ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!

2012-11-30 21:02:38 | は行

この題材
おもしろくないわけがないけど
やっぱりおもしろかった!

**************************


「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!」74点★★★★


**************************


プロを目指す9歳から19歳のバレエダンサーたちが
奨学金やスカウトを求めて
N.Y.でのコンクールを闘うドキュメンタリー。

カメラが選んだ7人の少年・少女たちの
日々の練習や、個々の生活環境や背景を見せていくという
オーソドックスな作りですが

14歳までバレエ歴のある監督が
よく通る目で、それぞれ別の個性と環境を持った子たちを
うまくピックアップしてるので

おもしろいんですわ。

事前審査で5000人が300人になり
さらに決勝ステージに向かうにつれ
7人の運命はどうなるのか?!とハラハラ。

そしてクライマックスは
うわお、やっぱり盛り上がるわ!(笑)

結果も気になるけど
マジで夢に向かってひたむきにがんばるその姿に
拍手したくなります。


11歳の金髪少年アランが使う、足矯正器具の痛そうなこと!

アランに影響されて、バレエに真剣に取り組み始めた
イスラエル少女の
純愛の微笑ましいこと!

内戦地のアフリカから
養女になってバレエを始めた14歳の少女のモチベーションに感嘆し

コロンビア出身の16歳の少年に大器をみる。

“いかにも”な日本人教育ママも登場するし(笑)

バレエという芸術の実態(金銭面を含めて)が赤裸々に明らかにされるのも
見どころです。

全てを犠牲にしないとできない
ダンサーという職業の業と、

それでも一握りしか残れない
現実の残酷さにも深く感じ入りました。

人間の“才能”ってなんだろう?

こんなにも幼く、真剣な子どもたちを前に
あなたには本当の才能の区別がつきますか?

そんなふうに
見ている我々が試されてる気もします。


おなじみ『週刊朝日』
来週発売号の「ツウの一見」で
あの草刈民代さんに本作についてインタビューしました。

プロ中のプロが
さあ、どの子に才能を見出すのか――?!

気になるでしょ?(笑)
ぜひ、読んでみてください!


★12/1(土)からBunamura ル・シネマほか全国順次公開。

「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち

2012-11-28 23:34:52 | あ行

よく構築し、やりきった映画だと思います。

「アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち」73点★★★★


*************************

実家に向かって不機嫌そうに車を走らせる
リン(エレン・バーキン)。

リンは離婚後、別々に暮らしていた
長男の結婚式に呼ばれたのだ。

車には
エキセントリックな次男(エズラ・ミラー)と
軽い自閉症の三男(ダニエル・イェルスキー)が同乗。

精神的に不安定な長女(ケイト・ボワース)は
遅れてやってくるという。

しかし
ようやくたどり着いた実家で
リンは実の母親や親戚らにイヤミを言われ、うんざり。

さらに元夫(トーマス・ヘイデン・チャーチ)の妻(デミ・ムーア)
ドヤ顔にもうんざりだ。

果たして結婚式は無事に終わるのか--?!

*************************

まあ
結婚式にかこつけた親戚の集まりなんて、
ろくなもんじゃないという見本すね。

大・大共感!(笑)

母は精神的に不安定、その子どもは
ドラッグ中毒に、自傷行為、自閉症・・・。

あまりに問題ありすぎな主人公一家は
最初はさすがに「困ったもんだ」と観客を苦らせる。


いつも自分が“中心”で
些細なことでも大騒ぎにする
困った母親(エレン・バーキン)の描写も
かなり痛々しく
見ていてキツいところもある。


でも、だんだん
“正常な側”としている人々の
無神経さや思いやりのなさに
「いや、まてよ?」
「やっぱりこっちの味方!」と反転してしまう。

そんな翻弄がうまく、気持ちいいんですね。


演出も気が利いていて
話題の合間に、閑話休題的にはさまる
子どもたち自作の「ドキュメンタリービデオ」が効果的だし

久し振りに一族が集まったのに
夕飯はケンタッキーだったり(笑)

そうしたさりげない部分に「田舎度」や
無意識の“無神経さ”がうまく出ていました。

1985年生まれのサム・レヴィンソン監督は「バンディッツ」のバリー・レヴィンソン監督の息子。

さすがというか
まあ、よくもこんなに豪華キャストを
上手に動かしたね!という。


「少年は残酷な弓を射る」では
耽美すぎて苦手だったエズラ・ミラーですが
この映画では、そんなキャラをうまく生かしているし、

あとデミ・ムーアは見どころですね。

かなり痩せたし
最強な「どや顔」「オラオラ」全開!

劇中で言われる「闘犬みたいな女」は
アハハ、言い得て妙にすぎる!(笑)


★12/1(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館

2012-11-27 22:06:08 | あ行

夕べ深夜2時半に
うっかりこの映画のCMを見てしまった・・・
・・・怖いっつーの!


「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」59点★★★


***********************

妻に先立たれた弁護士アーサー(ダニエル・ラドクリフ)は
幼い息子を抱えて、孤軍奮闘していた。

しかし世間は甘くなく
事務所の所長から
次の仕事をこなせなければ「クビ」だと言われてしまう。

その仕事とは
田舎町のある館で亡くなった夫人の
遺品や遺産の整理だった。

田舎町に降り立ったアーサーは、
町の様子がどこか奇妙なことに気づく。

その町ではかつて
子どもたちが次々と死んでしまう悲しい出来事があったのだ。

なんとその元凶は
アーサーが向かう館らしい――。

彼はたった一人、
忌まわしき館を調べることになるが・・・?

***********************

「ハリポタ」終了後の
ダニエル・ラドクリフの最初の一手は
1983年に発表され、TV化や舞台化された人気ホラー小説の映画版。

最初は
映像も綺麗だし、
さほど品のない脅かしでもないし・・・と思ってたんですが、
いや、かなりガチホラーでした!

かつて「吸血鬼ドラキュラ」(58年)などの怪奇映画で一世を風靡し
「モールス」(10年)で復活した
ホラーレーベルが製作しているそうで

影や鏡、窓ガラスなどの材料を駆使して

「あれ、いま画面の後を誰か横切ったよ――?!」
「え?誰かが後ろの鏡に映ってる――?!」的な
古典的で確実に怖い「ギャー!!」手法のオンパレード。

なので
怖がりさんには正直、おすすめできません(苦笑)


怖いのは百歩譲るとして
「永遠のこどもたち」みたく
その背景に深い悲しみやなんかが
あれば納得できるのですが、

あまりそうした深みはなく
どう怖がらせるかがだんだんエスカレートしていく・・・という印象が
ちょっと残念でしたねえ。

ただ
後味は別にして
決着は悪くない展開だった。


品の良さも最後まで保たれているし

中身にもう三捻りくらいあれば
よかったな、と思います。

しっかし、あ~怖かった!(苦笑)


★12/1(土)から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

恋のロンドン狂騒曲

2012-11-26 23:22:45 | か行

「ミッドナイト・イン・パリ」「人生万歳!」好きすか?
じゃ、これも間違いないと思う!


「恋のロンドン狂騒曲」78点★★★★


*************************

サリー(ナオミ・ワッツ)と
夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)は
一見、平凡な夫婦。

しかし、実際は危機に陥っていた。

一発屋の作家ロイが新しい仕事を全然しないので
サリーのイライラは頂点に。

しかしロイは妻の心知らず
隣家に越してきた
エキゾチックな若い娘(フリーダ・ピント)に目を奪われている。

そのころサリーの両親も危機に陥っていた。

父(アンソニー・ホプキンス)が突然若返りをもくろみ
家を出て行ってしまったのだ。

傷心から怪しいカウンセラーや
宗教方面にハマった母(ジェマ・ジョーンズ)は、
娘にも救済を授けようとするが――?!

*************************


初老の親世代カップルと、
その娘である30代カップルの恋愛における混戦模様を
熟練技でさばき

「ミッドナイト・イン・パリ」の軽妙さと
「人生万歳!」の世代カップル考察を
より深めたような感じ。


軽快なジャズに
絡まる男女のとんちんかんな(笑)恋愛模様、
小粋なナレーション・・・と
望むもの全てに応えてくれてるアレン映画ですねえ。


どんずまりな人生から一歩踏み出す人、
よからぬ企みが裏目に出る人。

どの人物の行状も、その観察眼が見事すぎて、
心地よくて、笑えるんです(笑)

先行して公開されたウディのドキュメンタリー映画
「映画と恋とウディ・アレン」
併用するとよくわかるんですが

彼はホントに“恋バナ”を生涯考察し続け、
76歳のいま
その研究と実践の歴史が
円熟味と洒脱を極めて、結実したんだなアと。


「映画と~」にもあったけど
彼にもイマイチな時代もあったわけで。

「ギター弾きの恋」(99年)とか
「スコルピオンの恋まじない」(01年)とか。

このへんって自分主演の形態と恋愛観に
少々、無理が出てきた感じ。

でもその後
「さよなら、さよならハリウッド」(02年)で
まさに“老いた自分”を生かした
“ヨボ芸”で返り咲き

同時に自分を登場させない
完全な客観的見地のもと
「マッチ・ポイント」(05年)のような傑作が生まれた。


その後
スカヨハ熱も一段落し(笑)

ヨボ芸のエッセンスを入れつつ、
それを役者に投影させて
最近の連作は大成功してると思う。

本作も
アンソニー・ホプキンスに全て任せ、
うまくいってますね。

ナオミ・ワッツのあのうんざり顔ったらもう!(笑)


★12/1(土)からTOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほかで公開。

「恋のロンドン狂騒曲」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

007 スカイフォール

2012-11-25 22:04:30 | た行

完全に“英国推し!”なところも
カッコよかったすよ。


「007 スカイフォール」70点★★★★

********************************


英国諜報機関MI6のエージェント
007ことジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は
ミッションの途中で銃撃され、川に転落する。

ボンド死す――?!

しかし彼は
MI6の“M”(ジョディ・デンチ)の呼びかけに答えて復帰してくる。

今度の敵は、元MI6の諜報員で
相当に手ごわい相手だった――!

*****************************

スタイリッシュというよりも
クラシカル・ビューティー。

女王陛下の、な雰囲気を
強く感じました。

かといってクラシカルだけではなく
タイトルロールの意匠に
ヴィビアン・ウエストウッドっぽい
パンキッシュなイングランドもあったり、

アクションもギリギリ危機感で煽るのではなく
それ以外の“凝り方”に独自の美意識がある感じ。


MI6本部が古い建物に移動したり、
クラシカルなボンドカーが登場したり

「M」=ジョディ・デンチが
かなり主役なのも、
そういう理由でしょうねえ。


ダニエル・クレイグのスーツ姿はもちろん
上海のブルー、マカオの赤・・・と
色で統一されたイメージも美しかった。


タイトルの「空が落ちてくる」に表れるように、
全編にロマンチズムが漂ってて
割と好きす。


ただ中盤までは盛り上がりどころが掴めず、
眠くもありました。

その後、
日本の「軍艦島?!」登場で飛び起きましたケド(笑)
ロケハンだけで、撮影はしてないらしいですが
いいロケネタ探してきますわなあ。

敵役ハビエル・バルデムも怪演ですが
Q役のベン・ウイショーがいい!

クルクルとめまぐるしく
ついていけないアクション系にうんざりな方に
よりオススメできます。


★12/1(土)から全国で公開。

「007 スカイフォール」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする