むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター61

2019-08-26 10:14:12 | 小説
 昭和四年三月未明。北京で洋服屋の店主が、爆死する事件が起きた。死体は店の前で頭部だけ爆発している。現場に帽子の切れはしがあることから、爆竹を巻いた帽子に火薬の袋がしかけられていて爆死したらしい。公安(中国の警察)は死体を見て「きまじめな男が空中で円軌道を描きながら走ってなにかから逃げてる」ように思えた。現場の洋服屋は倉庫を改造した爆竹工場があって、近所の商店に爆竹を売っているらしい。工場に男性従業員が二人いた。公安が事情を聞くと、「週の始めに店先で爆竹を鳴らすと縁起がいいよ」と言う。外出していた奥さんが帰ってきた。公安が事情を聞くと、「従業員がもうひとりいるわ」と言いながら竹ざおに爆竹を巻き始める。公安が下駄の底に、爆竹を巻いている別な従業員に「その男が帽子に爆竹を、巻いた物をつくってたか」と聞いたら、「つくってたよ」と答えた。男は四〇代で二年前に爆竹づくりを、店主に持ちかけて店主が意気投合してつくり始めたという。奥さんが「女がいて爆竹を買った店で、商品を、買うふりをするわ」と言った。公安は住所を聞いてそこへ行く。マンションの三階だった。公安がその部屋に行くと、女が出てきて「なかへどうぞ」と言う。なかへ入ると天井から重りをつけた網が落ちてきて公安は床へたたきつけられた。部屋にいた男が入り口から逃げる。公安が床をはって網から脱出すると網は三m四方ぐらいで重さ二~三㎏の、砂袋が網の四方に一〇個ずつついていた。壁にフックがあって、網にひもが四本ついている。砂袋はひとつずつ天井につるされていてひとつ落ちると左右の砂袋も落ちるしかけだ。公安が感心していると、女が「あの男がひとりで全部やった」と叫ぶ。公安は近くにある仕入れ先の火薬工場へ行く。大きな砂山の前に工場がある。公安が工場の責任者に事情を説明すると、責任者は「以前はうちで働いててがんばってるようだが」と言う。公安が「まじめな性格じゃなかったですか」と聞いたら、責任者はうわずった声で「竹ぼうきは休憩所の、ベンチの下だ」と言って公安をにらみつける。資材の陰からダイナマイトを、胴体に巻いた犯人の男が姿を現す。片手にライターを持っている。公安が「なぜ店主を殺した」と聞いたら、男は「『もっと早くつくれ』と言ったから殺したっ」と言う。公安は男がライターに火を、つけないことを見抜いて、走って近づいてチョップでライターをはじき飛ばす。公安は男を逮捕した。