チューブアンプの原点回帰とも言うような最小限のレイアウトでチューブトーンを満喫できるアンプがこのボブバートカスタムアンプ。ボブバートといえばランドグラフ直系のハイエンドペダルメーカーとして有名ですが本業はアンプキャビネット製作。この個体は6V6GT、12AX7、5Y3各1本のフェンダーチャンプやプリンストンスタイルのオリジナルアンプです。キャビネットはデラックスより一回り大きく12インチスピーカーがゆったりと鎮座する雰囲気で無垢マホガニー単板をフィンガージョイントで組上げた渋い一品。
アンプ部はハンドメイド感満載のPTP配線がビンテージ感を盛り上げます。コントロールは1V1Tのシンプルなレイアウト。5W前後の出力ですが12インチスピーカーとオープンバックのキャビネットからエアー感のあるゆとりのある音量で、決して部屋での練習用アンプではありません。整流管と6V6、1本なので小音量でもヘッドルームに薄っすらとコンプレッションかかり心地いい弾き心地で音量を上げるとディストーションが抑え気味のナチュラルなサスティーンの上質クランチがやってきて、コンプ感の少ないブースター系のペダルがあれば更に粘ります。ストラトキャスターのリアPUが極太で出力されますが、ハムバッカーもスムースに鳴ってくれるのは余計なチャンネルやエフェクトが無く真空管オンリーのヘッドルームの仕業でしょう。
フェンダー直系のミッドレンジに比重を置いたトーンセッティングなのでスピーカーをブルーススタイルのエミネンスではなくシンプルなアルニコスピーカーが程よく輪郭がシャープになるかもしれません。チューンナップを施したくなるアンプですがもう少しオリジナルのトーンを探っていきます。
レオフェンダーがツイードアンプをデザインした時点でエレクトリックギターのおいしいトーンは既に決まっていました。この基本になるシングルエンドアンプの構造を変えずにキャビネット容量、スピーカー形状で様々なバリエーションモデルを作っていったというのも豪華な時代。これはブラックフェイス登場の60年代からも統一感がありフェンダーアンプのイメージに絶対的なものをもたらしました。同じチューブレイアウトでもスピーカーのインチ違いで別なネーミングのアンプが存在するところにフェンダーアンプ地獄を誘発してしまった事実もありますが。
現行のアンプキャビネットのほとんどがMDF等の集成材系ですがフェンダーは70年代までパイン単板キャビネットのフィンガージョイント工法、バッフル板は合板のスタイルにこだわりました。それが立上りの早いフェンダートーンの基になっています。マーシャルアンプがバーチ合板を使い続けたのもトーンを維持する理由の一つでしょう。単板のキャビネットに貼り付けたツイードやトーレックスの柔軟性のあるカバーリングは耐久性を求められる旅行ケースにヒントを得た発想。それはレオフェンダー特有の実用性と洒落かもしれませんね。