ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

サンバ

2014-12-24 18:01:47 | さ行

こういうシャルロット・ゲンズブール、好きです。


「サンバ」71点★★★★

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コンゴ共和国からフランスに来て
10年になる青年サンバ(オマール・シー)。

真面目に働いてきた彼だが
手違いからビザを失効し、
収容所送りになってしまった。

移民を支援する団体から派遣されてきたのは
新米ボランティアのアリス(シャルロット・ゲンズブール)。

なんとも頼りないアリスに
サンバは自分の窮地を話すのだが……?!

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大ヒット作「最強のふたり」監督×主演のコンビによる新作。


昨今、フランス映画で題材になることの多い移民問題を主軸に、
しかし社会派に寄りすぎず、

純朴な黒人青年と
神経症のフランス人女性のピュアな恋を
エンターテイメント枠のなかで見せ切っていて、なかなか。

ポップソングの軽快で有効な使い方は
「最強のふたり」を思わせるし、

けっこうコミカルで笑いもあり。

上着の貸し借りで運命が替わるなど、
古典的な“映画”っぽさもいいです。


それにしてもシャルロット・ゲンズブール、
今回はかなり普通の女性の役ですが
はかなさとキレっぷりには、ますます貫禄が出てきた(笑)。


ブチ切れるシーンとか笑わせてくれるけど
本人は「コメディは怖かった」んだそう。
監督は彼女にアドリブをさせないようにしてあげたんだそうです。
そんな彼女の性質が、役にも表れている感じで
いいっすね。


★12/26(金)からTOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「サンバ」公式サイト
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天空からの招待状

2014-12-20 19:18:17 | た行

けっこう“環境もの”だった。

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「天空からの招待状」57点★★★


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台湾政府の職員として、20年以上航空写真を撮ってきた
チー・ポーリン監督が
定年の2年前にこの映画を思いつき、撮影したというドキュメンタリー。

全編、空撮で台湾を写しています。


なんだけど、
実は、ちょっと想像と違った。

驚きの映像をナレーションわずかで……なんていう
映画をイメージしていたんです。

確かに美しい自然はたくさんある。
空撮ならではの、驚きの映像もある。

でも、ナレーションがしっかり語り(日本版は西島秀俊氏が担当)、

無残なゴミの山や採掘場など、
繁栄のもたらした破壊をも写し出して
現状に警鐘を鳴らす、けっこうな環境ムービーだったんですね。


環境問題や告発テーマは好きなんですが、
「招待状」っていう日本語タイトルに
惑わされたのがいけなかったかな。

違う「びっくり」を期待してしまったのかも。
英語タイトルは「Beyond Beauty」だもんね。

作りがちょっと単調なのと
「終わるかな?」と思ってなかなか切り上がらないところも
ちょっと合わなかった。


ただ、環境破壊は止めないといかん。

このままでは取り返しがつかない
空から自国を20年、眺め続けてきた方がこれを撮ったということを
受け止めなければならん、と思いました。

景色もどこか日本と似ているので
他人事ではない感も、すっごく高いです。


★12/20)(土)からシネマート新宿・六本木・心斎橋ほか全国順次公開。

「天空からの招待状」公式サイト
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バンクーバーの朝日

2014-12-19 19:25:54 | は行

宣伝ポスターのイメージどおりです。ホントに。


「バンクーバーの朝日」57点★★★


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1900年代初頭、多くの日本人が
新天地を夢見てカナダへ渡った。

そして1940年ごろ。

木材所で働くレジー笠原(妻夫木聡)は
日系カナダ移民二世を中心とした野球チーム
“バンクーバー朝日”のキャプテンとなる。

チームはエースピッチャーのロイ(亀梨和也)を有するものの、
ガタイもパワーも桁違いの白人チームに圧倒され
まったく勝てなかった。

そんなとき、
レジーはある秘策を思いつくのだが――?!

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「舟を編む」石井裕也監督が、
実話をもとに描いた作品。

石井監督、
なんかやってくれるかと思ったんだけど
本当に、まっすぐだった。

実直だけど、もひとつ物足りない。

こういう事実があった、ということには
「へえ!」と思いましたが。

なんといっても
ホントにポスターのイメージ通りで
でも
「見たい!」と言っている人にそう言うと
「やっぱりそうなんだ!行く!」と嬉しそうなので

それでいいんだと思います。

でもねー
弱い野球チームのキャプテンとなった妻夫木氏が
やっとやる気になり
物語が動くまで50分かかるっていうは

長いよー(涙)。


★12/20(土)から全国で公開。

「バンクーバーの朝日」公式サイト
コメント (2)
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毛皮のヴィーナス

2014-12-18 23:58:45 | か行

おっとな~という。


「毛皮のヴィーナス」61点★★★☆


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パリのとある劇場。

演出家のトマ(マチュー・アマルリック)はその日、
舞台「毛皮のヴィーナス」のオーディションをしたものの
やってきた35人の女優全員がダメで苛立っていた。

そこに遅れて
オーディションを受けたいという
女優ワンダ(エマニュエル・セニエ)がやってくる。

イメージと全然違う彼女をトマは追い返そうとするが
彼女は強引にオーディションを始めてしまう。

すると、驚くべきことが起こった――。

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ロマン・ポランスキー監督が
マチュー・アマルリックと
自分の妻であるエマニュエル・セニエを主役にした二人芝居。

元は「マゾヒズム」の語源となった
ザッヘル=マゾッホの自伝的小説の戯曲だそう。

もう、こっからオトナな感じ?(笑)

冒頭、
ずっちゃかミュージックが鳴るなか、
どしゃぶりのパリの街からはじまり、

もうイヒヒと期待感アゲアゲ。

まあ想像どおりの会話劇と二人芝居で、
確かに二人とも達者。

なのですが
役者以外に目線の置き場なく、
映画としては、やや退屈さもある。

同じワンシチュエーション&登場人物わずかでも
「おとなのけんか」のような
ガッハッハではないかな。

見るからに“はすっぱ”なワンダが
舞台に立ったとたんキッと女優になる瞬間は必見だし、


アマルリックをどんどん懐柔していく様子は
「フッ」と笑いももれて、楽しいんですけどね。

題材といい、
多分にオトナ向けの映画ですね。


★12/20(土)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「毛皮のヴィーナス」公式サイト
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ガガーリン 世界を変えた108分

2014-12-17 23:40:13 | か行

けっこう見入っちゃいました。


「ガガーリン 世界を変えた108分」69点★★★★


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1961年4月21日。

ソ連の宇宙船に乗ったユーリー・ガガーリンは
人類初の有人宇宙飛行に、一人で飛び立った。

その途中、彼は
貧しい農家に生まれた少年時代
空軍パイロットになり、宇宙飛行士候補に選抜されてからの
苦しい訓練の日々を振り返る――。

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1961年に人類初の有人宇宙飛行をした
ユーリー・ガガーリンを描いた映画。

ロシアの壮大SF映画か?!と思ったけど、
そうした映像よりも
宇宙に行くまでの、ガガーリンの人生の歩みを見せ、
きちんと人の物語になっていました。

最終的に残った
20人ほどの宇宙飛行士候補生のなかで

なぜガガーリンが選ばれたのか? が
なんとなくわかったのが、よかったかな。

苛酷な訓練の中で鼻歌を歌っちゃうような
楽天さを持つ、マイペースキャラっていうんでしょうか。

みんなに愛されるキャラっぽく描かれていて、
そういう人が最終的に強いのか、というのは
何処か「宇宙兄弟」に通じるようで、おもしろかった。

本当に一人で行ったんだ・・・とか
当時の苛酷な状況もよくわかりました。


おなじみ『週刊朝日』ツウの一見で
はやぶさ開発で知られる宇宙ツウ、「はまぎん子ども宇宙科学館」(横浜市)館長
的川泰宣さんにお話を伺いましたが

確かにガガーリンという人は
チームの雰囲気が悪くなったときに、場を盛り上げるような
人をまとめる力に長けていた人らしい。
若田光一さんも同じタイプだとおっしゃってました。

選ばれる人って、そうなのね。

ただ映画は宇宙からの帰還で終わってるんですが、
帰ってきてからのガガーリンはいろいろあったみたいで
そっちのほうが実は気になるんですけどね。


★12/20(土)から新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「ガガーリン 世界を変えた108分」公式サイト
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