福祉作業所など所謂<福祉的労働>を正当な労働として労基法・労組法の適用を!の声が高まっています
労働相談より
件名 福祉作業所の障害者の働く「レストラン」での遅刻・早退・欠勤の罰金天引きについて
○○さんへ
ご質問の「レストラン」が障害者の授産施設の「作業所」の一部門であるとのことですが、福祉作業所の場合、あくまで、「訓練・教育」のための<利用者>とされ、労働者としては位置づけられていません。
しかし、近年、これら福祉作業所などの所謂<福祉的労働>を正当な労働として労基法・労組法の適用。社会保険・労災保険の加入。安全衛生法、労働契約法・・・の適用をすべきであるとする声が高まっています。
国際労働機関(ILO)も、最近、日本政府に対して「授産施設で障害者が行う作業を労働法の範囲内に収めることは極めて重要と思われる」と表明しています。
福祉新聞2009 年6 月15 日も<障害者雇用 授産施設にも労働法適用を>の特集を組んでいます。http://www.fukushishimbun.co.jp/news/090615/01.html
http://www.fukushishimbun.co.jp/news/index.html
全国福祉保育労働組合の<日本の障害雇用政策に関するILO159号条約違反に関する、国際労働機関規約24条に基づく申し立て書>
http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/0710/ILO.pdf
残念ながら、今の日本においては<福祉的労働>にはいまだ労働法は適用されていませんが、もうひとつの見方から、切り込める方法もあります。
それは、表向き<福祉的労働>であっても、実際・実態は<労働>である「名ばかり福祉的労働」の場合です。
福祉モデル工場であった大久保製壜所で、100名以上の身体障害者・知的障害者が働き、最低賃金の除外の適用を労基署も認め最低賃金法以下の低賃金で働いていました。しかし、大久保製壜所の労働現場の実態は、3組3交替の24時間労働、健常者も逃げだすほどの過酷な労働でした。1975年に36名の障害者労働者が中心となり、キリスト教会に籠城して過酷な労働実態の暴露と差別撤廃を訴え、労働組合を結成しました。その結果、労基署は全員の適用除外を撤廃し、全員に法律の適用を認めました。
このように実際・実態として<労働>である場合、当然労働法の適用は認めないといけません。ご質問の「レストラン」の労働実態が実際にどうなのかが問われると考えます。
厚生労働省が障害者作業所や授産施設で働く障害者について、労働法規の適用基準を示した1951年の通達では、〈1〉勤怠管理をしない〈2〉工賃に差を付けない〈3〉作業収入は全額、障害者に還元する――などの条件を満たせば訓練とみなされ、労働法規の適用が除外されるとされていました。また、最近は、新基準として
〈1〉制裁や強制の要素がない
〈2〉訓練として事前に計画されている
〈3〉障害者や保護者が同意している
――などを条件に、勤怠管理をしても労働法規を適用せず、「訓練生」として認めることにしています。労働日数(欠勤日)等で結果として支給額に差がつく作業所も多いですが、遅刻・早退・欠勤に対して罰金を取るというやり方は<制裁>となり許されないと考えます。
また、2007年2月には、神戸東労働基準監督署は社会福祉法人「神戸育成会」の運営する3作業所に対して、作業実態が訓練の範囲を超えた「労働」にあたると判断し最低賃金法に違反している等として指導しました。
作業実態が訓練の範囲を超えた「労働」にあたると判断された場合、一般の雇用関係のある企業とまったく同じように、当然、労働時間、休日・休憩、賃金等の労働基準法や安全衛生法、労組法等の労働法を必ず順守しなければいけません。勿論雇用保険などの社会保険、労災保険への加入は義務づけられています。
一方で一般の企業では「遅刻・早退・欠勤」をノーワークノーペイの原則でその労働時間相当分の賃金をカットしたり、「無断欠勤」等を減額など一定の制裁規定を課すことを就業規則で規定しているところが一般的です。ただし制裁規定の場合は、労働基準法の第91条において「減給の定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない」とされていますから注意が必要です。
また、所謂「罰金」については、労働基準法第16条「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定とする契約をしてはならない」と禁止しています。
どうか参考にしてください。