むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㊲

2019-08-02 09:39:03 | 小説
 昭和四年八月未明。長春のしいたけ工場で、経営者が菌床をつける朽ち木で、殴られて死ぬという事件が起きた。死体は朝に奥さんが発見したという。公安(中国の警察)は昨日「読み書きが、ままならない人間が幽体離脱する現象について」という論文を書いた。死体を見てなにが関係しているか検証する。重要なことはことばのコミュニケーションを重要視して相手に、意味がつたわらないときに相手と一体化することだ。その際に、国語辞典に書いてない合成語を使用して、思いをつたえようと、していると考えられる。正体不明の合成語を使って自ぶんに、理不尽な権利があるように主張して迷惑千万だ。昨日は九四歳の公安OBが、民族のなにかをつたえようと憑依してきて、「書こうかな」と思ったがやめた。OBであると限らないし、今日の事件と関係なさそうだ。公安が奥さんに事情を聞くと、「主人は居酒屋も経営しててそこの女性経営者と同居してたけど」と言う。死んだ経営者が五四歳で居酒屋の女性経営者は三四歳だ。公安が女性経営者から事情を聞くと、「私は、あの人と出会う前は古銭商で働いてました。あの人は『食品で一番になる方法は金貨だ』と言って、同じ年号の金貨を一〇〇枚ぐらい集めて、世界じゅうにしいたけを、売る方法を考えてたわ」と言う。公安は居酒屋がなんのために、あるのか考えながら女性経営者と奥さんを張り込む。死体は後ろから数回殴られていて女性の力でも可能だ。工場は佃煮や乾燥しいたけを全国に出荷して繁盛している。本当に世界一を、目標にしているようだ。逆に居酒屋は閑古鳥が鳴いて、あまった食材を兄弟が店にきて始末していた。奥さんの話だと、事件当時経営者は午後六時に工場を出て居酒屋へ行って、奥さんは午後九時に工場を閉めたという。居酒屋の経営者に事件当時を聞くと、「うちの店にきてからどこかへ行った」と答える。時間を聞くと、「覚えてないわ」と言う。小学生の息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)は「僕の金貨だ」としかしゃべらない。数日後に、居酒屋の経営者に新しい男ができた。男はたけのこ工場の経営者で出会って間もないみたいだ。公安の脳裏に若々しい男が浮かぶ。奥さんは山菜の卸売りをやっている若い男と交際している。公安が奥さんに事情を聞くと、「彼が『自ぶんの工場がほしい』と言うから酔って工場に戻ってきた主人を殺したわ」と白状した。公安は奥さんを逮捕する。奥さんは「金貨は日本の恵まれない子供たちに送ってください」と言う。