ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ブローン・アパート

2011-01-31 23:12:53 | は行
主演のミシェル・ウィリアムズは
“裸の自分をさらけだせる”
いま最大級に注目の女優さんです。


「ブローン・アパート」52点★★


現代のロンドン。

公共団地に住む
若い母親(ミシェル・ウイリアムズ)は

夫と4歳の息子と
平凡な生活を送っていた。

あるとき彼女はバーで
男(ユアン・マクレガー)にナンパされ

満ち足りない日々を埋めるように
彼と寝てしまう。

そして
ある休日の午後。

夫と息子をサッカー観戦に送り出し
情事にふけっていた
彼女の目の前のテレビに

サッカースタジアムが
爆破されたというニュースが映し出された――!


息子を失った母親の
悲しみと再生を描く話……なんだけど

ちょっとテーマが大きすぎて
手におえなかった感あり。


最愛の人の死を受け入れ、
どう生きていくかを描くのに
まず、100分では無理でしょう。


爆弾テロに絡む
ミステリー部分も中途半端で


さらに
公団に住む彼女と高級住宅地に住む不倫相手の
格差の対比や

アラブ系少年とのエピソードなど

パーツを盛り込みすぎて
メッセージが不鮮明になってしまった。


ちょうど
C・イーストウッド監督が
「ヒア・アフター」(2月公開)で


喪失と再生という
同じテーマに挑戦していますが

あれくらいの時間と
テクと年輪がないとキビシイ。


それにしても
ミシェル・ウィリアムズ(30)。


大胆なセックスシーンも自然にこなし

それゆえに
リアルな生活感ある役柄を演じられる
貴重な女優さん。


本作でも
がんばってますが

「ブルーバレンタイン」(4月下旬公開。これはオススメ!)で
本年度の
第83回アカデミー賞の主演女優賞にノミネート。

やはり相当にさらけだした
「ブラック・スワン」のN・ポートマンと
ガチンコ勝負になりそうで
楽しみだ~。

やっぱ表現者って
どこまで自分を“開けるか”が
ポイントっすよ。


★1/29から公開中。

「ブローン・アパート」公式サイト
コメント (2)
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RED/レッド

2011-01-29 16:01:33 | ら行
最近、ホント
中高年が元気ですよねえ。

「RED/レッド」62点★★★


仕事を引退し
年金生活を送っている
フランク(ブルース・ウィリス)

ある日
何者かにいきなり家を襲撃される。


実はフランクは
元CIAのエージェントで
そのために襲われた可能性があった。


彼は
かつての上司ジョー(モーガン・フリーマン)、
同僚マーヴィン(ジョン・マルコヴィッチ)

そして
女スパイ、ヴィクトリア(ヘレン・ミレン)ら

ともに引退した
すご腕仲間を集めて
敵に立ち向かうが――?!


REDとは
「引退した、超、危険人物」の頭文字だそう。


豪華なメンツによる
どこかズッコケ入った
アクション・サスペンスです。



現役オヤジたちが
ドリームチームを組んで奮闘する

スタローンの「エクスペンダブルズ」に
状況は似てるけど

こちらには
ファニーな「怪盗もの」的コミカルさがあります。

定年版オーシャンズ4(人数足りないけど)
という感じですかね。


ジョン・マルコヴィッチが
イッちゃってる武器オタクを
活き活きと演じたり

ヘレン・ミレンが
ウキウキと銃をぶっぱなしたり
(ただし無表情で、それが怖い(笑))

ベテラン俳優たちも
楽しそうでした。


ただ
なぜブルース・ウィリスが狙われるのか
話がなかなか見えなかったり

逆に肝心の展開が
あっさり簡単すぎたりはするんですが

軽く楽しめる娯楽作、ですね。


★1/29から全国で公開中。

「RED/レッド」公式サイト
コメント (3)
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GANTZ

2011-01-28 12:47:17 | か行
公開前にテレビで「デスノート」放送中。
見てますデス。。。

「GANTZ」28点★


大学生の玄野(くろの、二宮和也)と
幼馴なじみの加藤(松山ケンイチ)は

地下鉄の線路に落ちた
酔っ払いを助けようとして
列車にはねられてしまう。


「うわ、マジでオレたち
死んじゃうのかよ……」


と思った瞬間、
二人は無傷でマンションの一室にいた。

部屋の中央には
謎の巨大な黒い玉が。

そして黒い玉は彼らに命令する。

「星人と戦い、殺してきてください」

え?オレら死んでないの?星人ってなに?

二人は訳のわからないまま
武器を手に
壮絶な戦いに巻き込まれていく――。



映画を見た時点で
原作マンガは未読。

けっこうどんな話か
楽しみにしてました。


なので
見たあとすぐは

はっきりいってあきれるほど
幼稚でつまらないと思った。


描写は残虐でグロいし
演出も大げさなだけ。
話は意味不明。
しかも意味を知りたくなるようなものでもなく。


死んだ人間だから
殺し合いに道義的問題はなくて

しかも殺す相手は
見るからに異形なルックスの“星人”って
なんじゃあ?という。


ただ
映画見たあとマンガ読んで
ちょっと印象、変わりました。

作者がCGから二次元の絵を起こしているなど
オリジナリティと創意工夫のある
独自作だということが
よくわかって


そう見ると
かなり忠実に
映像化されてるんだなあと。


黒い玉とか、武器とか
輪切りになる人間も、星人のルックスも。

冴えなくて、ちょっといやなヤツな
主人公も二宮にピッタリだし。


映像化が難しい
まさに「マンガ的」世界を
ふんばって映画化したクリエーターたちの
汗が見てきたというか。


黒い玉、一生懸命磨いたんだろうなあ……なんて。


もはや映画評というところとは
完全にズレてますが
しかし
見たい人には、求めるものが与えられるのかも
と思いました。

それにこれだけチョケチョケ言ってても
続きはとりあえず見る、とか
思ってますハイ。


★1/29から全国で公開。

「GANTZ」公式サイト
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白夜行

2011-01-26 21:17:24 | は行
ドラマ化もされているのに
今まで話を知らなかったのが
幸運だったかな。

「白夜行」73点★★★☆


昭和55年(1980年)。
廃ビルで質屋店主が殺害された。

容疑者の女が死に
事件は決着したかに見えたが


刑事・笹垣(船越英一郎)は
妙に落ち着きのある
被害者の10歳の息子

これまた妙に大人びた
容疑者の10歳の娘
気にかかってしかたない。


そして数年後。

成長した少年と少女
亮司(高良健吾)と雪穂(堀北真希)の周囲で
静かにひそやかに
事件が起き始めていた……。



冒頭
サスペンスの帝王・船越英一郎が
出てきた瞬間、
「え?」と戸惑いましたが

ミステリとして
糸がほぐれるまで
ちゃんと惹きつけてくれる作品でした。


まあ謎解きは
むしろ問題ではなく

観客に不快感の汚泥を
もがき泳いでもらうほうが
目的かもしれません。


それほど
いや~な話なのに
目をそらすことができない
妙な引力があるんですよねえ。


例えが悪くて申し訳ないのですが

我慢できず
汚い公衆トイレに入ったら

壁面にイヤな虫がいて

でも
いまさら動くこともできずに
仰視するしかない……
そんな感じ?


純白っぽい堀北&若手の高良コンビで
ここまで仕立てたのは
なかなかだと思います。


特に
登場シーンはさほどでもないのに
高良健吾がすごい存在感。

私としては
「告白」よりは断然
こちらを推したいところです。


「悪人」と比べると……どうだろう。

あそこにあった
魚や田舎の生々しい空気や匂いとはまた別な
うそっぽい、無機的な匂いゆえの
不快感というか。


まあどれも
暗くて多少
「いや~な」気分になるのは
似たようなものですけどね。


★1/29から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「白夜行」公式サイト
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冷たい熱帯魚

2011-01-25 14:49:54 | た行
2010年の日本映画ベストで
「告白」「悪人」「ヘブンズストーリー」が上位なら

2011年ベストには
確実にこれがくるでしょう!

「冷たい熱帯魚」80点★★★★


とある地方都市で
小さな熱帯魚屋を営む社本(吹越満)

高校生の娘と、再婚した若い妻との
3人暮らし。

娘は再婚相手になつかず
家庭はギクシャクしている。


そんなある日
娘がスーパーで万引きをした。

その場をとりなしてくれたのは
人の良さそうな男・村田(でんでん)。

社本も家族も
村田に心を許すが

しかしそれが、悪夢の始まりだった――!


目をそむけても
我々のまわりに必ずある「悪」や「暴力」を
どう伝えるか。

映画界でも小説界でも
果敢に繰り返される挑戦ですが

本作で園子温監督は
「血で血を洗う」方法を取った
といえるでしょう。


「愛犬家殺人事件」や
実際の猟奇事件に
インスパイアされた作品で

かつヴェネチア映画祭で大絶賛!
というだけあって

殺害の方法やその描写など
見た後、口のなかが血の味ってくらい強烈。

しかもそのなかで
笑いもとっちゃうという(笑)。

正直キツいと思ったけど
いや~これがめちゃくちゃ後を引いて
忘れられない味なんですよ。


まず
でんでんさん演じる悪人が最高、いや最悪(笑)。

わかりやすいヤクザ像や
恫喝タイプではなく

あくまでも物腰柔らかに
ひとなつっこく
人の懐に入り込んで、絡め取る。


それはもう身もだえするほどの
いやらしさで
ワル度、MAX。


ああ「ホンモノの悪」って
こういう姿かたちをしてるんだ、という
壮絶さです。



それに翻弄される
気の弱い主人公、吹越満さんも
これまた最高。


オザケンに似てるんだよねえ、やっぱり(笑)

草食な顔して
若い奥さんもらったりする
人間の生理や裏表を
見たことないほど、リアルに演じてました。



犯罪はなぜ起こるのか。

なぜバラバラにされた足とか腕が
ちょくちょく見つかるのか。

目の前にある
不可解な現実社会の解に
本作は
かなり近づいていると思います。


おすすめ!と言うのは無謀だけど
見ないで後悔するのは残念かも。

あ、いやらしい言いかた…(笑)


★1/29からテアトル新宿ほかで公開。

「冷たい熱帯魚」公式サイト
コメント (2)
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