Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

バレル節

2012-04-19 02:04:28 | JAZZ

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ケニーバレルのブルースといえば真っ先に思い浮かぶのが「ミッドナイトブルー」。しかし、この何ともブルースなジャケットの「ラウンドミッドナイト」が最高かもしれません。プレイの後のプレイバックに耳を傾けているこの表情。いいですね。

混沌とした70年代初頭のジャズギター業界。スムースジャズの走りのCTIウエスとはブルース度合いが違います。楽器の空間が濃いコンボ演奏にジョ―サンプルのローズピアノ。その編成を聴くだけでスモーキーな質感が感じ取れます。

しかし、ギブソンアーチドトップの最高のサウンドがここにあり!。甘くアタッキーで申し分のない音とはこれです。バレルの作品はどれもギターサウンドはクリアで安心できるがこの作品は重心が低く抜群だ。決して弾きまくらず存在感がある音。ギタリストは最終的に到達したい分野です。ゴージャスで大人とはこれに決まり。

このタイトルチューンの「ラウンドミッドナイト」は歴代の名ギタリストのほとんどがプレイしている曲ですが黒さでいうとこのバレルがナンバーワンと思うのは私だけじゃないでしょう。

これを聴くとエピフォンフルアコの弦高を少し上げてピックアップも近づけてトロッとさせたくなります。

男のジャズギター!ステキだ!


ジョン・スコフィールド Piety Street

2011-02-07 13:41:10 | JAZZ

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ジョンスコフィールドの2009年「 Piety Street 」。正式にはJohn Scofield and Piety Street Bandという列記としたバンド。この由緒あるニューオリンズファンクアルバムはジョンスコを聴いてきてやっと出た!というくらいの作品だ。

還暦を迎えるのに相変わらずこの変幻自在なスタイル。マイルス門下生だから普通ではいけないのである。しかし、よく聴くとジョンスコのギター自体は何も変わらないジョンスコ節。アルバムのコンセプト、アレンジ、ミュージシャン、プロデュースを巧みに変えてもギターはそのままという度合いが近年特に強い。それはギタリストにとって究極の立ち位置でジャンル、ビートは関係ない「俺がジョンスコ」という絶対的な太いモノを感じる。

本作はほとんどがボーカルナンバーだが常に隙間をつくギターが素晴らしい。また参加ミュージシャンがこれまた凄腕重鎮ばかり。大御所ジョージ・ポーターJrや今やニューオリンズファンクの中心人物ジョンクリアリー、名手リッキーファター。メンツだけで音が聞こえてくるくらいだが内容はトラッドなゴスペルナンバーの渋い作品。演奏が素晴らしく大人の男のファンクそのもの。ミックスも素っぴんのJAMそのままの感じ。このメンツに変な仕掛けをしたら逆に怒られてしまうくらいだ。

ジョンスコ自身のギターサウンドも80年代のブリバリフュージョン時代からのコーラスサウンドも98年の「A Go Go」で終止符を打ちナチュラルなRATオーバードライブでキメめている。クレジットでVOX Ampとあるのでブギーからマッチレスを通ってVOXに落ち着いたのだろう。ボーナストラックでストラトのハーフトーン全開のジョンスコが聴けるのも面白い。

ボズスキャッグスの「Come On Home」でもいいドラムをたたいてたリッキーファターはジョンクリアリーとボニーレイットのバックバンドでの仲。なるほど、匂いのある連中はつながるのである。

ファンク人間国宝ジョージポーターJrは音数最小限でもファンクだ。グルーブさせるとかいう次元じゃなく、頭に1音乗せるだけで完結する。各楽器を空気のように包み込むベース。この領域はすでに世界遺産だ。

内容はアメリカのルーツミュージックだがどことなくタッチが違うのはピアノとヴォーカルのジョン・クリアリーがイギリス人ということもあるのか。ラテンやカントリー、ファンクフレーバーがある上質なアメリカンロックのバックをジョンスコがプレイしている図式に近いがジョンスコのリーダー作。

アルバムコンセプトや中身がひじょうに高い次元でプロデュースされていてこれまた大変音楽マニア向けのアルバムだ。

じんわりと体温が上がる何回も聴けるアルバム。


バーニーケッセル

2008-10-22 23:38:47 | JAZZ

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ウエスト・コースト・ジャズの名作を生み出していたコンテンポラリーの企画盤「ザ・ポールウィナーズ」。50年代の後半と75年の計5作がリリースされた名盤。50年代とは思えぬオンマイクのクリアな録音。この時期のジャズの名盤はオフマイキングのスモーキーなトーンの名作がたくさんあるが、リズムセクションとギターがこんなに近くに聴こえる録音はコンテンポラリー特有の音である。 名手3人が対等の立場で繰り広げるアンサンブル。狭いスタジオでお互いの呼吸を感じながらのようなJamは実にスリリングだ。

しかし、チャーリークリスチャン直系のあまりにも王道のスタンダードスタイルにブルース、ロック系からきたギタリストからには最初、過小評価されてしまう。この時代のお約束のポピュラーミュージックやファンクに傾倒することやモードやフリージャズにも目もくれずとことんスウィング、バップに拘ったスタイル。ジャズギターは時代と録音技術革新により70年代に入ってトーンはモダンになっていったがケッセルの音は40年代から変わらない。ゴージャズなフルアコースティックトーンのよりウッドの多い響きだ。

ビックバンドでの経験からリズムは躍動的で決して沈まない。それはデュオのようなドラムレスでもリズムが切れている。強烈にスウィングするケッセルのスピード感はコードバッキングからシングルノートで加速する。ついジャズギターにはドロッとしたブルースフィーリングを求めてしまうが、ケッセルの滑らかなフレーズの中に入り込むベンドするペンタトニックはかなり黒い。また豊富なコードフレーズはジャズギターを弾くものにとっての憧れだ。甘いトーンの中にアタッキーなトーン。シングルPUのギブソンL-5もトレードマークだがやはりダブルカッタウェイのバーニーケッセルモデルはインパクトが強い。こう聴くとシングルPUでもハムバッキングPUでも同じ音を出しているからポイントはテクニックということを実感する。

気のせいかもしれないがこの人のアルバムジャケットに金髪の美人が多く登場する。マリリンモンローの映画音楽を手がけたりでそちらもナイスで81歳まで長生きしたのも納得だ。最近出たケニーバレルの75歳を祝ってのアルバムもバリバリだしジャズギタリストは歳とともにスピードが増すのだろうか。

ウエスモンゴメリーも生前インタビューでケッセルを絶賛している。あの華麗なスピード感とフレージングは絶対だ。

どう練習するとあんなに弾けるのか。早速メソッドDVD購入しなきゃ。


パット・マルティーノ

2008-10-09 21:28:29 | JAZZ

イースト!

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パットマルティーノ1968年リリースの「イースト」。ジャケットと時代から宗教的フリージャズのような印象だが中身はいたってストレートジャズ。

数年前にジャズギターの先生をやっている人からパットの教則ビデオを借りた。素晴らしい高速ピッキングとファットでザラついたいい音のギターだった。しかし、最近パットに目覚めてしまった。90年代後半のフュージョンスタイルのころはピンと来なかったが、60年代から70年代のものは凄い。70年代の名作「イグジット」の前の脂の乗ったプレイ。極太なフルアコサウンドが味わえる。

ウエスモンゴメリー直系でシングルノートのラインは素晴らしい。滑らか過ぎるフレージングは毒がなくなる事が多いが、パットの場合は音のアタックの力強さが凄い。

へヴィーゲージを大理石のピックで弾きこむ。一度やってみようかな。