パワードモニタースピーカーはレコーディングや音楽の再生環境がオーディオからPCに移り変わるとともに発展してきた代物。古き良きオーディオファンからするとパワードスピーカーはパソコンにオマケでついてくる簡易スピーカー位の認識でしょうが自宅でのDAW作業にはPCからアンプを経由せずストレートに再生する環境としてスタンダードな必需品となりました。なので開発にはPCソフトメーカーや楽器メーカーの商品がメジャーどころでしたがオーディオスピーカーメーカーの老舗ブランドJBLがリリースしたものを無視はできません。
DAWでのモニタースピーカーの考え方に通常のリスニングとミックス等の作業ではポイントが全く違うと語る方は沢山さんいらっしゃいます。決まりはありませんが音の定位やミックスでの各楽器の確認などスピーカーの目の前で確認するときにベストな状態が理想のようです。確かにニアフィールドで聴いたときに大型のオーディオスピーカーだとそれなりの音量が無いと鳴りきりません。音楽の再生環境がどんどん小型化していく時代に大型フロアスピーカーに合わせたミックスだとミスマッチが起こるのも解ります。現代はトランス電源のプリメインアンプやハードウェアを介しての完成版ではなくPCから直接イヤホンで聴いたときに完成していなくてはならないので自ずからスピーカーも変化していないといけないわけです。
私もいまだに使用していますが40年以上たってもスタジオのコンソールに見かけるヤマハのNS-10もこのモニタースピーカーの中でベストセラーといわれています。小型で低音は薄く中域から高域にかけて硬く盛上がったようなトーンが逆に楽器の位置を明確にして判別しやすいとレコーディングで重宝されました。作業での小型オーディオ再生を想定してのチェックや自宅でのSN比が悪いレコードやカセットテープのようなアナログ音源をきらびやかに再生させるのにいいバランスでしたが、80年代のデジタル音源の出始めにはペラペラのトーンに驚いたものです。現行のモニタースピーカーの評価は環境や人によって全く違うのでアテになりませんが確実に言えるのは今のパワードモニタースピーカーのほうが昔のNS-10より音楽的にデータ音源を再生するにははるかに上です。とはいってもこのJBL LSR305のトーンはいたってノーマルで地味に聞こえます。よくフラットなんかと表現しますがそんな簡単なものではなく、最終的に完成版のサウンドがそのまま小音量でもスンナリ出てくるような感じ。わざとらしい解像度もなくシンバルの生音はこうだというトレブルが自然に。ローはそれなりのパワーがあって低音調整SWで最小に設定してもベースラインやバスドラの胴鳴りを再現します。デスクトップパワードスピーカーにも老舗スピーカーブランドに脈々と流れる伝統のようなトーンがしっかりあるのが恐ろしい。古いディスクや新譜も同じ質感で再生しジャンルもジャズからロックまでカバーするのがある意味業務用的なチューンナップされているようです。中国生産なのでコストパフォーマンスは大変高く、ペアでちょっとしたハイエンドオーバードライブ1個分です。現地生産に拘った某ヨーロッパメーカーの1/3の価格なのですがトーンは文句なし。
このおかげでアナログスピーカー2セット、パワード1セットのスピーカーを切り替えるためにモニターコントローラーなるものも入手。コンパクトなスタイルならMACKIE Big Knobのパッシブタイプ。原音を変化させない単純なパッシブスイッチですが若干レベルは下がります。ヴォリュームノブは滑らかでスムース。アウトが2系統なのでもう一つはパワーアンプ経由、スピーカーセレクターで2セットのパッシブスピーカーの切り替えをできるように。ラインケーブルはここ数年定番の赤いベルデン88760とノイトリックプラグ。アクティブスピーカーはそれぞれ電源が必要なので専用タップ同じ条件で電源供給します。
アナログ環境だとオーディオ的な切り口が付加価値を作り出しマニア的見解が盛り上がりましたがデジタル系の機材やパワードスピーカーはあくまで道具という位置づけが強い傾向です。樹脂やプラスチックキャビネットが多く卓越した木工技術も必要ありません。アンプとのバランスも無いのでスピーカーのセッティング方法、ラインケーブルや電源回りしかアナログ的チューンはありませんのでコストは抑えられてシンプル。オーディオを取り扱うショップにはほとんど在庫していないのでチェックはDTM売り場のある楽器店で。
よく考えてみるとCDをケースから出してプレーヤーやドライブに入れるのも最初の1回のみというのも多い今日この頃。