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日本の五重塔の最高傑作 瑠璃光寺|美の五色 ~山口 大内文化の至宝

2018年12月08日 | お寺・神社・特別公開

山口市の瑠璃光寺(るりこうじ)は、美しい国宝の五重塔でよく知られています。池の奥にある五重塔が、借景の裏山の緑の中に浮かんでいるように見える姿は何といっても絶品です。

  • 戦国時代の京都を上回る繁栄を見せた山口にのこされた大内文化の最高傑作
  • 日本のお寺の塔の景観としても最高傑作
  • 檜皮葺きのシックな屋根が借景の木々の緑と実によく調和している


京都・奈良を上回る美しい塔の景観は、山口市を代表する観光スポットになっており、ほぼすべての人が五重塔をバックに記念写真を撮っていきます。夜間には通年で五重塔がライトアップされており、幻想的な光景を求めて訪れる人が少なくありません。境内は、紅葉はもちろん梅や桜も楽しむことができます。

季節や時間を問わず様々な表情を見せるよう工夫された五重塔の景観は、とても完成されています。この景観が記憶に残らない人はまずいません。



五重塔は、室町時代半ばに大内盛見(おおうちもりはる)が兄・義弘(よしひろ)の菩提を弔うために建立はじめ、1442(嘉吉2)年に完成しました。完成当時は瑠璃光寺ではなく、義弘が建立した香積寺(こうしゃくじ)でした。

大内氏は室町幕府の中でも有数の守護大名で、本拠地とした山口に戦乱を避けて京都から逃れてきた文化人を多く受け入れます。山口は文化面では京都に代わる都のような役割を果たしていました。

香積寺は、江戸時代初めに毛利輝元が江戸幕府の命で山口から本拠地を移した萩に移転し、洞春寺(どうしゅんじ)となります。この際、五重塔には最大の危機がありました。輝元は五重塔を解体し、萩の城下町建設の用材に使おうとしたのです。しかし山口の町民が奉行所に嘆願し、そのまま残されることになります。山口の人々にとっては建立以来、最大の宝物であり続けたのです。

瑠璃光寺は、1471(文明3)年に山口市の別の地で、大内氏の重臣・陶弘房(すえひろふさ)の菩提寺として建立されました。江戸時代には中国地方で有力な曹洞宗寺院となっており、1690(元禄3)年に現在地に移転してきました。


洞春寺

境内には幕末の長州藩主・毛利敬親(たかちか)以下、3代の当主の墓があります。敬親は1863(文久3)年に幕府に無断で本拠地を萩から山口に移しており、瑠璃光寺を菩提寺としました。

瑠璃光寺の南に隣接する洞春寺(どうしゅんじ)は、長州藩の始祖・毛利元就の菩提寺です。1871(明治4)年に萩から移されました。この洞春寺は、五重塔完成時の寺・香積寺が源流です。香積寺は毛利氏の移動に伴い、再び旧地に戻ってきたことになります。



瑠璃光寺の境内は、香山公園(こうざんこうえん)と呼ばれており、出入りは自由にできます。公園の各所から五重塔を眺めると、塔の借景の変化に伴って実に豊かな表情を見せてくれます。上層に行くほど屋根が小さくなるスマートなボディラインと、屋根の四隅が上に反る禅宗様であることも、塔の優美さを演出しています。

寺の塔では珍しく屋根が檜皮葺(ひわだぶき)です。檜皮葺きは中世の建築では最高格式の屋根の葺き方です。寺の塔では他に室生寺・長谷寺・厳島神社の3例しかありません。室生寺・長谷寺も、借景の木々の緑に茶色の屋根が実に上品に調和しています。


枕流亭

境内には瑠璃光寺資料館があり、瑠璃光寺五重塔の骨組み模型や、全国の主な五重塔55基の模型など、徹底的に五重塔にこだわった展示を行っています。

枕流亭(ちんりゅうてい)は、幕末に訪れた薩摩藩の小松帯刀・西郷隆盛らと長州藩士が、薩長同盟の密議を行った建物です。建物としてもとても趣があります。



雪舟は、山口滞在時にアトリエ・雲谷庵を瑠璃光寺の近くに構えていました。雲谷庵から見える五重塔の景色をとても愛していたそうです。境内には雪舟の銅像もあります。600年近くに渡って美しい姿を見せ続けてくれる五重塔に感謝します。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



取り上げた23の木造建築の選択が見事

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瑠璃光寺
【山口県観光情報サイト おいでませ山口へ】

※境内の拝観・見学に条件はありません。いつでも無料で拝観・見学できます。
※公開されていない建物があります。

瑠璃光寺 史料館
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~17:00



◆おすすめ交通機関◆

JR新山口駅下車、北口(在来線口)から防長バス「県庁前」下車、徒歩10分
JR山口駅から車で5分
JR新山口駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:45分
新山口駅北口防長バスのりば→防長バス→県庁前

新山口駅まで山陽新幹線で 東京駅から4時間30分、新大阪駅から2時間

※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることをおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。


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