
双対
外側の汚れを内から拭ってみるか ★ 内側の汚れを外から拭ってみるか
おずおずと地球を手繰る蝉の肢 ★ 一滴の宇宙をさぐるユーグレナ
壁鏡雲を映して錆びてゆく ★ 湯玉来てブレイクダンス果てる箇所
手を伸べてガソリン噴けば宙ふかし ★ 一リットルの水から生れて宙に消え
おぼろ月石段一つ消えており ★ 寂しさよ針穴抜ける駱駝いて
壁際のテープ引っ張るはてしなく ★ 新聞紙板の隙間に戻りゆく
雲の下駐輪場を抜けられず ★ 春昼をはぐれば床の下の雲
棕櫚竹の枯れたる上を袋飛ぶ ★ 小屋消えて空を嚼んでる空がある
天地のとほきはざまに葦あそぶ ★ 残照に係留された飛行船
(宙=そら、天地=あめつち) 豈50号 (2010)
外側の汚れを内から拭ってみるか ★ 内側の汚れを外から拭ってみるか
おずおずと地球を手繰る蝉の肢 ★ 一滴の宇宙をさぐるユーグレナ
壁鏡雲を映して錆びてゆく ★ 湯玉来てブレイクダンス果てる箇所
手を伸べてガソリン噴けば宙ふかし ★ 一リットルの水から生れて宙に消え
おぼろ月石段一つ消えており ★ 寂しさよ針穴抜ける駱駝いて
壁際のテープ引っ張るはてしなく ★ 新聞紙板の隙間に戻りゆく
雲の下駐輪場を抜けられず ★ 春昼をはぐれば床の下の雲
棕櫚竹の枯れたる上を袋飛ぶ ★ 小屋消えて空を嚼んでる空がある
天地のとほきはざまに葦あそぶ ★ 残照に係留された飛行船
(宙=そら、天地=あめつち) 豈50号 (2010)
4ケタ数字(半角)は要りますが、URLは記入しなくてもいいようです。
葦原中つ国は『古事記』の神話である。天孫族の末裔が農具を振るって大地を耕す列島は、水の国であり、葦のそよぎが豊穣を嘉している。一方、飛行船は、それが軍事的な目的を目指していたとしても、近代西洋文明が夢の中に産み落とした「無邪気な子どもらしい」憧憬とも言える。中学の運動会で吹奏楽部がよく『ツェッペリン伯爵』なるマーチを演奏していた光景を思い出す。夕焼けの中に置き忘れられた乳母車を、私が連想するのは「係留」という言葉が美しく、懐かしく使われているからであろう。太古と近代、極東と泰西の比較は、珍しくないが、それが神話につながる「憧憬」という心の作用から発想されているところに、詩が誕生したと、言うべきか。