![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/90/083d8d05b6c58aed2d31dba4fbca13ec.jpg)
イカルス
古池やわずか飛び込むニュートリノ
反返りシコリのまなぶ浮遊術
霧の域こぼれてナイフのえら呼吸
幾万のくわがた纏いて墜落す
蜘蛛の巣と唾で紡ぐ羽衣は (唾=つばき)
吊り服のひとつひとつが身動がず (身動=みじろ)
窓の下破片が一つ留まりぬ
おおとりの飛び立つ姿勢とびたたぬ
テレビ殿笑い転げる威嚇する
編隊の花虻居間のホログラム
テレビから出てきた祖父も綱渡り
ビル跡に洗いざらしの矢車草
席はずし夜の窓から崖を呼ぶ
長雨にうち捨ておけばけものなり
突っ伏した夜空の上は櫓がゆれる (櫓=やぐら)
はしきやし人間自転車坂に消ゆ
ザンブリと白い飛沫が暗渠を進む
恐ろしい水が抜けたマンホール
廃坑の羊歯よ進化の先に待て
カルマンやあくびの脇に蚊が生まれ
(1991 「船団」第12号 一部改)
浅薄なアフォリズムではない、この確かな手触りは何なのだろう。化石も含めて羊歯という植物の、気の遠くなるような繁殖力がリアリティーをもって語られ、その繁殖力こそが、文明の墓標となり得ることが、廃坑の岩盤から永遠の規則性をもって滴る水滴のイメージを伴って提示されているからではなかろうか。
人の命など、いかほどのものか。大病を患っている私には、この、粗野にして不逞とも言える開き直りが分かるような気がする。
http://blog.goo.ne.jp/abunobu/e/afe87aa7689728e2b79851122b217b92
葬儀のことを次のところに書いた。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=520560374768006&set=a.173153779508669.1073741825.100004421440423&type=3