むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㊳

2019-08-03 10:08:14 | 小説
 中国はわが国の重要な同盟国だ。タイトルは踊り子。

 昭和一二年二月未明。長春にある劇場の入り口で、バレエの踊り子が裸で両手を縛られて、ロープでつるされて凍死している事件が起きた。死体は午前六時に通行人が発見している。踊り子が所属するバレエ団は長期公演の最中で、死んだ踊り子は前日の午後五時ぐらいまで舞台にいたという。公安(中国の警察)の脳裏に、デザインに手変わりのある金貨が浮かぶ。浮かんだというよりは向こうから勝手にやってきたようだ。公安が「風邪の予防になるかも知れない」と思ったとたんに小学生の、娘(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)の面影とともに消えた。舞台は午後六時で終幕して、打ち合わせや練習は開幕前にやるので、踊り子たちは客とともに、宿舎へまっすぐ帰るという。そのバレエ団では舞台に、目立たないように回転体をいくつか設置していた。回転体の上で、つま先立ちで一〇回転ぐらいしたり、片足を上げ下げしながら回転したりすることで知られている。公安が踊り子の宿舎に行って、管理人に昨日のことを聞くと、「午後七時頃は帰ってきてて風呂に入ったみたいだ」と言った。公安は、なに者かが風呂に入っていた踊り子を誘拐したと考えて、風呂場を調べる。風呂場はやや広めで薪の置き場から侵入することが可能だ。公安は侵入者の足あとを念入りに探した。しばらくすると裸の女が二人やってきて、「風呂上がりに差し入れの生魚を食べてたわよ」と言う。その、日の公安は洞察力が働かなかった。回転体の上で回転している踊り子を見ている目線がいくつかある。そのひとつに犯人がまざっていて、公安は必死になって犯人の顔を見ようとしていた。公安が声をかけてきた女の、陰毛の剃りあとを見ながら「どこかに出かけなかったか」と聞いたら、女は「自ぶんの部屋に入ったわよ」と言う。公安が踊り子の、部屋のドアを開けるとなかで踊り子が寝ている。公安が起こして事情を聞くと、「一週間前に足を捻挫して、ずっと妹に踊ってもらってたわ。客席で見てたけど今日は眠くて」と言う。公安が「妹も踊れるのか」と聞いたら、「簡単よ。舞台に立つと、からだが自然に動く」と言った。殺されたことを説明すると、「妹は凶暴な男とつき合っててそいつに殺されたんだわ」と言う。公安がその男をとり調べると、「おれの金貨を勝手に持ち出したから殺したよ」と言った。公安は男を逮捕する。その男は死んだ妹とつき合いながら、用心棒としてバレエ団の公演に同行していたらしい。金貨は死んだ父親の形見だという。