アコースティックギターをアンプリファイドで再生する歴史は昔からの永遠のテーマでした。70年代にオベーションの登場によりピエゾマイクというのが認識されバンドでもアコースティックギターが聞こえるという新時代になりましたが独特のトーンには好き嫌いがハッキリと。トラッドなアコギトーンはコンデンサーマイクが一番と言いたいところですがそう簡単にいかないのがアコースティックギター世界です。演奏するジャンルやバンド形態でマッチするピックアップやエフェクトが変化します。エレクトリックギターはアンプで増幅するのが前提ですがアコースティックギターは生のトーンがどうしても基準になってしまうのが複雑にしてしまう要因です。ソロ演奏や小音量、小編成だとダイナミックやコンデンサーマイクをPA経由にするのが一番ナチュラルに再生できますが、ハウリングという問題がやってきます。コンデンサーマイクは小音量でも打楽器が入るバンドスタイルになるとどうしてもシングルノートで線が細くなりアンサンブルの中に埋没するトーンに。
実験も兼ねて最近話題のピックアップを試してみることにしましょう。トライアングル型のマイクが印象的なイタリア「IK MULTIMEDIA 」のiRig Acoustic Stageというマイクとプリアンプのセット。PC経由のオーディオインターフェースにもなる優れもの。プリセットトーンやフィードバック防止のワンタッチ型ノッチフィルター、別ソースのピエゾマイク等とブレンド出来るミキサー機能も至れり尽くせり。ギター本体加工も必要ないお手軽さも素晴らしいですがバンドアンサンブルの音量的なところはマイクと同じ質感です。
ギター本体に固定するアタッチメントを使用する超単一指向性のコンデンサーマイクもナチュラルでいいのですが音量は小さくハウリングもしやすいのでソロギターや小音量のアコースティックセット用です。
結局のところある程度の音量が必要なバンドスタイルだとマグネットやピエゾマイクという選択になってしまいます。マグネットタイプとコンデンサーマイクが一体化してあるハイエンド型も最近は各社から出始めていますがそれはまた別な機会にとしてアコースティックギターの世界ではメジャーじゃありませんがやはりエレキ弾きはEMG。サウンドホールに取り付けるマグネット式のEMGのACSとアンダーブリッジ型ピエゾのAS93。その2系統のピックアップをブレンドするプリアンプのAPA-2が基本の設定でしょう。あえてナチュラルさは横に置いてハウリングやノイズが無く効率的にアコースティックギターの音を増幅するトーンはオベーションを少しナチュラルにした雰囲気。現在のプリアンプAPA-2は9V電池を使わない新しいバージョンになっていますが現在流通しているのはまだ旧バージョンです。APA-2側でアンダーブリッジのピエゾPU音量を調整できるのでブリッジとサウンドホールPUのミックス設定が可能。マグネットPUのACS本体のボリュームがマスターボリュームとして作動します。しかし、弾きながらの音量調整は難しいのでボリュームペダルが必要なところ。
線の太い独特なEMGトーンですがエレアコ特有のミッドレンジを調整するアコースティックシュミレーターのBOSS AD-2を経由させると太い存在感をの残したままナチュラルなトーンに変化します。エレアコ特有なサウンドをリアルなアコースティックトーンに変えるシュミレートも種類が豊富になってきています。最近のアコギ用マルチエフェクターやプリアンプにはほとんど搭載してあるアコースティックシュミレーターはかなりの高性能になってきています。以前はギター側のPUやEQ、コンプなどを多用して音作りをしていましたがそれがワンタッチで出来る形です。このBOSSのAD-2はナチュラル系ではなく癖が強い部類ですがEMGとは抜群の相性。PAアンプからの再生音はブライトな生音に程よいミッドがついて、音量をさほど上げなくてもシングルノートが冴えわたり、弦高を下げ目にするほうがよりアコースティック感が増えます。
ギター側の環境を整えても受けるPAやアコースティック用アンプの設定でも変化するのでバンドサウンド全体を把握しながら調整しないとアコースティックギターが一瞬にしてエレクトリックギタートーンになってしまいます。これもまた面白い分野ですね。