ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フライト

2013-02-28 23:33:26 | は行

予告編(特に映画館の)を見て想像するのと
100%違う中身だと、断言できますねえ。


「フライト」71点★★★★


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パイロットのウィップ(デンゼル・ワシントン)は
オーランドからアトランタへ向かう飛行機を操縦中、
機体の異常に見舞われ、絶体絶命になる。

天性のカンと経験で
奇跡的に多くの乗客を救ったウィップは
一躍ヒーローに。

しかしその後、
彼にある嫌疑がかけられて――?!

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パニック?サスペンス?ディザスタームービー?――と
何も知らずに楽しみたい方はここまで。



墜落までの20分間はものすごい迫力です。

でも
「パニック映画」と思い込んで
ビールとポップコーンを買い込むと、後悔するかも(苦笑)

というのも本作は
パニック&サスペンスのようでいて
実はアルコール依存の男を描くドラマなんです。

「飲酒したのか?してないのか?」「白か黒か?」とかでもなく、
はじめからラリってるところを見せてくるんだから
「えっ」と思いましたよ(笑)


これで内容がつまらなければ
「騙された!」となるけれど

そこは貫禄のロバート・ゼメキス監督、
ダメ男の人間ドラマとしてキチンと見せてくれます。


「これほどの目にあっても、まだ飲むのか!」と呆れつつ、
飲酒常用者の深刻な病理を深く考えたり。


またそこを重苦しく描かないところが、
逆に「他人事ではない」怖さも感じたりして。


飲酒だけでなく、
恋愛だろうが、親だろうが、ケーキだろうが

モバゲーだろうが、買い物だろうが、
「自分が依存している」「病気である」「今のままではダメだ」
自覚することがどれだけ難しいか。

また
「それをしないと、前に進むことはできないのだ」ということを
描いているんだと思います。

けっこう、おもしろいです。


★3/1(金)から全国で公開。

「フライト」公式サイト
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ジャンゴ 繋がれざる者

2013-02-26 21:14:56 | さ行

助演男優賞、これはバンザイです。

「ジャンゴ 繋がれざる者」69点★★★☆


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1858年、奴隷制時代の米テキサス。

奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は
突然現れたキザな男シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)に助けられる。

彼はお尋ね者を始末する賞金稼ぎで
ジャンゴにある悪者の面通しをしてほしいというのだ。

奴隷制度を嫌うシュルツは、
ジャンゴを馬に乗せ、助手として扱う。

シュルツとの道中で
次第に人間の尊厳を取り戻していくジャンゴは
連れ去られ、どこかに売られた妻を取り返したいと考えるが――。

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タランティーノ監督の新作は
おなじみの独特なバイオレンスと
お間抜けな笑いあり

繋がれた奴隷が支配に抵抗し、自由を求めるという
テーマも明快な西部劇。


冒頭の「ジャンゴ~♪」は「ランゴ~♪」にそっくりだけど(笑)
映画好きにツボるショットも多く

唐突だからこそ妙に「スカッ」とするバイオレンスシーンも、
血の飛び散りも、
タランティーノ節炸裂でさすがにおもしろい。


ジャンゴを差別せず、自由への道すじを示す
キザ男クリストフ・ヴァルツがめちゃよくて、

ひょうひょうとキザで、しかし嫌みのない絶妙な演技。

アカデミー賞助演男優は納得です。


ディカプリオも悪役で出てるんだけど、
“超悪”ではない、どこか二代目ボンボン的なゆるさがあって
ジャンゴもシュルツも観客をも、油断させる。
これはわざとなんだろうなあ。

で、全体的に
用事も戦いもサッサと済ませるし
展開としてはサクサクなんだけど

それでも
2時間45分かかってしまったのが
ちょっと惜しい。

やっぱり長いんだよなア。

ラスト、ここで終わっていいじゃん!って箇所が
2回ありましたね。


★3/1(金)から丸の内ピカデリーほか全国で公開。

「ジャンゴ 繋がれざる者」公式サイト
コメント (2)
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第85回アカデミー賞 作品賞ノミネート9本、勝手にランキング

2013-02-24 20:42:21 | た行

2013年 第85回アカデミー賞、作品賞ノミネート作の
9作品を勝手にランキング。

単純におもしろかった順です。


(1位)ゼロ・ダーク・サーティー(公開中)

主演女優賞はぜひコレで。

(2位)愛、アムール(3/9公開)

ミヒャエル・ハネケ監督、いいす。

(3位)世界にひとつのプレイブック(公開中)

助演女優賞はぜひこちらで。

(4位)アルゴ

これがどうなるのか全然わかりましぇん。

(5位)ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日

視覚効果賞、かな。

(6位)ジャンゴ 繋がれざる者(3/1公開)

助演男優賞、あげたい。

(7位)レ・ミゼラブル

大ヒット中です。

(8位)ハッシュパピー バスタブ島の少女(4/20公開)

フレッシュです。

(9位)リンカーン(4/19公開)

主演男優賞はかたそうだな・・・。ワシから「銅像にもそっくりで賞」あげます。
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バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!

2013-02-22 23:44:29 | は行

こう言っちゃなんだけど
粗悪な「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」――だな(苦笑)


「バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!」20点☆


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独身アラサーのレーガン(キルスティン・ダンスト)
高校時代の同級生ベッキー(レベル・ウィルソン)に呼び出され
ランチをしていた。

高校時代モテモテだったレーガン
ベッキーをおデブでブス子ちゃんとずっとバカにしており、
いまでもそれは変わっていない。

が、そんなベッキーが
なんと結婚するという!

「そんなのあり得ない!」と
怒り心頭のレーガンは、学生時代の友人に報告。

いずれも独身の3人は
ベッキーの結婚式のためにNYに集まるが、
まったく祝福していない様子がダダ漏れで――?!


*****************************


バチェロレッテとは独身女子、という意味だそう。


女子グループのうち
学生時代から見下してたデブ子ちゃんが結婚することになり
「やられた!」と騒ぐうわべな友人らが、
結婚式前夜のドタバタをする話。

「自分は彼女よりイケている」と信じて疑わない3人は
「なんであの子が?」と
彼女を散々こけにするわけですわ。

そのやり口というのが
ウェディングドレスを破いたり、汚したりと
レベル低っ!のやりたい放題(失笑)

コメディのネタなのはわかるけど、
女子の悪意がシャレにならず、ちっとも面白くない。

てか、女が全員こんなふうに思ってると思われたら
かなわないわけですよ(笑)


途中退場した男性がいたけれど
さもありなん、でした。

こうなると
格別好きではなかったけど、
やっぱり「ブライズメイズ」はよく出来てたなと思います。


唯一納得できたのは
キルスティン・ダンストの
うっすら全身に脂肪のついたような
「無理しないで、洋服、もうワンサイズあげたら?」な、たるみ加減。

独身妙齢の悲哀と相まってリアルでした。

★2/22(金)から公開。

「バチェロレッテ あの子が結婚するなんて」公式サイト
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遺体 明日への十日間

2013-02-21 23:31:17 | あ行

全身全霊で役に当たっただろう
西田敏行氏の静かな熱意がすべてと思う。


「遺体 明日への十日間」70点★★★★

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3.11のとき、津波にのまれた岩手県釜石市。

多くの人が亡くなり、
廃校となった中学校の体育館が遺体安置所となる。

医師(佐藤浩市)ら歯科医師(柳葉敏郎)らが
身元確認にあたるなか

しかし、
市職員(筒井道隆)らも警察関係者も
次から次へと運ばれてくる遺体を前に呆然とし、
現場は混乱に陥っていた。

そんななか、かつて葬儀社で働いていた
民生委員の相葉(西田敏行)が
遺体との接し方をみなに伝えようとする――。

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ジャーナリストのルポを基にした作品。

地震や津波そのものの描写などは排除し、
ひたすら遺体安置所となった体育館にほぼカメラをフィックスし、
「そこで何が起こったか」を、静かな筆致で描いています。

誰も経験したことのない極限状態のなかで
かつて葬儀社に勤めていた主人公が「死者との接しかた」をみなに伝える、
まさに「おくりびと」の役をするわけですね。


映画化には相当に気を使っただろうと思うし、
すごく大事なことを描いている・・・のだが、
やはり見終わってどよ~んと重い気持ちになるのは否めない。

ただ
それでも、見ておいてよかったとは思いました。


てか、
一番に見るべきなのは、行政関係者じゃないかなと思う。


災害時に、多くの遺体に接することになるわけだし、
どんなに大変なときでも、配慮の気持ちを持つことの大切さ、
そして
死者への尊厳の表しかたを学べるから。

主人公が
遺体に「寒かったね」「がんばったね」と声をかけてください、と
みんなに教えるシーンがあって

「これは誰でもやれるよねフツー」と思ったけど

冷静に考えたら、
身内ではない、知らない、その場であった遺体にそれができるか、と言われたら
簡単にできるものじゃないと思った。

動物になら自然に出るけど、
人間はわからない。経験したことないし。

そういうことを考えさせ、
極限状態のなかでも
人の心を失わないことで、人は人を救うことができるのだと、
けっこう胸にくる作品でした。

演じている人たちも、本当にガチな感じで
たぶん役ではなく“素”として、この場にいたのではと思わせる。
実際そうだったようです。


★2/23(土)から全国で公開。

「遺体 明日への十日間」公式サイト


来週2/26発売の『週刊朝日』で
石井光太さん(原作者)×西田敏行さん(主演)対談をまとめました。

「なぜ、いまこの作品なのか」そして
震災後2年となるいま思うこと・・・など
けっこう盛り上がってます。

ぜひご一読を
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