窓辺の小太郎

野付半島の渡り鳥や動植物の生き生きした「瞬間の美」を目指します。

アオアシシギ

2019-08-30 19:41:58 | シギ・チドリ

 野付湾の干潟に足を踏み入れると聞こえてくるのがアオアシシギのピョー、ピョー、ピョー

太くてよく透る三声です。私の姿をいち早く見つけ、警戒して飛び去って行きます。

おばんです。小太郎でごじゃります。

             ◆  アオアシシギ  ◆

シベリアで繁殖していたアオアシシギは7月には姿を見せます。初めの頃は1羽、2羽

と少数ですが、8月に入ると群れになってやってきます。野付湾に広がる広大な干潟を

見ていると声だけが聞こえてきます。

分散して降りていて、時々オジロワシやカラスの接近で飛び立って移動するのを見ると

かなりの数が逗留しているのが分かります。

彼らは干潮になると茶志骨川や当幌川の河口や上流までやってきます。小さな魚たちが

浅瀬に群れでやってくるからです。川縁に降りて、群れになってくる魚を長い脚を使い、

駆け足で追いかけます。くちばしを水面に水平に差し込んで、走る姿はなかなか滑稽な

行動に見えます。

干潟にできる小さな水路にやってきて、魚を追い立て捕る戦略は効率がとてもいいようです。

効率が悪くなると隣の水路に移動し、気の緩んだ魚の群れを追い立てます。

引き潮で水が流れで行く時は浅瀬の流れがあるところで、移動をあまりせず、待ち受けで

捕っています。潮の動きを巧みに利用する戦略家であります。

魚を捕まえると小さければそのまま食べますが、大きいと嘴に挟んで水のないところに

移動し、確実に食べることもします。タンチョウも良くやる光景です。

彼らは12月の氷が張る前まで滞在しています。

 足先が尾より出ています。長いんです。上面では両翼の真ん中、背中の部分が白く、尾まで伸びています。


ヒバリシギ C. subminuta

2019-08-28 18:02:29 | シギ・チドリ

ヒバリシギがたくさん来ています。来ているのは分かるのですが、彼らは干潟湿地の

草むらの中におりて餌を捕るので、遠くからは見つけずらいのです。

おばんです。小太郎でごじゃります。

              ◆  ヒバリシギ  ◆

本州で見かけるのはほとんど内陸部。田んぼや池などの浅いところの草陰にいることが

多く、見つけづらく、淡水を好むシギだと言われています。

野付半島の湾内の湿地はほぼ塩水の影響が強いところで、餌を捕り生活しています。短い

オオシバナやヤチスゲが生えている湿地を歩くと5m先からチュリリとかわいらしい声を

上げ、素早く飛んでいきます。その声をきっかけに周りにいたヒバリシギが一斉に飛んで

いくこともしばしば。100羽以上は入っている感じです。

トウネンの群れに入っていることがあります。トウネンが干潟の浅瀬を好み、忙しく泥の

中のゴカイや水生の昆虫、ユスリカのボウフラをたべていますが、ヒバリシギは草陰にいて

様子を見てトウネンに混じります。

動きがきびきびして、トウネンの動きが遅く感じるのが不思議です。見ていると草の上部に

付いているユスリカの成虫をこまめにつまみ、食べています。よけい忙しそうに見えます。

カラスが襲来するとトウネンと一緒に飛びますが、ヒバリシギは飛び上がりが垂直で、

トウネンよりジャンプ力があります。おそらく繁殖地の環境が違い、生活様式もかなり

違うのだと思います。

彼らはシベリヤ中部やカムチャッカ半島で局地的に繁殖するシギで、まだ詳しき調査が

されていないのが現状です。観察しにくいシギですが、行動学的になかなか魅力的な

シギだと思います。

      英名 Long-toed Stint はヒバリシギの指の長さからつけられています。



アカエリヒレアシシギ P. lobatus

2019-08-28 00:48:57 | シギ・チドリ

8月18日、野付湾内に広がる干潟湿地の水路にこれまで見たことのなかったアカエリヒレア

シシギの群れがいるのに気づきました。分散していて数は数えることができませんでしたが、

500羽以上はいたのではないでしょうか。

おばんです。小太郎でごじゃります。

           ◆  群れで飛来 アカエリヒレアシシギ  ◆

二日前、低気圧が通過した時に入ってきたようです。普段は洋上を通過して行くので、

立ち寄ることはめったにありません。悪天候で一時的に退避してきた可能性が大です。

彼らが好きなプランクトンが多い羅臼沖の根室海峡に集まっていた群れの一部ではないで

しょうか。

満潮時に海水が入り込んでくる湿地の奥の方でトウネンの群れと一緒に食べ物を捕って

いました。警戒心が強いかと思い、慎重に水辺に近寄ってみると意外や少しも逃げる

様子を見せません。

腰を据えて観察することに。水に浮かび、ぐるぐる回りながら水をかき混ぜています。

水中の中にいる生き物を底の方から浮かび上がらせているのです。なにがいるのが気に

なり調べていると小さなボウフラがいます。相当な数です。

そういえば去年、場所は違いますが、ユスリカが水辺の植物に大量に付いていたことを

思い出しました。今はちょうどユスリカの大発生するときです。

水から上がり草が茂っているところに近寄り、上の方をしきりに突いているアカエリが

いました。羽化し草に集まっているユスリカを食べているのです。

アカエリたちは運よくユスリカの羽化に出会ってしまったのです。ボウフラと羽化した

ユスリカがたくさんいます。

一心不乱に食べ続けます。とにかく止まりません。近くに来る個体は威嚇して追い払い

ます。アカエリだけでなくトウネンやヒバリシギまでも威嚇します。

まだ首の赤茶色は薄くなっていますが、夏羽の面影が残っている個体がほとんどです。

1週間後に行ってみました。まだ残っていました。ユスリカの発生が続き、飛び立たなく

ても十分食べ物があるからです。きっとなくなればいなくなります。

さて来週はいるでしょうか。


俣落川林道

2019-08-26 12:34:40 | 道東の地理・地形

西別岳に登りに行きましたが、雨と強風が強く登攀を断念。そのまま帰るのも癪なので

いつもは素通りする俣落川の源流を目指すことにしました。

おばんです。小太郎でごじゃります。

              ◆  俣落川林道  ◆

俣落川は標津岳と武佐岳の間に位置する俣落岳に発します。雪解け水や雨を集めた小川

から発生する川で、なだらかな丘陵地を流れ下り俣落で標津川と合流します。

明治時代までは鬱蒼たる原生の森林が広がる地域でした。大木を切り出し、林業が

盛んでした。そのあと、牧草地になり、植林されてきました。

川は全く護岸工事は行われず、多くの釣り人が入り、ヤマメやオショロコマをたくさん

釣っています。魚が多いのはエゾシマフクロウが営巣し繁殖していることから推察で

きます。

林道は砂利が敷き詰められ、道に植物が生えていないことからよく整備されています。

もっと原始的な森を想像していましたが、エゾアカマツの植林地が多く、昔の面影は

ほとんど感じません。

林道の傾斜はなだらかで人や馬車が入りやすく、手入れがよくできる丘陵地だった

のでしょう。それでも自然度は高く、林道は木々のトンネル状態。林道に沿って流れる

俣落川周辺の植物は昔の森を思わせる生態に戻りつつあります。

ヒグマが多いらしく、川周辺のフキや他の植物が喰い荒らされた食痕が見られます。

上流には今ではほとんど見られないバッコヤナギの大木が残っていました。

瀬のところでは上流から流されてきた大きな石がごろごろ。過と言って毎年荒れている

雰囲気はありません。おそらく伐採した後、保水ができなくなり鉄砲水が出たことが

あったのでしょう。

それにしても長い林道でした。1時間走っても俣落岳のふもとにたどり着きませんでした。

 


蝶を引き寄せるエゾオグルマ

2019-08-22 23:41:27 | タンチョウのいる風景

野付半島は砂嘴の半島。知床半島の海岸段丘や山から流れ出した土砂がオホーツク海から

根室海峡に流れてくる海流により運ばれ、3000年以上の時間をかけ蓄積してできたものです。

おばんです。小太郎でごじゃります。

 

                 ヒョウモンの仲間

           ◆  蝶を引き寄せるエゾオグルマ  ◆

標津町の茶志骨の丘陵を起点に運ばれてきた土砂が沖合に堆積しながら成長してきた半島。

今では起点から半島の先部まで26キロ以上はあります。しかも毎年、数十メートルは

尾岱沼に向け伸びているのです。

                  モンキチョウ 

ここ10年、エルニーニョ現象による気候変化で根室沖で爆弾低気圧が急速に発達し、

流されてきた土砂が強風で押し上げられます。砂が半島を乗り越え、湾内に入ってきます。

おかげで毎年、先端部は砂が乗り上げ、せっかく生えて定着しようとする植物を埋めて

しまいます。そのため、根を地下にしっかり伸ばし、上部が埋まっても生きながらえる

植物だけが何とか定着し、翌年新芽を出してきます。

その代表格がエゾオグルマです。観察していると積砂が30㎝以上になっても芽を出すのが

エゾオグルマです。タフなハマニンニクよりも早く出てきます。塩をたっぷり含んだ砂浜で

生き延びる力を発揮する第一人者と言っても過言ではありません。

砂だけの場所よりも流木のそばで成長してくるエゾオグルマの方が葉が肉厚で緑、緑して

成長がいいのです。がっちりとして草丈が高く伸びます。

                 ヒメアカタテハ

風が強い海岸ですが、それにも負けず太くたくましい茎を育みます。その先に散房花序

なった黄色の頭花をたくさん咲かせます。一つ一つの花はヒマワリに似ています。

たくましいという言葉がぴったり当てはまる花です。美味しい蜜が出るのか、たくさんの

蝶や蜂を引き寄せます。太陽が当たり、風が穏やかだとヒョウモンやヒメアカタテハ、

モンキチョウ、マルハナバチやらがひっきりなしで集まってきます。

くるくる巻きの蜜吸い口器伸ばし、花蜜のあるところを探しながら動かしています。

触角を動かし、周りを探っています。

                  モンキチョウ

見ているだけで時間が過ぎるほど彼らの口器の動かし方は面白い。先をちょんちょんと

動かし、見つけるとすーっと差し込みます。器用なんです。そこだけが生きているように

見えるのです。

ぐいぐい引き込まれます。