悲しみのアンジー…

三日間の筈だった人々の緊急避難は
その後も解かれる事はなく
その事が
そこへ置き去りにされた動物達への
悲劇ともなっていった…
その命を助けようとした人々の中に
ひとつの話が残る…

福井県から自家用車で福島を訪れた
老夫婦がいたという…
被災地で飼い主を捜しながら彷徨う
動物達を可哀想に思った老夫婦は
避難区域の中で一匹の犬を保護して
それを車に乗せ
自分の家へと連れて帰った…
「助けてやりたい…」
それが福島を訪れた理由でもあった…

新しく名前をつけ飼われ始めた犬は
老夫婦になかなか懐く事は無く
鳴き声すらあげようともしなかった…
毎日餌をあげて可愛がるが
ひと月経とうともふた月経とうとも
心を開いてくれる事なく
怯えの表情だけが張り付いたままに
月日だけが過ぎていく…
しかし
老夫婦の気持が伝わったのだろうか
犬との心の距離は少しずつ狭まり
やがてその犬は
僅かながらに声をあげるようになる…
老夫婦の顔にも喜びが浮かんだ…

半年ぐらい経った頃だろうか
飼主を失いあれだけ悲しんでた犬が
随分と懐くようになり
老夫婦にしても
すっかりと情が移ってしまっていた…

そんなある日、元の飼主が見つかった…

　　　　　　　　　　　　　　つづく



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