全国一般東部労組機関紙コラム <二言三言>より
http://www.toburoso.org/hutakoto.htm#1006
NHK スペシャル『タクシードライバーは眠れない』
数年前、 NHK スペシャルで『タクシードライバーは眠れない~規制緩和・過酷な競争』というドキュメントが放映された。
当時見た方も多いのではないだろうか。
芸術祭賞を受賞した作品で、小泉元首相の構造改革による規制緩和のもと、給料の激減、タクシー料金値下げを長時間勤務でカバーするため営業車の違法自宅持ち帰りなどで苦悩する労働者を見事に描いていた。
その中で今でも忘れられない場面がある。
そ れはタクシー会社11社を所有し、規制緩和で大阪タクシー戦争をしかけた大阪タクシー協会の薬師寺薫・最高顧問(関西中央グループ代表)がインタビューに 答えて、自分のベンツ(普通のエンブレムマークのベンツでなく、 1920 年代のアルカポネ時代のマイバッハ)を誇示するところである。
記者の「いくらですか」の質問に薬師寺社長は4本の指を示し、記者は 4000 万円ですかと息をのむ。
忘れられないのはその時言った薬師寺社長の言葉である。内装を入れると億を軽く超えるといわれるベンツを購入しても、彼は「従業員が反乱を起こさないから、認めてくれていると思う」と言い放つのである。
規制緩和でタクシー労働者がむちゃくちゃな長時間、無権利、低賃金労働を強いられ、一方で経営者が大もうけをしていても、従業員が「反乱」を起こさないかぎり認めてくれていると、資本家は考えるのである。
だから彼らに対する私たちの回答は「お願い」ではなく、闘争でしかありえない。職場における労働組合結成とその闘いでしかあり得ない。
「 " わが亡き後に洪水は来たれ! " これがすべての資本家および資本家国家のスローガンである。
それゆえ、資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない」のである。
したがって、労働法学者の道幸道也さんがよく言う「労働者にとって最大のセーフティネットは労働組合」とは至言だと思う。(石)
全国一般東京東部労組機関紙『東部労働者』2010年6月号
コラム<二言三言>
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