清凉寺(せいりょうじ)で今も輝いている釈迦如来の”原本”と光源氏的イケメン阿弥陀如来。毎年4~5月の二か月間、二人の"超”美仏国宝が定期公開されます。
- 清凉寺式釈迦如来の本家本元、ひだ文様と木の質感が宇宙空間のように輝いている
- 阿弥陀如来のお顔のスマートさと視線の表現は、まさに妖艶な美男子
- コミカルで人気の大念仏狂言も4月に定期公演が行われる
桜が終わると、まばゆいばかりの新緑が出迎えてくれます。春の明るく暖かい陽光の中で、お二人の美仏にお会いすると、とても元気になれます。
本堂裏の廊下から見る庭の新緑、まばゆい。
清凉寺は、平安時代初期に阿弥陀如来が、平安時代半ばに釈迦如来が安置され、嵯峨釈迦堂として親しまれるようになります。御多分に漏れず幾度も伽藍焼失の憂き目にあっており、現在の建物が再建されたのは、元禄時代以降です。頻発した火災の割に、この寺には驚きの仏教美術が多数残されています。火災の都度、大切に守られてきた賜です。
清凉寺の伽藍は自由に無料で参拝することができます。本堂内陣の拝観のみ、定期公開時以外でも有料です。嵯峨嵐山エリアの中でも目立って境内はゆったりしており、桜・紅葉はもちろん、様々な植物から季節を感じることができます。
本堂には江戸時代初めに流行した豪華さがあり、堂々としています。堂宇の大きさもかなりのものです。内陣は広く、様々な文化財が展示されています。現在の本堂を寄進した将軍・綱吉の母・桂昌院にゆかりの品や、江戸時代に盛んに行われた本尊の出開帳の際に使われた輿(こし)を鑑賞することができます。かなり使い込まれたことがわかる輿からは、出開帳を見に来た人々からの歓声が聞こえてくるようです。
本堂の裏から廊下が大方丈まで伸びており、緑がとても美しい庭を鑑賞することができます。庭の中に小さいお堂・弁天堂が行儀よくたたずんでいます。正面にとても小さい唐破風の屋根があり、実に”カワイく”見えます。大方丈ではいつでも写経体験ができます。部屋からの緑の庭の眺めは、禅寺のような趣さえ感じます。
本堂
本尊は当然ですが、本堂のセンターの厨子の中にいらっしゃいます。博物館の展覧会とは異なり、厨子の中でもあり、やや暗いのが難点ですが、それでも木肌の美しさと日本の仏像にはない造形を確認することができます。
一般的な仏像のイメージと比べ、不思議な印象を受けます。造りはとてもシンプルに見えるのですが、かえってオーラを放っているように感じられます。胴体や頭は直立不動で、全身に衣がまとわれています。ひだは幾何学的な同心円模様で、とても神秘的です。面長で瞳は目立って大きく、ヘアスタイルも長髪を巻き上げたように見えます。
いずれも日本の仏像には見られない特徴で、この個性が釈迦の生き写しとして中世に神格化されていったと思われます。材質は中国のサクラで、磨かれたように輝いて見えます。同心円状のひだ模様が宇宙空間のように見えるのはこの輝きのためでしょう。
宝物館
清凉寺に伝わるほとんどの寺宝は宝物館にあります。宝物館は二階建て、1F入口横に国宝の阿弥陀三尊がいらっしゃいます。
光源氏のモデルとされる平安時代初期の貴族・源融(みなもとのとおる)の生き写しと言われる阿弥陀如来は、この時代に流行した密教的な神秘性はありません。頬が引き締まってとてもスマートなお顔立ちで、女性なら見つめられるとキュンとしそうになるでしょう。より人間の顔に近い造形をしており、生き写しとする伝承に違和感はありません。
1Fは仏像が並んでいます。重文・兜跋(とばつ)毘沙門天像は、有名な東寺の像を摸刻したものです。西域の香りがしっかりと漂ってきます。いずれも重文の文殊/普賢両菩薩、十大弟子像、四天王も見応えがあります。実にたくさんの美仏がのこされています。
2Fでは人間の内臓の模型のようなものが目に入ります。一見毒々しく見えますが、国宝です。1953(昭和28)年に本尊・釈迦如来の胎内から発見されたもので、シルク製の世界最古の内臓器官の模型です。現代医学の観点からもきわめて正確であり、1,000年前の中国の医学知識の高さを示しています。
X線撮影により、釈迦如来の頭には脳、口には歯を思わせる鏡が確認され、花と耳の穴は内部まで続いています。まさに像全体が人体模型のようになっています。
原本は東京/京都の国立博物館に寄託されている、国宝の十六羅漢図の模写も必見です。日本に現存する唯一の中国・北宋時代の作品で、中世に多く描かれた十六羅漢図の手本になったと考えられています。北宋時代の洗練されたタッチで描かれており、彩色も神秘的です。
本堂
季節が良いこともあり、とてもワクワクしながら美仏にお会いすることができます。霊宝館の国宝・重文も驚きの逸品ばかりです。この定期公開は秋の10~11月にも行われ、秋色の境内をあわせて楽しむことができます
嵯峨大念仏狂言も4月と10月に定期公演が行われます。ホーム劇場である清凉寺の狂言堂で行われる講演は無料です。壬生寺の大念仏狂言ほど混雑しません。壬生とは演目が異なりますが、予定が合えばぜひおすすめします。
【嵯峨大念仏狂言】公式サイト
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
知られざる美仏の宝庫・南山城をカバーしているところが心憎い
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清凉寺(嵯峨釈迦堂)
本尊開扉、霊宝館特別公開
【寺による参拝案内】
会期:毎年4/1~5/31、10/1~11/30
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~17:00
※この寺は観光目的で常時公開されています。
※国宝の本尊・釈迦如来は、毎月8日11:00~16:00(霊宝館特別公開期間は~17:00)にも開扉されます。
◆おすすめ交通機関◆
JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車、北口から徒歩15分
京福電鉄・嵐山線(嵐電)「嵐山」駅下車、徒歩15分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→JR嵯峨野線→嵯峨嵐山駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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