ジョンスコフィールドの2009年「 Piety Street 」。正式にはJohn Scofield and Piety Street Bandという列記としたバンド。この由緒あるニューオリンズファンクアルバムはジョンスコを聴いてきてやっと出た!というくらいの作品だ。
還暦を迎えるのに相変わらずこの変幻自在なスタイル。マイルス門下生だから普通ではいけないのである。しかし、よく聴くとジョンスコのギター自体は何も変わらないジョンスコ節。アルバムのコンセプト、アレンジ、ミュージシャン、プロデュースを巧みに変えてもギターはそのままという度合いが近年特に強い。それはギタリストにとって究極の立ち位置でジャンル、ビートは関係ない「俺がジョンスコ」という絶対的な太いモノを感じる。
本作はほとんどがボーカルナンバーだが常に隙間をつくギターが素晴らしい。また参加ミュージシャンがこれまた凄腕重鎮ばかり。大御所ジョージ・ポーターJrや今やニューオリンズファンクの中心人物ジョンクリアリー、名手リッキーファター。メンツだけで音が聞こえてくるくらいだが内容はトラッドなゴスペルナンバーの渋い作品。演奏が素晴らしく大人の男のファンクそのもの。ミックスも素っぴんのJAMそのままの感じ。このメンツに変な仕掛けをしたら逆に怒られてしまうくらいだ。
ジョンスコ自身のギターサウンドも80年代のブリバリフュージョン時代からのコーラスサウンドも98年の「A Go Go」で終止符を打ちナチュラルなRATオーバードライブでキメめている。クレジットでVOX Ampとあるのでブギーからマッチレスを通ってVOXに落ち着いたのだろう。ボーナストラックでストラトのハーフトーン全開のジョンスコが聴けるのも面白い。
ボズスキャッグスの「Come On Home」でもいいドラムをたたいてたリッキーファターはジョンクリアリーとボニーレイットのバックバンドでの仲。なるほど、匂いのある連中はつながるのである。
ファンク人間国宝ジョージポーターJrは音数最小限でもファンクだ。グルーブさせるとかいう次元じゃなく、頭に1音乗せるだけで完結する。各楽器を空気のように包み込むベース。この領域はすでに世界遺産だ。
内容はアメリカのルーツミュージックだがどことなくタッチが違うのはピアノとヴォーカルのジョン・クリアリーがイギリス人ということもあるのか。ラテンやカントリー、ファンクフレーバーがある上質なアメリカンロックのバックをジョンスコがプレイしている図式に近いがジョンスコのリーダー作。
アルバムコンセプトや中身がひじょうに高い次元でプロデュースされていてこれまた大変音楽マニア向けのアルバムだ。
じんわりと体温が上がる何回も聴けるアルバム。