心の音

日々感じたこと、思ったことなど、心の中で音を奏でたことや、心に残っている言葉等を書いてみたいと思います。

心の叫びが三十一文字に

2004-11-21 22:30:34 | Weblog
 一日中 言葉なき身の淋しさよ 君知り給え 我も人の子(東京都、103歳)
 財団法人みやざき長寿社会推進機構が2002年から実施している「心豊かに歌う全国ふれあい短歌大会」の昨年の最優秀作品だそうです。高齢者の日々の淋しさがひしひしと伝わってくる作品です。選者の宮崎県立看護大学教授の伊藤一彦氏は「一日中という、この言葉の重さ。君知り給えの君とは、私たちを指している。心の叫びが三十一文字に凝縮されている」といっています。
 この歌を最優秀賞に選んだのは、「淋しさを率直に受け止めているから」と伊藤氏はいいます。また「人間とは弱いもの。その弱さ、淋しさを見せる人こそ豊かな人間。淋しさを伝えて初めて、人と人とは理解し合える」と。
 暖かになったら 逢おうねという友の 賀状1枚 抱きしめて寝る(群馬県、八十八歳)
これも賀状1枚を抱きしめて寝る作者の孤独感が伝わってきますが、三十一文字の中にその思いを書くことで、ふだん言えない本当の心を表現しているということが言えそうです。
 伊藤氏が言うには、中には「年老いて ボケ半分で詠む歌は 我も分からず 人も分からず」というようなものもあるようですが、自分の思いや心の叫びを、三十一文字で言える手段を持っているということは、とてもすばらしいことですし、孤独を和らげるものだと思います。
 大岡信氏は次のように言っています。「私は短歌や俳句を読みながら、何に最もうたれるかといえば、そこにからめとられている言葉の光のごときものが、他の場所では必ずや死んでしまうにちがいないほどに、その場所で、危機的に、生きている見事さにうたれるのである。」(毎日新聞1970年10月12日)
 日本に伝統的に息づいている三十一文字の表現手段、書き言葉による自己表現手法を私たちは大事にしたいものです。

後がないという気持ちがいい結果に-ダイエーホークス三瀬投手の場合

2004-11-21 11:53:07 | Weblog
 先日ドラフト会議があって、今年も多くの新人選手がそれぞれ大きな夢や希望をもってプロ野球の世界に入ってきます。厳しいプロの世界で一流選手となることは決して簡単なことではありませんが、それぞれ怪我や病気には十分気をつけて、ベストを尽くして頑張ってほしいと思います。
 さて今年パ・リーグで史上3人目の新人王・最優秀救援ダブル受賞をしたダイエーホークス三瀬投手は、昨年のドラフト7巡目の指名選手です。新聞によると、高校時代はエースでもなく背番号10。「就職に有利だから」と選んだ理系の大学野球部は、本人曰く「超弱小チーム」。入社した企業の社界人チームも1年目でクラブ化されたといいます。2年前の都市対抗野球に補強選手として出場した際には、先発で1アウトも取れず、自分のチームは昨年限りで休部になり、野球をやめる覚悟をしていたそうです。
 そんな状況でのダイエーの指名。年齢27歳で、妻子持ち。当然のごとく10歳上の奥さんの猛反対にあったそうです。夢を追い続けたい男と、生活の安定を求める妻。これは「男と女の永遠に解決しないテーマ」の一つですね。しかし彼は猛反対の妻を何とか説得、妻子3人を広島に残し単身赴任。数年後に芽を出せばいいとか言っておられる状況ではなく、妥協や甘えは許されなかったといいます。
 そこから背に腹は替えられぬ彼の努力が始まります。筋力トレーニングで体を鍛え上げ、開幕前に20%あった体脂肪率を12%に減らし、球速は140キロ前半から、150キロ近くにまで伸びたそうです。本当にすごいことです。
 そして王監督ら首脳陣に認められて、5月にはストッパーという新人には大変重い役割を任せられます。勝って当たり前、つねに一発逆転の危険性がある役割ですが、何とパ・リーグ新人記録の32セーブポイントをあげ、オールスターにも新人でただ一人出場、先日の日米野球にも出場しました。まるでアメリカ映画の「オールド・ルーキー」の日本版のようです。
 まさに「背水の陣」を敷き、努力した結果、その能力が開花したケースだと思います。プレーオフ終了後、妻子を呼び寄せ、一緒に生活することになったそうです。プロ入りに反対した広島育ちで「カープファン」だった奥さんも、今は大の「ホークスファン」となりました。いろいろと心配や苦労をしながらも夫を送り出してくれた奥さんの決断や我慢・協力にも心から拍手ですね。
 三瀬投手には2年目のジンクス(今年は和田投手がそんな感じでした)など吹き飛ばして、来年以降も新生ホークスの守護神としての大活躍を期待したいと思います。