周平の『コトノハノハコ』

作詞家・周平の作詞作品や歌詞提供作品の告知、オリジナル曲、小説、制作日誌などを公開しております☆

『ブサメンの音楽隊』~第6話~(シューピー散文クッキング第2弾)

2022年07月27日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第2弾『ブサメンの音楽隊』の第6話です!

さて、今回の材料は…

「ピンポン」…大さじ4杯(卓球なんてどこで使う!?)
「降りる」…小さじ2杯
「激震」…小さじ5杯
「誇らしい」…大さじ2杯
「図案」…大さじ6杯

おそらくこの辺が折り返し地点となるであろう第6話スタート!!

『ブサメンの音楽隊』~第6話~

翌日、「ブサメンの音楽隊」初のオリジナル曲の歌詞を清書した紙をカバンに入れ、僕は登校した。
イヌ、ニワトリ、ネコの3人に早く歌詞を見てもらいたかった。
この時の僕にはまだ、今日このあと「ブサメンの音楽隊」に起こる”激震”など予測できるわけもなかった。

僕らは昼休みにいつものように校舎の屋上に集まった。
そして歌詞を書いた紙を順番に3人に見せた。

イヌとニワトリは「面白い歌詞じゃん!」とか「タイトルも良いね!」とか良い評価をしてくれて僕は”誇らし”かった。
しかし、この歌詞を歌う事になるヴォーカルのネコだけは反応が違った。

「悪いけど僕はヴォーカルを"降りる"よ。」

「えっ!? なんでよ?」僕は訊いた。

「お前がヴォーカルやってくれなきゃ俺たち解散するしかないぜ?」イヌも続けて言った。

「決して悪い歌詞じゃないし、僕らの最初の曲にふさわしい内容とタイトルだと思う。でもこの内容なら僕は歌いたくない。」

「まぁ、タイトルがタイトルだし、歌詞の中にもモテたいとか入ってるしな。ネコは俺らと違ってブサメンでもないし、モテないわけでもないから気持ちは分かるよ。」さすがのイヌも納得するしかなかった。

「ねぇ、ロバ。君がキーボード弾きながらヴォーカルをやってみたらどう? ヒゲダンみたいでカッコイイじゃん! そしたら僕はドラムをやるから。」

「えっ!? でも僕、めちゃくちゃ歌下手だよ?」

「今日から歌もキーボードも大特訓だね!」ニワトリが言いやがった。

こうしてこの日から僕は家に帰るとキーボードの練習に加えて、ネコのアドバイスを受けながら歌の特訓も始めた。
近所からクレームや嫌がらせ("ピンポン"ダッシュなど)が増えたのは言うまでも無い。

でもとりあえず一番最悪な解散とかは回避できたし、なんとなく「ブサメンの音楽隊」の方向性と言うか”図案”みたいなものがハッキリしたような感じもして嬉しかった。

僕(ロバ)が恐れ多くもキーボード&ヴォーカル、イヌがベース、ニワトリがトランペット、ネコがドラム。
そんな僕たち「ブサメンの音楽隊」の記念すべき最初のオリジナル曲のタイトルは『ブサメンの音楽隊による行進曲』だ。

果たしてこの曲を披露できるチャンスは訪れるのだろうか。
そして、披露できるレベルまでになれるのだろうか。

《第7話へ続く》

『ブサメンの音楽隊』~第5話~(シューピー散文クッキング第2弾)

2022年07月10日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第2弾『ブサメンの音楽隊』の第5話です!

さて、今回の材料は…

「振り絞る」…小さじ3杯
「蹴落とす」…大さじ2杯
「ふざける」…小さじ2杯
「仮死」…大さじ7杯
「序幕」…大さじ4杯

毎回真剣!、”ふざける”つもりなんて一切ない第5話スタート!!

『ブサメンの音楽隊』~第5話~

「どうしても僕も加わらなきゃダメかな?」
次期生徒会長最有力候補のネコが僕ら3人に訊いてきた。

イヌは答えた。
「たしかに生徒会の選挙控えてて大変だと思うけど、バンドやって、さらにお前の人気を高めて他の生徒会長候補を”蹴落とす”チャンスだと思わない?」

「まぁ、ネコばかり目立って僕たちが全然モテなかったら困るけどね。」
ニワトリも笑いながら言った。

「そうだ! 選挙ってたしか体育館で全校生徒の前で5分間演説するよね? そこでうちらでオリジナル曲披露するのはどうよ?」僕は言った。

「いや、”ふざける”なよ! そんな事して何のアピールになるんだよ!」珍しくネコが声を荒げた。

「ごめん、たしかにそうだよな。もう文化祭は終わっちゃったし、なんか披露できるチャンス無いかな?」

「披露する場がないとモチベーションも上がらないよなぁ。」イヌがぼやいた。

そこからしばらく4人とも黙ってしまった。

すると仕方ないかのようにネコが話し始めた。

「分かった! じゃあとりあえず僕が曲を1曲作る! だから歌詞はロバが書いてくれ。披露する場はまた考えよう。」

「僕に歌詞なんか書けるかな? 歌詞書き上げる前に”仮死"状態になっちゃうよ。」
僕が言うと、またしばらく4人とも黙ってしまった。
ただでさえ極寒な真冬の校舎の屋上が、さらに冷えてしまった。

兎にも角にも、こうして「ブサメンの音楽隊」の活動は”序幕”を迎えた。

1週間後、ネコから完成したオリジナル曲のオケをもらった僕は、少ない脳みそを”振り絞る”ように歌詞を書き始めた。

メロディに歌詞を当てはめていくという作業は思った以上に大変だったが、思った以上に面白くもあった。
メロディの音符の数と、歌詞の文字数がただ合っていれば良いという単純なものではなかった。
この母音だと歌いづらいとか、この文字だとキレが無いとか、奥が深いなぁと実感させられた。

そして、数日後「ブサメンの音楽隊」初のオリジナル曲の”仮死”、いや、歌詞が完成した。

《第6話へ続く》