石を薙ぐ
ミジンコの臓腑の流れ春立ちぬ
π匹の蜥蜴歩いて酉となる
ひこばえにしがみついたる蝗霊
やわらかな牡蠣を噛み切るおそろしさ
牡蠣啜れば燃え落ちてゆくヴェスヴィオス
我が子なら咆哮返せミノトール
反芻や蒼空深く銀河棲む
伏す牛が眼を遣る森に神を見ず
星座から黒馬が抜けている
馬止まり一本の脚走り去る
★
バス停に気配殺して四季くぐる
反則だまっすぐ渡ってやってくる
また来たと次々飛び込む水の音
お預けに混迷深まるラーメン鉢
鰻泥獲物突き出す四方八方
ゴルゴンの髪が目覚めるわらわらと
疎まれて美しくなる白雪姫
いけず女の下着を抜ける星座かな
Dead Door 入りて羽音に包まれる
くたばった野菜畑に八雲たつ
★
褒められて深さのしれぬ雪を踏む
朝の海静かに湧きオムレツ不穏
山中にカラダ遺して淋しかり
滅びても脳裏を廻るミズスマシ
嬉しいかおまえも既に死んでいる
堅めたる拳の内より蟻零れ
頭頂にモンキースパナ踊らせて
カンダタが今日も糸を攀る部屋 (攀=よじ)
識閾の財布ゐざりてどぶに消ゆ
マスクしてみつめておりぬ浮き沈み
★
密談や桜は尾根に逃れけり
江戸の代を抜けて屋根に腰おろす
澄みゆけばタガメの縋る草の茎
泰山木鬼の背丈に花ひらく
電線を掻き分け掴む雪雷雲
神有月無蓋の貨車で来し神も
魂憑きて口かず尠き旅となる
たましひがふうわりこえる梁のうら
夢のなか探し残した針一本
一匹のオイルサーディン解脱する
★
空分けて黒雲下がり丘に触る
陽が昇る一木の影手繰りつつ
仏滅やラッキョウ一つ空を飛ぶ
空渡るオリオン星につかまって
霧はれて偏心顔貌顕れる
空奥の鰻の腹が裏返る (空=うろ)
輪郭が電気となりし闇の犬
灯消え水母の返る検査棟
寝屋川の月を震わせワニ渡る
彼の川のハリガネムシに謎のこし
★
忘じたり雲霞の裾の六分儀
蜃気楼内より望む社稷かな
トンボきてへしと定まる石の上
枯山河あたま揺すればとよもすも
梅干しの破れてをりぬ美し国
崖づらの松の木どもの笑ふかな
白き天テグスを張って分銅吊す
巨椋池ささめききらめき月影領
蟻一匹 身を折る深手私有する
ヤジロベエ雲海の涯にゆれている
★
陽が昇る一木の影引き寄せつ
節を漏る光の棒は肩に折れ
薔薇をもて石を薙ぎたりしぶきして
さまざまの早さで沈む twin-tower
棒投げる首が咥える噛み砕く
特急のしりえに続く顔の渦
これにてと峠のところで岩に消え
虫あまた身にあそばせて桜朽つ
もうおしまい作って見せる煙の輪
外輪船茅花はいつも闌てをり (闌=たけ)
(豈43,44,46,47,48号掲載より)
ミジンコの臓腑の流れ春立ちぬ
π匹の蜥蜴歩いて酉となる
ひこばえにしがみついたる蝗霊
やわらかな牡蠣を噛み切るおそろしさ
牡蠣啜れば燃え落ちてゆくヴェスヴィオス
我が子なら咆哮返せミノトール
反芻や蒼空深く銀河棲む
伏す牛が眼を遣る森に神を見ず
星座から黒馬が抜けている
馬止まり一本の脚走り去る
★
バス停に気配殺して四季くぐる
反則だまっすぐ渡ってやってくる
また来たと次々飛び込む水の音
お預けに混迷深まるラーメン鉢
鰻泥獲物突き出す四方八方
ゴルゴンの髪が目覚めるわらわらと
疎まれて美しくなる白雪姫
いけず女の下着を抜ける星座かな
Dead Door 入りて羽音に包まれる
くたばった野菜畑に八雲たつ
★
褒められて深さのしれぬ雪を踏む
朝の海静かに湧きオムレツ不穏
山中にカラダ遺して淋しかり
滅びても脳裏を廻るミズスマシ
嬉しいかおまえも既に死んでいる
堅めたる拳の内より蟻零れ
頭頂にモンキースパナ踊らせて
カンダタが今日も糸を攀る部屋 (攀=よじ)
識閾の財布ゐざりてどぶに消ゆ
マスクしてみつめておりぬ浮き沈み
★
密談や桜は尾根に逃れけり
江戸の代を抜けて屋根に腰おろす
澄みゆけばタガメの縋る草の茎
泰山木鬼の背丈に花ひらく
電線を掻き分け掴む雪雷雲
神有月無蓋の貨車で来し神も
魂憑きて口かず尠き旅となる
たましひがふうわりこえる梁のうら
夢のなか探し残した針一本
一匹のオイルサーディン解脱する
★
空分けて黒雲下がり丘に触る
陽が昇る一木の影手繰りつつ
仏滅やラッキョウ一つ空を飛ぶ
空渡るオリオン星につかまって
霧はれて偏心顔貌顕れる
空奥の鰻の腹が裏返る (空=うろ)
輪郭が電気となりし闇の犬
灯消え水母の返る検査棟
寝屋川の月を震わせワニ渡る
彼の川のハリガネムシに謎のこし
★
忘じたり雲霞の裾の六分儀
蜃気楼内より望む社稷かな
トンボきてへしと定まる石の上
枯山河あたま揺すればとよもすも
梅干しの破れてをりぬ美し国
崖づらの松の木どもの笑ふかな
白き天テグスを張って分銅吊す
巨椋池ささめききらめき月影領
蟻一匹 身を折る深手私有する
ヤジロベエ雲海の涯にゆれている
★
陽が昇る一木の影引き寄せつ
節を漏る光の棒は肩に折れ
薔薇をもて石を薙ぎたりしぶきして
さまざまの早さで沈む twin-tower
棒投げる首が咥える噛み砕く
特急のしりえに続く顔の渦
これにてと峠のところで岩に消え
虫あまた身にあそばせて桜朽つ
もうおしまい作って見せる煙の輪
外輪船茅花はいつも闌てをり (闌=たけ)
(豈43,44,46,47,48号掲載より)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます