むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㊵

2019-08-05 09:46:12 | 小説
 昭和五年一〇月未明。瀋陽で鶏卵農家の経営者が、鳥小屋の鉄扉に首をはさまれて死ぬという事件が起きる。現場の鉄扉は片側開きで、扉のふちが、刃物のように研磨されていた。経営者が鳥小屋から出ようとしたときに、外に犯人がいて、扉が少し開いた状態で扉を押さえて、経営者が確認しようと頭を突き出した瞬間に、犯人が強く扉を閉めたと思われる。公安(中国の警察)が奥さんに鉄扉のことを聞くと、「にわとりの頭を切り落とすときに使うんですが、にわとりの頭を、小屋のなかに向けると卵を産まなくなるんです」と言った。鳥小屋にはにわとりが千羽ほどいて毎月三〇羽ほど養鶏場から仕入れているという。奥さんは毎日鳥卜(ちょうぼく)をやって、にわとりの神と一体化して快適な日々をすごしているようだ。公安は葬式の準備を、している鶏卵農家を張り込む。鶏卵はにわとりを、仕入れる現金を確保したあとは近所の農家と物々交換用に使っていた。公安は鳥小屋の、にわとりのざわめきと、ふさふさした羽毛とキュートな動きを思い返して、奥さんに動機がないと考える。死んだ経営者を調べると小学校の先生だった。五〇代で退職してから鶏卵農家を始めていて奥さんも学校の先生だ。遠縁の子供で、現在三一歳になる養子の息子がいた。一八歳まで同居していて上海の外資系企業に就職している。公安は事件の背景よりも古代ゲームが思いついた。「ピラミッドピンボール」だ。まず中心に四角すい。全体の高さが四〇㎝ぐらいで、四角すいの、傾斜部の高さは一〇㎝ほど。それに、グリップが左右についた三段ホッパーのパネルを四面組みつけて四人で対戦する。玉は直径二㎝の鉄球。上段のホッパーから、四角すいの頂点へ打ち出して直接シュートが成功する確率は最大で二〇%ぐらい。公安は自ぶんの他に、三人の登場人物を対戦相手に選んだが、犯人らしい人物がまざっていた。公安は死んだ経営者を詳しく調べる。小学校の先生時代は暴力教師で有名だった。小学生を棒で殴るという。当時の教頭先生に「教師間ではどうだったの」と聞いたら、「実は校長の、娘との間に子供がいる」と答えた。娘は四〇歳だという。生徒の指導方法について、校長の家で説教を受けたときに娘と関係ができたらしい。公安が校長の家に行って事情を聞くと、校長は「娘と結婚する約束をしてたがどうするんだ」と言う。公安が「あんたが殺したんだな」と聞いたら、校長は「そうだよ」と答えた。公安は校長を逮捕する。