実家の庭を、なんとか残す事はできないだろうか。
僕は畑を作ることはやらないけど、いろんな虫が集まる場所にしたいという密かな思いはある。
でもそれがたとえ叶ったとしても、僕が生きている間だけだろう。
虫が集まる庭を望んでるのは家族の中で僕だけだ。
近所から苦情が来るかもしれないしな。
だいたいそんなに虫を集めたければ、森に行けばいいだけだ。
そういえば、虫が集まるということは、もしかして鳥も来るんじゃないだろうか。
なかなかいいじゃないか。
細い道を作って、そこを歩きながら観察するんだよ。
植木鉢をひっくり返してあちこちに置いてさ。
ワラジムシばっかり集まってきそうだけど、コオロギやスズムシも来てくれたら、夏の終わりが楽しみだ。
昔はキリギリスも普通にいたのにな。
どこに行っちゃったんだろうな。
近所に田んぼがあった頃は、カエルの大合唱も聴けたんだけどな。
あっという間に田んぼは消えて。
足を滑らせて落ちた用水路も消えて。
木登りをした雑木林も消えてさ。
ギンヤンマを見かけた池も消えた。
実家の小さな庭だけが残った。