むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㊽

2019-08-13 10:31:08 | 小説
 ゲームにはそれぞれ攻略法がある。タイトルは自転車屋。

 昭和五年一〇月未明。香港で自転車屋の店主が、拳銃で撃たれて死ぬという事件が起きる。公安は死体を見て脳裏に麻雀卓がよぎった。公安(中国の警察)が奥さんに「店主は麻雀をやってたか」と聞いたら、「新新さんの家でやってたわ」と言う。公安はそこへ行く。大きな屋敷の部屋に麻雀卓が並んでいた。公安が新新に事情を聞くと、「うちは会員制だから、この場所は秘密なんです。あなたも半チャンだけやりませんか」と言う。公安は「半チャンだけだ」と言って空いている麻雀卓の椅子に座った。新新がひと声かけると三人集まって四人で麻雀を始める。公安は最後の親番だったが、配パイがよくて三回続けてあがった。最後の局も配パイに白と中が三枚ずつで、発が二枚ある。公安が大三元をテンパイして、当たりパイをつかんだ男が「あの人はいつも勝ってましたね」と言いながら、安全パイを捨てた。公安の脳裏に落ち葉が積もった森を、歩く男女が浮かんだ。当たりパイは想像で捨てると、「ロン」と言う声が聞こえるらしい。公安がツモあがって点数計算をすると、新新が「あの人は女がいるんですよ。これは食事代」と言いながら、住所を書いたメモ紙と、紙幣の束を公安に渡そうとする。公安はメモ紙だけ受けとってそこを出た。女は浮気相手みたいだ。公安はその家に行った。玄関に人力車がある。公安は引き戸を開けて入って、なかの女に「ご主人は人力車を動かしてたんですね」と声をかけた。女が「兄がなにか」と言う。そのときトイレで「がたん」という音がした。公安が家に入ってトイレのドアを開けると、窓わくが外れていて、走り去る男の姿が見える。公安が女に立ち寄りそうな場所を聞くと、「人力車の組合ならかくまってくれるかも」と言う。女は新新の家で、パートで働いていて自転車屋の店主と関係ができたようだ。自転車屋は勝った金で人力車のオーナーになっていたという。公安は動機が不じゅうぶんだと思いながら人力車の組合へ行く。大きな長屋風の、建物の前に人力車が並んでいた。公安が建物に入ると入り口の、横のテーブルに拳銃を置いて、ソファーに犯人が座っている。人力車の運転者は武道家が多いため派手なアクションを、どっちが考えるか打診しながら「どうして殺したんだ」と聞いたら、犯人は「下り坂で『馬より速く走れ』と言ったから殺した」と言う。公安は犯人を逮捕する。拳銃は「イギリス人の客から買った物」だ。男はそら耳で聞き違えたらしい。