むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㊽

2019-08-13 10:31:08 | 小説
 ゲームにはそれぞれ攻略法がある。タイトルは自転車屋。

 昭和五年一〇月未明。香港で自転車屋の店主が、拳銃で撃たれて死ぬという事件が起きる。公安は死体を見て脳裏に麻雀卓がよぎった。公安(中国の警察)が奥さんに「店主は麻雀をやってたか」と聞いたら、「新新さんの家でやってたわ」と言う。公安はそこへ行く。大きな屋敷の部屋に麻雀卓が並んでいた。公安が新新に事情を聞くと、「うちは会員制だから、この場所は秘密なんです。あなたも半チャンだけやりませんか」と言う。公安は「半チャンだけだ」と言って空いている麻雀卓の椅子に座った。新新がひと声かけると三人集まって四人で麻雀を始める。公安は最後の親番だったが、配パイがよくて三回続けてあがった。最後の局も配パイに白と中が三枚ずつで、発が二枚ある。公安が大三元をテンパイして、当たりパイをつかんだ男が「あの人はいつも勝ってましたね」と言いながら、安全パイを捨てた。公安の脳裏に落ち葉が積もった森を、歩く男女が浮かんだ。当たりパイは想像で捨てると、「ロン」と言う声が聞こえるらしい。公安がツモあがって点数計算をすると、新新が「あの人は女がいるんですよ。これは食事代」と言いながら、住所を書いたメモ紙と、紙幣の束を公安に渡そうとする。公安はメモ紙だけ受けとってそこを出た。女は浮気相手みたいだ。公安はその家に行った。玄関に人力車がある。公安は引き戸を開けて入って、なかの女に「ご主人は人力車を動かしてたんですね」と声をかけた。女が「兄がなにか」と言う。そのときトイレで「がたん」という音がした。公安が家に入ってトイレのドアを開けると、窓わくが外れていて、走り去る男の姿が見える。公安が女に立ち寄りそうな場所を聞くと、「人力車の組合ならかくまってくれるかも」と言う。女は新新の家で、パートで働いていて自転車屋の店主と関係ができたようだ。自転車屋は勝った金で人力車のオーナーになっていたという。公安は動機が不じゅうぶんだと思いながら人力車の組合へ行く。大きな長屋風の、建物の前に人力車が並んでいた。公安が建物に入ると入り口の、横のテーブルに拳銃を置いて、ソファーに犯人が座っている。人力車の運転者は武道家が多いため派手なアクションを、どっちが考えるか打診しながら「どうして殺したんだ」と聞いたら、犯人は「下り坂で『馬より速く走れ』と言ったから殺した」と言う。公安は犯人を逮捕する。拳銃は「イギリス人の客から買った物」だ。男はそら耳で聞き違えたらしい。


超IQ研究所クラスター㊼

2019-08-12 11:08:16 | 小説
 昭和四年八月未明。北京で石材屋の社長が、道路工事現場で、なに者かに石材で殴られて死ぬという事件が起きた。凶器の石材は重さが一五㎏ほどあり、運搬用の重機などは使用してないため事件として公安(中国の警察)が状況を調べている。事件当時は昼食時間で社長が五人の作業員に、昼食を届けにきていたようだ。作業員の話によると社長は自転車できていて、作業員は全員石材をはめ込む境界付近で、食事中で「帰ったと思った」と言う。社長は完成した道路に自転車をとめて近くで、死んでいる。凶器の石材は、自転車のそばに並べて置いてあった物だ。公安は石材屋に行って奥さんから事情を聞く。奥さんは「うちは建築じゃなくて道路用石材の会社です」と言う。建築用と違って車輪がからまわりしないように、表面がでこぼこした石材を使うらしい。公安は石材加工場の従業員を見たが一番大柄な男で、身長一m八〇㎝ぐらいで動機がなさそうだ。公安が声をかけると、「ここは昔の処刑場あと地でよく幽霊が出ますよ」と言う。公安が「どんな幽霊が出るんだ」と聞いたら、「SF小説の作家だった人で宇宙人と戦う方法を説明します」と言った。公安が奥さんに幽霊のことを聞くと、奥さんは「以前『画家の幽霊がいる』と言って、画家の人が手つだいにきてましたけど『へたくそで使い物にならない』と言って帰ったわ」と言う。公安が思い出したように「道路工事でトラブルがなかったか」と聞いたら、奥さんは「ないわ」と言いながら、なにかのちらしにペンで線を書いて「犯人はきっとこいつよ」と言った。世界革命集団の、文字の下に線が引かれたちらしだ。性能不明で高額な機械が数点書いてある。公安は自ぶんの手帳に書いた「透明人間になる装置」と、「瞬間移動できる装置っ」と「時空を越える装置」を使って、社長の殺害現場を見た。ちらしを持ってきた男が犯人みたいだ。公安はちらしに書いてある住所へ行く。外に荷車をとりつけた自動車がある。玄関を入るとなかは納屋のようになっていてへんてこな装置が並んでいた。公安は発電機に、燃料を入れている男に「世界革命集団か」と、声をかける。男は「われわれは人類に有益な発明を・・」と言う。そこには高さ二mぐらいの電動昇降機があった。公安が「石材屋の社長を殺しただろ」と聞いたら、男は「あれは事故だ」と答える。公安は男を逮捕した。昇降機は重量品を持ち上げて押し出す構造だ。「売り込みに行ってた」と言っている。


超IQ研究所クラスター㊻

2019-08-11 10:32:14 | 小説
 昭和五年九月未明。上海の、家具販売店の倉庫で家具職人が、刃物で刺されて、死んでいる事件が起きる。死体を発見した店主の話によると死んだ男は、安楽椅子専門の家具職人で「今日納品の予定だから倉庫を開けてた」と言う。公安(中国の警察)は死んだ家具職人の工房へ行く。工房は長屋の壁をくりぬいてできていて、つくりかけの安楽椅子が一〇脚並んでいた。安楽椅子の買い手は老人が多いという。死んだ家具職人は、なにを夢見ていたのだろうか。奥に布団が敷いてあって、金属の筒が六本並んでいた。金属の筒はバズーカ砲だ。弾をセットして、上部のレバーをスライドさせてばねで起爆させる構造になっていた。どれも弾が入っている。工房に人が近づいてきた。公安は裏口から外に出る。男が二人工房のなかに入った。ひとりは身長が二m近くあるイギリス人の男だ。公安は窓からなかの様子を見た。中国人の男が「日本軍の武器庫を破壊する係がこないとなにもできない」と言っている。イギリス人が「かわりの兵隊は、いるのか」と言った。中国人の男が「いま手配してる」と言う。中国人の男が家具職人を殺したようだ。イギリス人が「とにかく回収しようか」と言う。公安は「いやだなあ」と思いながらも戦いの霊魂が憑依してくる空気を感じた。公安は入り口にまわる。イギリス人が四本と、中国人の男が二本持って出てきた。公安が姿を見せると、中国人の男がバズーカ砲を一本地面に置いて、もう一本を立てひざの姿勢で公安に向けて発射する。公安がふせてよけると向かいの、石づくり倉庫の壁に命中して、爆発音とともに壁がくずれ落ちた。公安は中国人の男に向かって走って飛び蹴りを食らわせたがバズーカ砲で受けとめられる。イギリス人がバズーカ砲を下に置いて、拳銃をとり出そうとしていた。公安が飛びはねてキックをイギリス人の顔面にヒットさせると、イギリス人は後ろに倒れて頭を打って気絶する。中国人の男が、もうひとつのバズーカ砲で公安を狙って発射したが、長屋の玄関付近に命中して、長屋の半ぶんほどが吹き飛んだ。公安は飛んできた木材の下敷きになったがすぐ立ち上がった。中国人の男も立ち上がってナイフをとり出して公安に切りかかる。公安が飛びはねて片足でナイフをはじき飛ばすと、男の肩口に刺さって男がうずくまった。公安は二人を逮捕する。イギリス人は日本軍の武器庫に金塊があると思って計画をして、中国人の男は家具職人を、殺したことを認めた。


超IQ研究所クラスター㊺

2019-08-10 10:11:01 | 小説
 昭和四年九月未明。ハルピンで布団屋の経営者が、羊毛の束に顔を押しつけられて死んでいる事件が起きた。布団屋は店員が三人と、工場に従業員が五人いる。死体は事務所に、置いてある羊毛にうつぶせの状態で発見された。奥さんは事務全般を担当しているが、仕入れ先へ出張に出ていて現在連絡をとっている最中だ。死体を発見した工場の従業員は「朝に、出勤簿に、記入しに、事務所に入ったら社長が死んでた」と言う。公安(中国の警察)は昨晩「殺人事件と動機について」の論文を書いていて途中で、こんな頭になってやめたことを思い出した。工場はいつも従業員より先に社長がきていて、奥さんは出張が多いらしい。工場を調べると羊毛は事務所に置いてあるだけで、工場は綿の布団を生産しているようだ。死んだ経営者は婿養子の四二歳で、奥さんは四八歳。公安が工場のリーダーに、奥さんの、両親のことを聞いたら「奥さんと出張に出てるけど」と言う。公安が「出張してなにをやってる」と聞いたら、「とり引き先にとまり込んで麻雀をやってるよ」と答える。奥さんと連絡がとれた。「香港の、綿織物業者の家にいるけど。麻雀で負けて店と工場の権利をとられたわ」と言う。公安は放蕩を燃焼させた奥さんの、国家に対する意見を聞いて、思わず電話を切った。公安は殺し屋が近くに潜伏していると考えて布団屋を張り込む。翌日の午後に、殺し屋風の男と、地もとの若者三人が、布団屋の店先で店員とこぜり合いながら、「ここはうちの店だあ」と叫んでいた。公安が出ていくと、若者が「てめえは引っ込んでろ。おれたちに権利があるんだ」と言いながら殴りかかってくる。公安はパンチを手のひらで受けとめて、腕をつかんで背なかの方へひねり上げた。他の若者二人が公安につかみかかってくる。公安がキックを顔面に連続でヒットさせて若者二人は倒れた。殺し屋風の男が、背広のポケットから拳銃をとり出す。公安は腕を、つかんでいる若者を殺し屋風の男へ向けて突き飛ばして空中に飛びはねる。拳銃の弾が、公安の股下を通過した。公安は着地してすぐに、低い姿勢で殺し屋風の男に近づいて足払いを食らわせたが倒れない。男はにやりと笑って銃口を足もとの公安に向ける。公安は両足を使って、男のひざをはさみつけて前に転倒させた。公安が馬乗りになって、男の顔を地面に押しつけると、男は拳銃を捨ててあきらめる。公安は男を逮捕して、男は布団屋の店主を、殺したことを認めた。


超IQ研究所クラスター㊹

2019-08-09 09:59:01 | 小説
 昭和五年一〇月未明。上海の、船荷保険の会社で営業まわりにきた銀行員が、射殺される事件が起きた。射殺された銀行員は事務所の奥で所長と話していて、「所長はいるか」と、押しかけてきた犯人に所長と間違われて撃たれたらしい。死体を見ると顔に信号弾が命中している。公安(中国の警察)が所長から事情を聞くと、「あの男は、漁船のオーナーだ」と言った。魚を船荷扱いできなくなったから、解約の手続きをしたが「どうにかしてくれ」と、なんどか会社にきていたという。公安は住所を聞いて漁船の、オーナーの家へ行く。そこには木造の長屋が三棟あって、同じ敷地にブロックづくりの一軒家がある。公安が一軒家に近づくと、長屋の方から木刀を持った若者が三人近づいてきた。ひとりが木刀を振りかざして公安に向かって走ってくる。公安は飛び蹴りで木刀をはじき飛ばす。あとの二人が後ろにまわり込む。公安が連続まわし蹴りを二人の顔面にヒットさせる。長屋から長さ一mぐらいの鉄筋を振りかざした男が二人出てきた。鉄筋の先端がとがっている。先端を向けて並んで走ってきた。公安は高く飛びはねて二人の顔面に片足ずつ蹴りを入れる。一軒家から刀を持った男が出てきた。小学生の息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)が「船荷保険の友達たち」と言っている。公安の脳裏に、当たり前すぎるとうまくいかないなにかの対戦競技が浮かぶ。公安は男に石を投げつけてから一軒家のドアまで走って、ドアをたたきながら「出てこい」と叫んだ。刀の男は遠巻きに見ている。五秒ほどでドアが開いて、白髪まじりの男が「おれは漁師だから」と言いながら出てきて自転車でどこかに行った。犯人のようだったが公安は一軒家を調べる。なかに若い女がいて「港の、倉庫の事務所に行ったみたいだけど」と言う。公安は自動車を手配して港の倉庫へ向かった。倉庫に着く。自動車の運転をしていた若い公安に「自動車を破壊されないように見張ってろ」と指示して事務所へ向かう。事務所から鎖鎌を持った男が出てくる。公安が近づくと鎌を投げつけて地面に突き刺さってからすぐ引き抜かれた。事務所からさっきの男が出てきて公安に向けて信号弾を発射する。公安がよけると、信号弾の光が背なかを通過して、自動車のフロントにめり込んだ。公安が走って近づくと、鎖鎌の男が鎌を投げつけてくる。公安は鎌を片手で受けとめて鎖鎌の男に突進して飛びついて、男の首に鎖を巻きながら、犯人の顔面にキックした。公安は犯人を逮捕する。


超IQ研究所クラスター㊸

2019-08-08 10:33:35 | 小説
 昭和五年八月未明。長春で野菜問屋の経営者が、カボチャで頭を殴られて死ぬという事件が起きた。経営者は事務所で、あおむけの状態で殴られている。野菜問屋は男性従業員が九人いて、経営者の奥さんが事務全般をやっていた。早朝に八百屋が荷車で、野菜を買いつけにきて従業員が応対して午前九時ぐらいまではいそがしい。野菜の入荷は、午後からのため、それまでの時間はひまだが、事件当時は事務所に経営者しかいなかったという。公安(中国の警察)が奥さんに事情を聞くと、「朝から直営店の、八百屋の手つだいに出てて知らせを聞いていま戻ってきたんです」と言った。死体は午後に、入荷の台帳をとりにきたリーダーが発見していてリーダーは「全員倉庫で作業してたよ」と言う。そこでは百個積んだ木箱を、ひとつずつずらすような作業をときどきやっているようだ。経営者は三五歳で、奥さんは四〇歳。子供はいない。経営者は婿養子で奥さんの両親が、以前は現場にきていたが腰を悪くしてから近づかなくなったという。公安が一番年上の、五〇代の従業員から事情を聞くと、「奥さんと結婚する前は社長がリーダーだった」と答える。公安が「結婚してからなにか変わったか」と聞いたら、「二倍ぐらいいそがしくなったけど社長は現場を手つだわないで昼寝してることが多くなった」と言う。公安が「従業員のかずは、増えたのか」と聞いたら、「同じだけど」と答えた。公安が「どうしていそがしくなったんだ」と聞いたら、「高い値段で仕入れて、同じ値段で売ってる」と言う。公安が「どうしてだ」と聞いたら、「社長は農家の出身で、そのせいかも知れない」と答える。公安は読み書きがまるでできない紀元前の、奴隷のような雰囲気に圧倒されて、歴史の重さをかみしめた。公安は町に、もう一軒ある野菜問屋に行って事情を聞く。そこの経営者は「物が入ってこないのでうちもあそこから仕入れて小売りをやってるよ」と言う。従業員は全員小売店に出払っていて、がらんとした倉庫にカボチャだけあった。「カボチャはうちの直営農場でつくってる」そうだ。ここは領収書ぐらいなら書けそうな雰囲気がある。公安が「高い値段で仕入れて商売になるだろうか」と聞いたら、「電話で送り主と綿密に確認していい物だけ仕入れればできるよ」と言う。死んだ経営者の昼寝は、深夜まで現地と電話のやりとりをしていたことが原因だったらしい。公安は直営店の八百屋を張り込んでいた。直営店は二か所あって事件後も奥さんが、どちらかの店で働いていたがどちらも繁盛してない。公安が古代ローマの、剣闘士の試合で、連敗中の剣闘士が、血が入った袋を落として、観客に野次られている場面を想像しながら、奥さんに「カボチャは売れてますか」と声をかけたら、奥さんは涙を流しながら「私負けるのが大嫌いなんです。うちも小売りに、力を入れるように、主人に言ったけど反対されたので殺しました」と言う。公安は連敗中の剣闘士が、運営上の都合で勝たせてもらえると錯覚して剣を、落として負ける場面を想像しながら、奥さんを逮捕する。


超IQ研究所クラスター㊷

2019-08-07 10:30:01 | 小説
 昭和五年五月未明。北京の見世物小屋で経営者が、首を斬られた死体で発見される事件が起きた。見世物小屋は入り口におっぱいが見える首なし女のポスターを貼って、小屋の通路に、血だらけの人形を並べたお化け屋敷だ。公安は入り口の時計を見ながら「そろそろ思考描写の時間だな」と思った。気になるのは、九四歳な公安OBの話だ。 以前憑依してきた人物はやはり公安OBだった。九四歳になって人間の限界点を見ているという。それは自ぶんの年齢じゃなくて読み書きが、ままならない下級官吏がぞうの寿命ぐらいで、死ぬ境界のことみたいだ。読み書きがままならないと、若者につたえることが、なにかの痛みだけになって自ぶんから、痛みを求めるようになるという。事象の構造に、対する観察眼の、なんらかの代用物が消失して、代用物を動物のように追跡してそうなるらしい。現場は死んだ経営者が三五歳で男性従業員三人と美術学校の同級生。白骨死体や腐乱死体の人形があることからわりと繁盛しているみたいだ。昨日はレイアウトを経営者と、男性従業員三人で変えていたという。男性従業員は人形づくりの担当が二人と、舞台装置の担当がひとり。公安は切腹している人形がいいと、思ったが脳みそを食べている女と、食べられている男の人形もいいと思う。出口そばに太った女の、裸の人形があることも印象的だ。見世物小屋は人形だけで通常に営業している。公安が舞台装置の男に「ここは、なん年前からやってるんだ」と聞いたら、「一〇年前に銀行から資金を借りて四人でつくった」と言う。公安が「ずっとやるつもりか」と聞いたら、「将来はもっと大きな見世物小屋をつくりたい」と言った。そして「音響装置や光線が動きまわる装置をつくって満員にする」と言う。その日見世物小屋は異常ににぎわっている。公安は人形づくりの男二人を道具部屋に、舞台装置の男を従業員控え室に待機させて、事情を聞いていた。公安が舞台装置の男に「空中を飛びまわる装置はつくらないのか」と聞いたら、「骸骨が空中を飛びまわるしかけもつくろう」と答える。そのとき客が「トイレはどこですか」と言いながら従業員控え室に入ってきた。舞台装置の男が「出口のそばにあるよ」と言って客を案内する。公安は人形づくりのひげをはやした男に「本物だと繁盛するな」と言う。男は「社長に『血がつくり物に見える』と言われておれが殺したよ」と言った。公安は男を逮捕する。


超IQ研究所クラスター㊶

2019-08-06 10:09:37 | 小説
 ヤフーオクで入札がある十万円金貨をよく見ると、業者が出品している物だ。これは大きな手変わりがあって趣味品として取り扱える物を買いとりして出品している。記念金貨をよく見ると、刑務所みたいなところでつけたと思われる細かいひっかき傷があるっ。持ち主の阿呆な女が気づかないでプレッシャーに耐えられなくなって天変地異を叫ぶことがある。やめてもらいたい。十万円金貨は不動産投機が過熱し始めた昭和61年に「入居者の持ち物からリスクを受けることがあります」と告知するための国策で発行された。金貨そのものに独特な生体負荷があるわけだ。タイトルは乳母車。

 昭和五年一〇月未明。上海で乳母車の、販売店の社長が鼻にどんぐりを入れられて、口におむつを詰め込まれて死んでいる事件が起きる。死体は女性従業員が発見して、どんぐりは台所にいくつかあった物で、おむつは展示している人形の物だった。女性従業員は胸が大きい二五歳と小さい三〇歳の二人で、どちらも死んだ社長と肉体関係があるみたいだ。公安(中国の警察) は、犯人は女性従業員のどちらかだと直感したが複雑な古代ゲームを、思いつきかけたので手順を変えることにした。公安は奥さんから事情を聞く。死んだ社長は五〇歳で、奥さんは三五歳だが、子供はいない。公安が「どうして子供をつくらないんだ」と聞いたら、奥さんは「主人は『子供はお客様の都合だから、おれたちはつくらない』と言ってたから」と答えた。昔はおむつを売っているだけの会社だったが、工作工場を買収してからは、乳母車をつくって販売しているという。社長と、女性従業員との関係を聞いたら、奥さんは「主人の会社だから好きにさせてる」と答えた。夫婦の寝室は、店の二階にあるが事件当時社長は食事を終わらせてから外出していたという。公安が「社長が死んでるのになぜ気づかなかった」と聞いたら、奥さんは「熟睡してたわ」と答える。公安はやっと古代ゲームの全体像が見えた。「シーソーゲーム」だ。まず直径一一㎜の鉄球に、長さ二〇㎝ぐらいのシーソーレール。シーソーは高さ五㎝くらいで中央に溝があって、溝にはまれば一点。シーソーが一一個並んでいて、へらを使って下げたり上げたりして一回ずつ交替で遊ぶ。先に六点とった方が勝ちで、問題は溝の前後が盛り上がっていて、溝の両わきにあるレールが、外側にふくらんで鉄球が通過する構造だ。鉄球に加速をつけすぎると、溝を飛び越える設定になっていた。調子よく連続得点することが難しくてシーソーゲームになる。公安が六点目を想像しながら、二五歳の女性従業員に事情を聞くと、「私は昨日家へ帰って忘れ物に気づいて、店へとりに戻ったんです」と言う。公安が「なん時頃」と聞いたら、「午後一一時頃でした。店に明かりがついてて、社長がいます。私が『忘れ物をとりにきた』と、言うと社長がどんぐりを鼻の穴に詰めて、『子供をつくろうよ』と言いながら私のからだをなでまわします。それで私がそばにあったおむつを、口に押し込んで鼻をつまんだら死んじゃいましたよ」と言った。公安は二五歳の女性従業員を逮捕する。



超IQ研究所クラスター㊵

2019-08-05 09:46:12 | 小説
 昭和五年一〇月未明。瀋陽で鶏卵農家の経営者が、鳥小屋の鉄扉に首をはさまれて死ぬという事件が起きる。現場の鉄扉は片側開きで、扉のふちが、刃物のように研磨されていた。経営者が鳥小屋から出ようとしたときに、外に犯人がいて、扉が少し開いた状態で扉を押さえて、経営者が確認しようと頭を突き出した瞬間に、犯人が強く扉を閉めたと思われる。公安(中国の警察)が奥さんに鉄扉のことを聞くと、「にわとりの頭を切り落とすときに使うんですが、にわとりの頭を、小屋のなかに向けると卵を産まなくなるんです」と言った。鳥小屋にはにわとりが千羽ほどいて毎月三〇羽ほど養鶏場から仕入れているという。奥さんは毎日鳥卜(ちょうぼく)をやって、にわとりの神と一体化して快適な日々をすごしているようだ。公安は葬式の準備を、している鶏卵農家を張り込む。鶏卵はにわとりを、仕入れる現金を確保したあとは近所の農家と物々交換用に使っていた。公安は鳥小屋の、にわとりのざわめきと、ふさふさした羽毛とキュートな動きを思い返して、奥さんに動機がないと考える。死んだ経営者を調べると小学校の先生だった。五〇代で退職してから鶏卵農家を始めていて奥さんも学校の先生だ。遠縁の子供で、現在三一歳になる養子の息子がいた。一八歳まで同居していて上海の外資系企業に就職している。公安は事件の背景よりも古代ゲームが思いついた。「ピラミッドピンボール」だ。まず中心に四角すい。全体の高さが四〇㎝ぐらいで、四角すいの、傾斜部の高さは一〇㎝ほど。それに、グリップが左右についた三段ホッパーのパネルを四面組みつけて四人で対戦する。玉は直径二㎝の鉄球。上段のホッパーから、四角すいの頂点へ打ち出して直接シュートが成功する確率は最大で二〇%ぐらい。公安は自ぶんの他に、三人の登場人物を対戦相手に選んだが、犯人らしい人物がまざっていた。公安は死んだ経営者を詳しく調べる。小学校の先生時代は暴力教師で有名だった。小学生を棒で殴るという。当時の教頭先生に「教師間ではどうだったの」と聞いたら、「実は校長の、娘との間に子供がいる」と答えた。娘は四〇歳だという。生徒の指導方法について、校長の家で説教を受けたときに娘と関係ができたらしい。公安が校長の家に行って事情を聞くと、校長は「娘と結婚する約束をしてたがどうするんだ」と言う。公安が「あんたが殺したんだな」と聞いたら、校長は「そうだよ」と答えた。公安は校長を逮捕する。


超IQ研究所クラスター㊴

2019-08-04 10:48:15 | 小説
 昭和四年七月未明。天津で小作人の男が上半身を土に埋められて、死んでいる事件が起きる。現場は雑木林と畑の境界であちこち土を掘り返していた。男は雑木林を開墾して、朽ち木でかぶとむしを飼育していたらしい。公安(中国の警察)が地主に事情を聞くと、「雑木林はあいつが、開墾した物だが」と言う。公安が「鉄条網の柵は誰がつくったんだ」と聞いたら、「小作料をもらってるからうちの方でつくった」と答える。かぶとむしのかずを聞くと、「あいつが、町の業者に売ってたがよくわからない」と答えた。公安は「四川昆虫店」と呼ばれるその業者を探す。公安がかぶとむしも売っている町の雑貨屋でかぶとむしを一匹買うと、店主が教えてくれた。ここの町では、子供たちの間で、皿の中央にたらした蜂蜜を、二匹のかぶとむしで奪い合わせる遊びが流行している。かぶとむしの悠々しさは、幼虫の期間が長くて、時間をかたよらせたようにも思える希少な生物独特の物だ。公安は聞いた住所へ行く。そこは別な名前の昆虫店だったが店じゅうに、かぶとむしのかごが並べられて売られていた。公安が店主に四川昆虫店のことを聞くと、「うちはあそこから百匹単位で仕入れてる。あいつは昔の遊び仲間だから朽ち木で育てる方法を教えたよ」と言う。死んだ男が四川昆虫店のようだ。公安と店主が話している間に、かぶとむしのかごが二つ売れた。公安が帳簿を見せてもらうと他の仕入れ先は、日にちをだいぶおいて数十匹単位のとり引きだ。公安は小学生の頃にかぶとむしをとった経験があって、かぶとむしが集まる樹液は木の成長過程で、枝が折れた部ぶんだった。つかまえたかぶとむしは空を飛ばせて遊んだ。公安は店を出て、他の「三川昆虫店」や「五川昆虫屋」をまわる。公安は全部の仕入れ先をまわったが、「木に蜜をつけて、集まったかぶとむしをとっただけ」で死んだ男のように、自ぶんの軒先で本格的に飼育している者はいない。公安はもういちど雑木林を調べた。鉄条網は雑木林を囲んで隣接する畑の、先の用水路まで続いている。強欲な地主が侵入者にかぶとむしをプレゼントするだろうか。公安は女性の、裸体のまんがや、小銃の弾が落ちている雑木林は「かぶとむしを自由にとっていいんだ」という鉄則を思い出す。数日後に近所の、床屋の男が自首してくる。男は「小学生の息子がつかまえたかぶとむしをあの男にとられて泣いてたから殺した」と言う。公安は男を逮捕した。


超IQ研究所クラスター㊳

2019-08-03 10:08:14 | 小説
 中国はわが国の重要な同盟国だ。タイトルは踊り子。

 昭和一二年二月未明。長春にある劇場の入り口で、バレエの踊り子が裸で両手を縛られて、ロープでつるされて凍死している事件が起きた。死体は午前六時に通行人が発見している。踊り子が所属するバレエ団は長期公演の最中で、死んだ踊り子は前日の午後五時ぐらいまで舞台にいたという。公安(中国の警察)の脳裏に、デザインに手変わりのある金貨が浮かぶ。浮かんだというよりは向こうから勝手にやってきたようだ。公安が「風邪の予防になるかも知れない」と思ったとたんに小学生の、娘(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)の面影とともに消えた。舞台は午後六時で終幕して、打ち合わせや練習は開幕前にやるので、踊り子たちは客とともに、宿舎へまっすぐ帰るという。そのバレエ団では舞台に、目立たないように回転体をいくつか設置していた。回転体の上で、つま先立ちで一〇回転ぐらいしたり、片足を上げ下げしながら回転したりすることで知られている。公安が踊り子の宿舎に行って、管理人に昨日のことを聞くと、「午後七時頃は帰ってきてて風呂に入ったみたいだ」と言った。公安は、なに者かが風呂に入っていた踊り子を誘拐したと考えて、風呂場を調べる。風呂場はやや広めで薪の置き場から侵入することが可能だ。公安は侵入者の足あとを念入りに探した。しばらくすると裸の女が二人やってきて、「風呂上がりに差し入れの生魚を食べてたわよ」と言う。その、日の公安は洞察力が働かなかった。回転体の上で回転している踊り子を見ている目線がいくつかある。そのひとつに犯人がまざっていて、公安は必死になって犯人の顔を見ようとしていた。公安が声をかけてきた女の、陰毛の剃りあとを見ながら「どこかに出かけなかったか」と聞いたら、女は「自ぶんの部屋に入ったわよ」と言う。公安が踊り子の、部屋のドアを開けるとなかで踊り子が寝ている。公安が起こして事情を聞くと、「一週間前に足を捻挫して、ずっと妹に踊ってもらってたわ。客席で見てたけど今日は眠くて」と言う。公安が「妹も踊れるのか」と聞いたら、「簡単よ。舞台に立つと、からだが自然に動く」と言った。殺されたことを説明すると、「妹は凶暴な男とつき合っててそいつに殺されたんだわ」と言う。公安がその男をとり調べると、「おれの金貨を勝手に持ち出したから殺したよ」と言った。公安は男を逮捕する。その男は死んだ妹とつき合いながら、用心棒としてバレエ団の公演に同行していたらしい。金貨は死んだ父親の形見だという。



超IQ研究所クラスター㊲

2019-08-02 09:39:03 | 小説
 昭和四年八月未明。長春のしいたけ工場で、経営者が菌床をつける朽ち木で、殴られて死ぬという事件が起きた。死体は朝に奥さんが発見したという。公安(中国の警察)は昨日「読み書きが、ままならない人間が幽体離脱する現象について」という論文を書いた。死体を見てなにが関係しているか検証する。重要なことはことばのコミュニケーションを重要視して相手に、意味がつたわらないときに相手と一体化することだ。その際に、国語辞典に書いてない合成語を使用して、思いをつたえようと、していると考えられる。正体不明の合成語を使って自ぶんに、理不尽な権利があるように主張して迷惑千万だ。昨日は九四歳の公安OBが、民族のなにかをつたえようと憑依してきて、「書こうかな」と思ったがやめた。OBであると限らないし、今日の事件と関係なさそうだ。公安が奥さんに事情を聞くと、「主人は居酒屋も経営しててそこの女性経営者と同居してたけど」と言う。死んだ経営者が五四歳で居酒屋の女性経営者は三四歳だ。公安が女性経営者から事情を聞くと、「私は、あの人と出会う前は古銭商で働いてました。あの人は『食品で一番になる方法は金貨だ』と言って、同じ年号の金貨を一〇〇枚ぐらい集めて、世界じゅうにしいたけを、売る方法を考えてたわ」と言う。公安は居酒屋がなんのために、あるのか考えながら女性経営者と奥さんを張り込む。死体は後ろから数回殴られていて女性の力でも可能だ。工場は佃煮や乾燥しいたけを全国に出荷して繁盛している。本当に世界一を、目標にしているようだ。逆に居酒屋は閑古鳥が鳴いて、あまった食材を兄弟が店にきて始末していた。奥さんの話だと、事件当時経営者は午後六時に工場を出て居酒屋へ行って、奥さんは午後九時に工場を閉めたという。居酒屋の経営者に事件当時を聞くと、「うちの店にきてからどこかへ行った」と答える。時間を聞くと、「覚えてないわ」と言う。小学生の息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)は「僕の金貨だ」としかしゃべらない。数日後に、居酒屋の経営者に新しい男ができた。男はたけのこ工場の経営者で出会って間もないみたいだ。公安の脳裏に若々しい男が浮かぶ。奥さんは山菜の卸売りをやっている若い男と交際している。公安が奥さんに事情を聞くと、「彼が『自ぶんの工場がほしい』と言うから酔って工場に戻ってきた主人を殺したわ」と白状した。公安は奥さんを逮捕する。奥さんは「金貨は日本の恵まれない子供たちに送ってください」と言う。



超IQ研究所クラスター㊱

2019-08-01 09:57:18 | 小説
 タイトルは麻雀荘。作者に麻雀のコツを聞くと、ツモの配列が、カンチャン待ちの形をしているからカンチャン待ちをツモれるかに、集中力を傾けるという。

 昭和四年七月未明。北京にある麻雀荘の前で、陶器製の巨大な麻雀パイで客が殴られて、死ぬという事件が起きた。巨大な麻雀パイは店の入り口に飾ってあった物で、縦の長さが、五〇㎝ほどの大きさだ。目撃者は「男二人が大きな声で口論してて、片方の男が威嚇するように麻雀パイを持ち上げて、もうひとりの男が突き飛ばすと、持ち上げてた男が倒れて、頭の上に麻雀パイが落ちたみたいだけど」と言う。公安(中国の警察)はどうしてそばに置いてあった長さ七〇㎝ほどの、陶器でできた千点棒を持ち上げなかったのか不思議に思いながら、麻雀荘の店員から事情を聞く。店員は口論していた二人と三人で麻雀をやっていて、「二人ともかなり負けてた」と言う。公安は店に入って麻雀卓を見せてもらった。麻雀パイの、側面の黒ずみで、ふせた状態でどのパイかわかるみたいだ。公安が「手加減しなくてよかったのか」と聞いたら、「二人は焼き鳥屋の店員で以前生肉を食わされたから」と答えた。犯人はチキンの生肉特有な神経痛を供給してくれる人らしい。公安はその店に行って店長から事情を聞く。店長は「時間に几帳面な男でもうすぐやってくる」と言う。公安は手帳に「焦がさないように焼くこと」と書く。犯人が出社してきた。死んだことを知らない様子だ。公安が声をかけると、「先に着がえてくるから」と言って従業員控え室に入った。店長がいそがしそうにひとりで開店準備をしている。公安が待っていても出てこないので従業員控え室に入ると犯人は窓から逃げていた。店長に立ち寄りそうな場所を聞くと、「駅前の麻雀荘なら二四時間営業で仮眠室もあるよ」と言う。公安は駅前の麻雀荘へ行く。公安が麻雀荘に入ると犯人は奥の部屋で麻雀をやっていた。公安は犯人に少しずつ近づく。手前の麻雀卓にいる女が、公安を上目づかいに見る。犯人と目が合った次の瞬間、犯人が壁の張り紙を押すと、隠しドアが開いて、犯人が消えた。公安が追いかける。ドアの向こうに階段があって、電球がついていた。階段を下りると細い通路が駅の方角へ続いている。公安は「出口にかぎをかけられるとまずいな」と思って走る速度を早めたが、細長い階段を上がった先の木製ドアにかぎがかかっていた。ドアの向こうは、駅のホームだ。公安はかぎの構造を透視する能力がある。正拳でドアを突き破って、かぎを開けた。犯人は引き返すと思っていたらしい。呆然として公安を見ている。公安は犯人を逮捕した。