ナチュラルにリアルなんですよ。

うっ、なんだか自分っぽい・・・(笑)っていうか。

 

あと、脳内の「A」の声は

「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族」(2021年1月8日公開)

試写で観ていたので

すーぐに「あ!」とわかりました(笑)

 

★12/18(金)から公開中。

「私をくいとめて」公式サイト

コメント (3)
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声優夫婦の甘くない生活

2020-12-15 23:52:55 | さ行

監督はアキ・カウリスマキ作風を参考にしたそうで、

あ、わかる(笑)

 

「声優夫婦の甘くない生活」74点★★★★

 

**************************************

 

1990年、9月。

「鉄のカーテン」が崩壊したソ連からイスラエルへと

多くのロシア系ユダヤ人が移住をしていた。

 

ソ連で暮らしていた

ヴィクトル(ウラジミール・フリードマン)とラヤ(マリア・ベルキン)夫婦も

大勢の移民とともにイスラエルにやってきた。

 

念願の聖地で第二の人生をスタートさせるべく

二人は仕事探しを始める。

 

というのも

二人はソ連で、ハリウッド映画などをロシア語に吹き替えする

スター声優夫婦だったのだ。

 

が、イスラエルでは声優の需要はなく、厳しい現実が待っていた。

 

なんとか生活費を得ようとしたラヤは

ある“バイト”に足を踏み入れるのだが――?!

 

**************************************

 

かなりプッ、と笑った

イスラエル発の逸品です。

 

 

作品全体に、映画への愛がめちゃくちゃ詰まっていて

かつ、社会&政治状況を描いている。

双方をうまく融合させているのがうまいんです。

 

 

1990年、ソ連からイスラエルへと移住したユダヤ人夫婦。

かつて彼らはソ連内で、ハリウッド映画やヨーロッパ映画を

ロシア語に吹き替える仕事をしていて

一応、スター声優だった。

 

で、彼らはイスラエルでも声優の仕事を希望するのですが

そう簡単に、そんな仕事もない。

 

「高収入の声の仕事!」と

新聞を見て妻がいくと

テレフォン○ックスの仕事だったり(笑)

 

ダンナにも仕事がある、と聞いて

すわ!と行くと、緊急避難放送の録音だったり。

 

そうこうするうちに

「所詮、誰かの代理」と感じ、吹き替えという仕事に虚しさを感じていた妻と

逆に俳優になりきることに生きがいを見出していた夫との間に

ズレが生じていく。   

 

それは

新天地で、変化を受け入れて前に進もうとする女性のバイタリティと

過去にしがみついてしまう男性、という

男女のメンタルの差=ズレにも思えて

とても興味深いし

 

二人が、そのズレをどう克服していけるのか?(いや、無理なのか?)という部分が

物語をひっぱっていくんです。

 

随所にクスッとさせるユーモアがあるのもよく

脇役が光る点もいい。

 

海賊版吹き替えビデオを売る店のオーナーと店の男性や

テレフォン○ックス業をするオーナー女性など

出番は少ないけど、

それぞれで映画が作れそうなほどおもしろみがあるんですね。

 

 

主人公夫婦にはモデルがいるの?

トイレの描写が何度もあるのはなぜ?

夫ヴィクトルがつけたり消したりする、アパートのあのスイッチは何?と

観ながら、監督に聞きたいことがいっぱいになってしまった(笑)

 

残念ながら、今回は直接取材が叶わなかったのですが

プレス資料に少しは解答が載っていて

 

1979年生まれのエフゲーニ・ルーマン監督自身が

1990年、11歳のときに

ベラルーシからイスラエルに移住しているそう。

この夫婦の子ども世代にあたるのでしょうね。

 

で、

あのスイッチは、実際に監督が住んだ家にもあって

「おそらくは給湯器のスイッチ」なのだろうけど、

いまだ謎らしい(笑)。

異文化の象徴として、登場させたのかなあとか。

 

今後、インタビュー記事がいろいろ出るかもなので

チェックしようっと。

 

★12/18(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「声優夫婦の甘くない生活」公式サイト

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この世界に残されて

2020-12-15 23:52:55 | か行

切なくてたまらない。

 

「この世界に残されて」75点★★★★

 

**********************************

 

1948年、第二次大戦後のハンガリー。

 

婦人科で働く医師アルド(カーロイ・ハイデュク)のもとに

16歳のクララ(アビゲール・セーケ)がやってくる。

 

終始、不機嫌で生意気そうなクララは

ホロコーストで家族全員を失い、伯母と暮らしていた。

 

しばらくして病院のアルドを

クララが訪ねてくる。

 

面食らうアルドだったが

クララの聡明さに興味を持ち、次第に打ち解けていく。  

 

実はアルドもまた、ホロコーストの犠牲者であり

家族を失った過去を持っていたのだ――。

 

**********************************

 

「心と体と」(17年)の製作者×1977年生まれ、長編映画2作目となる

トート・バルナバーシュ監督の作品です。

 

戦争描写など一切なしに

ホロコーストの傷を追った人々のその後を静謐に描いていて、

実に好ましいというか

マジで沁みました。

 

1948年のハンガリー。

孤独な婦人科の中年医師アルド(カーロイ・ハイデュク)は

不機嫌な16歳の少女クララ(アビゲール・セーケ)と、診察室で出会う。

 

クララはホロコーストで家族を失い、伯母と暮らしているんですが

いろいろ不満だらけで、不機嫌。

 

でも

なぜか、アルドに親近感を持ち

アルドの一人暮らしのアーパートに押しかけてくるんです。

 

おいおい!と思うし

アルドも面食らうんですが

しかし、クララの聡明さや、利発さに驚き、次第に彼女を受け入れる。

二人は父と娘のように、一緒に暮らし始めるんですね。

 

あ~あったかいわー。

 

さらに物語が進むにつれて

孤独なアルドの背景もわかってくる。

 

そして

互いに孤独を抱え、心を閉ざし、行き場のなかった二人の心は

少しずつ、雪解けていくんです。

 

彼氏を作ったクララに、アルドがやきもきしたり

クララのほうも、アルドが年相応の彼女を連れてくると

すんげー微妙だったり。

 

そんな二人の関係は蜘蛛の糸のように繊細で微妙だけれど

そこに「律する」ものがたしかにある。

それがピーンと張り詰めていて、心地よいんですよね。

 

なにより

この時代のハンガリーは

ソ連の実質支配下におかれていて

社会主義思想に反する人は政府に捕らえられ、粛清さえていた。

 

その社会の不穏が

二人のささやかな幸福に、次第に影を落とし始めるんです。

 

歴史背景は大きな意味を持つけれど

ただ、描かれていることはすごーくエモーショナルというか。

クララとアルドの二人の関係は、男女としてどうこう、ということを超えて

この暗い世界で、互いを見つけたことの

かすかな喜びに満ちていて

観ていて本当にしあわせな心持ちになる。

 

ゆえに、切なさも倍増!なんですけど。

 

「キネマ旬報」12月下旬号で

トート・バルナバーシュ監督にインタビューさせていただいています。

 

トート監督、子役から俳優もしていたというイケメン!(笑)

 

1948年代ハンガリーの歴史的な背景はもちろんですが

年の離れた男女の一線ある「律した」関係、にすごく興味があるそうで

「『レオン』とか、好き」とおっしゃっていました。

加えて、あのタル・ベーラ監督の美術も担当したスゴイ方が、本作に参加していたりもして。

 

実は映画大国なハンガリーの映画事情もたっぷり伺い

けっこう濃いインタビューになっていると思います。

映画と合わせて、ぜひご一読いただければ!

 

★12/18(金)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「この世界に残されて」公式サイト

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ニューヨーク 親切なロシア料理店

2020-12-13 13:54:44 | な行

「17歳の肖像」監督にハズレなし!

 

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」74点★★★★

 

*********************************

 

ニューヨーク。

早朝に車を飛ばし、幼い息子ふたりとこの街にやってきた

若き母親クララ(ゾーイ・カザン)。

旅行にきた、とクララは子どもたちに言うが

実は、DV夫から逃げてきていた。

 

泊まる場所もお金もなく、クララは車を老舗ロシア料理店の裏に止め、

そこで眠ることに。

 

そのころロシア料理店では

常連客のアリス(アンドレア・ライズボロー)が一人食事を取っていた。

別のテーブルには

ある事情で刑務所から出てきたばかりのマーク(タヒール・ラハム)がいる。

 

マークはひょんなことから料理店のオーナー(ビル・ナイ)に

マネージャーとしてスカウトされる。

 

それぞれワケを抱えた人々の糸が

少しずつ、つながっていく――。

 

*********************************

 

「17歳の肖像」(09年)「人生はシネマティック!」(16年)

のロネ・シェルフィグ監督作。

毎回言ってるけど、この人、うまいなあと思う。

 

DV夫から逃げてきた母と子と

それを見守り、そっと助ける人々の物語。

 

つながりそうでつながらない登場人物たちの糸が

「やっとつながった!」という喜びがじんわりとやってきます。

 

 

早朝、田舎から

NYにやってきた若い母親クララ(ゾーイ・カザン)と子どもたち。

 

大都会にワクワクする彼らは

実はDV夫から逃れてきているんだけど

 

夫は外面良し男らしく、誰もDVの事実を知らないし

しかも警官というのが始末に悪い。

あっという間に警官のネットワークで

追っ手がくる可能性があるんだもん。

 

で、母子は夫に見つからないようにするため

職にも就けず、カードも使えず、

どんどん苦しい状況になっていく。

 

でも

ヒロインは明るく軽く、なんとか乗り切ろうとする。

微妙な万引きやらで、食いつなごうとしたり(けっこう笑える)

あの「ニューヨーク公共図書館」で時間をつぶしたり。

 

そんな母子に、たまたま出会った人々が

救いの手を差し伸べてくれるんですが

 

すべてがそっと、自然に起こる。

助けてくれる手もさりげないし

逆に助けを拒む人だって非情な人物ではなく、ごく普通に思える。

 

そこがリアルなんですよね。

 

一歩の違いであっという間に苦境に陥る人生のあやうさ。

一見普通にみえる全ての人が、

なんらかの困難を抱えているかもしれないんだ、ということを

監督は、やわらかく教えてくれている気がする。

 

自分だっていつ助けられるかわからない。

「大丈夫ですか」と声をかけられる心を

持ち合わせていたいなあ(いられるかなあ)と、思ったりするのでした。

 

それにキャストのセンスが抜群。

ゾーイ・カザンに、「預言者」のタハール・ラヒム、

エセロシアなまりを披露するビル・ナイも笑えるし。

やっぱりビル・ナイ、好きだ!(笑)

 

★12/11(金)からシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」公式サイト

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