ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?

2013-01-31 23:41:44 | た行

なんだかタイムリーに
メンバーの坊主謝罪ニュースが入ってきて
どうにもイヤな感じが加速。

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「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」55点★★☆


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AKBのドキュメンタリー3本目。


前回は「震災」と「被災地慰問」という大きなトピックがあったけど
今回のトップニュースは、やはり前田敦子の卒業。

彼女の卒業発表から始まり、ラストの東京ドームまでが
映画の中心です。


ただ
「センターの重圧」というテーマは前回も散々みたし
いまいち盛り上がりには欠ける。

あっちゃん本人の
卒業に関するインタビューがないのも消化不良。

それに
さすがに女の子たちが泣きまくるのも
見飽きてしまったというか(苦笑)

また
AKBネタがニュースとして取り上げられる機会も増え、
「卒業」含め、目にしたことあるシーンが多かったのも原因かもしれませんね。
それだけグループが成長した証ではあるのかと。


それにしても今回気になったのは
例の「恋愛禁止」ルールに違反したメンバーたちの描写。
やたら数が多いのも「なんだかなア」なんだけど

発覚→謝罪で
無意味にバタバタと辞めていく少女たちをみていると
なんだか気の毒でウンザリしてしまう。

しかも謝罪のさせかたが
他メンバーとそのファンが集まる「握手会」ってのがまたいやらしい。

何のお膳立てもなく
いきなり始まる壇上からの謝罪は
まさに見せしめ以外の何者でもなく

ファンじゃない人は気にもとめずスルーするしさ。
これ相当なトラウマになるよねえ。

バレたらそうなるのがわかってて
男の家に泊まらずにいられないという(真偽は知らんけど)
その情熱も謎っちゃ謎なんだけど(若さゆえ?苦笑)


しかし違反者をここまで罰する必要性って
ホントにわからん。
いったい、この団体は何がしたいのか。

博多に飛ばされることになった
指原氏をみていると
このキャラにはやはり得難いものがあるのもわかり、

つくづくもったいなかったなアと
なんだかげんなり、失速する感じ。

グループの去就がターニングポイントにさしかかっていることは
間違いないですね。

★2/1(金)から全国で公開。

「DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?」公式サイト
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アウトロー

2013-01-30 23:31:14 | あ行

ラスト近くは「その夜の侍」
侍でしたよ。

「アウトロー」73点★★★★

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ピッツバーグ近郊で昼間、
5人の男女が無差別に狙撃され、死亡する事件が発生。

警察は遺留品から
元米軍スナイパーのバー(ジョセフ・シコラ)を逮捕する。

だがバーは黙秘を続け
「ジャック・リーチャーを呼べ」と要求してきた。

ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)とは
元陸軍の秘密捜査官。

しかし2年前に忽然と姿を消していた――。

リーチャーとは何者なのか?
そしてこの狙撃事件の真相は――?

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「ユージュアル・サスペクツ」脚本家が監督、
トム・クルーズ主演のアクションサスペンス。

ミッションインポッシブルばりの
イケイケ&ガンガンアクション系か思いきや
すごく丁寧でリッチ、手堅いサスペンスでした。

事件の顛末を流麗に見せる冒頭10分で
「お!」とよい感触。

「こいつは怪しい」「こいつは死ぬな」フラグを
丁寧に仕掛けては回収し
こちらの思うとおりを、とことんやる。

そして孤高のヒーローに
思わぬ助っ人が現れたり

女性との関係が異常にストイックなのも効いてるし
(相手役のロザムンド・パイクがいい!)

クラシカルなまでに映画の定石を外さず、
ときにまどっろこしいほどのていねいさなんだけど、
そこに「流儀」を感じる。

そして最後までくるとわかるのだ。

これが現代の「西部劇」であると!おお、そうか!(笑)

アウトローは
正義と民衆と町の味方なのだ。


そしてラストは侍ですよ。


と、思いのほか堪能したんですが
極論言っちゃうと
もしかして、これトム様でなくても、
いや、ないほうがよかったんではないかと(笑)

どうしても先入観あるもんね~。


★2/1(金)から全国で公開。

「アウトロー」公式サイト
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マリーゴールド・ホテルで会いましょう

2013-01-28 21:43:18 | ま行

ベテラン役者による
期待どおりで安心のウェルメイド映画。


「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」73点★★★★

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イギリスに住むイヴリン(ジュディ・デンチ)は
長年連れ添った夫を亡くし、これからの人生を考えていた。

そんなときに目にしたのが
インドの高級リゾート
「マリーゴールド・ホテル」での長期ステイプラン。

インドで第二の人生を送ろうと
期待に胸膨らませたイヴリンを待っていたのは

同じくさまざまな事情で集まった6人の男女と
オンボロのホテルだった――?!

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冒頭で
ホテルに集まる7人の
その前の状況と生活が軽く点描されるんですが

それらが集約し、話が動き出す様子が
とても見事でした。

「音」で興味を引いたり、笑わせるテクも上級。

インドが舞台なのも生き生きと効いている。

なんといっても
新しい環境に積極的に順応しようとする
ジュディ・デンチのハッピーで楽しそうなこと!

いっぽうで
不平ばかりで、何事にもチャレンジしようとしない人間の
つまらなさが描かれ

「あ~、最近、旅もしてないなあ」とか
どうも守りに入りがちなわが身を
若干、振り返ったりもしました。


ただ
「いくつになっても、新しい世界に飛び込もう!」という
テーマはありきたりではあり、
もう少し冒険とスパイスがあってもよかった。

高齢者向けの柔らかいシチュー…という感じも
しなくはない(苦笑)

それでも
年とともに気難しくなってしまった妻に
夫が言う言葉は効いたなあ。

「いい歳の取り方」のモデルとして
参考にしたいす。


★2/1(金)からTOHOシネマズシャンテ、Bunamuraル・シネマほか全国で公開。

「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」公式サイト
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塀の中のジュリアス・シーザー

2013-01-25 23:28:11 | は行

だまされているのか、
そうじゃないのか――

はい、ワシはだまされました(笑)


「塀の中のジュリアス・シーザー」65点★★★

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ある舞台で俳優たちがシェイクスピアの
「ジュリアス・シーザー」を熱演している。

終了後、喝采のなか、舞台に立っていた彼らは
それぞれ房へと帰っていく。

そう、ここはイタリアにある刑務所で
演じていたのは服役中の囚人たち。

彼らは刑務所の演技実習として
シェイクスピア劇を演じているのだ。

映画は囚人たちのオーディションから
刑務所内での練習風景を映していく――。

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これはですね~
予備知識を半分くらいにして見ておくと
より楽しめる作品かもしれません。


刑務所で囚人たちが芝居をする話――だとは知っていたので
ドキュメンタリーだと思ってたんですが、

観ると
ライティングも演出もかなり計算されている。

すると
「え?ホントに囚人なの?これ俳優じゃないの?」
まず疑いが生じる。

だって
囚人たちのオーディションもすごい迫力だし

刑務所内での練習風景にも
「普通こんなアングルで撮れないよね?!」と疑いがまた生じる。


すると、どんどん
虚実ごちゃ混ぜになっていき、混乱させられるんです。

見終わってから
資料に載ってる俳優たちのプロフィルに「囚人」と書いてあるのでさえ
「まあ手が込んでること」とか疑っちゃった(笑)

まあ実際に彼らは本物の囚人たちで
刑務所も設定もすべてホンモノ。

それを“ドキュメンタリー”としては撮らずに
凝った作りにしてあるわけで

すべてはタヴィアーニ兄弟監督の
綿密な仕掛けによるものなんですね。

モノクロを多様した画面も美しく
76分という尺にも拍手を送りたい。

なんですが、
ワシにはちょっと高尚すぎるというか
眠くてまいったのは事実です。


でも知るといろいろおもしろい話があって

まず舞台となったこの刑務所は
「ゴモラ」に描かれたマフィア“カモッラ”の犯罪者などが
多くいるところなんだそう。
なので、囚人たちにも日常的に芝居に親しんだりしていた
インテリがけっこういるのかもしれない。

彼らの演劇が評判になっているのも本当で
人々が観劇のために、刑務所内にある舞台までやってくるらしい。

そして
ブルータス役の彼は
服役後、俳優になり「ゴモラ」にも出てるらしい――。

これぞ
映画とリアルが混じるおもしろさですね。

★1/26(土)から銀座テアトルシネマほかで公開。

「塀の中のジュリアス・シーザー」公式サイト
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明日の空の向こうに

2013-01-24 23:49:30 | あ行

2011年に大ヒットした
「木洩れ日の家で」(07年)監督の新作です。

「明日の空の向こうに」65点★★★☆


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ときは現代。

ポーランドと国境を接する
旧ソ連(ロシア)の貧しい村で

身よりのない6歳の少年ペチャ(オレグ・ルィバ)は
11歳の兄とその友人と、駅舎で暮らしている。

ある日、ペチャは兄たちが
よりよい暮らしを求めて国境を越え、
ポーランドに行く計画を立てていることを知り――?!


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ロシアからポーランドに逃れようとする孤児たちを
子どもたちの目線から描いた作品です。

冒頭、駅で寝起きし
タバコを吸う6歳少年の姿に
まず誰もが「キッド」(1921年)を思い浮かべるのではないでしょうか。

なにしろ
いつの時代だか定かでなく、状況の説明もないので
いきおい「戦争中?」とか思ってしまう感じ。


しかし
少年たちがペットボトルを拾ったりするので
「え。現代なのか?」とわかる。

こんな過酷な状況が
いま現在もあるのだ、とヒヤリとします。


おねだり上手で世渡り上手な年少のペチャ役の子が
魔性ように巧く、見応えがあります。

子役はみな素人さんだそうですが
監督は相当に子ども使いが上手であることもわかります。

彼らの旅の過程にも悲壮感はなく、
風景も陽光溢れていて美しい。

そのなかで厳しい現実を描いているという
手法には共感できます。


ただ
全編、普通のストーリー進行ではなく、
子供の目線で、情感豊かに描かれるスタイルなので
なかなか目的が明確にならない展開にイラッとしなくもなかった(苦笑)。

それでも、ガラス越しの目線や
なにより「子供を救う」というテーマは
前作と共通していると感じました。

ラストも割と好きかな。


★1/26(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「明日の空の向こうに」公式サイト
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