Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

HERCO flex75 50

2021-07-16 10:21:20 | PICK

70年代後半からギターを弾き始めた人はピンと来ないギターピックが伝説のHERCO。60年代から活躍するギターレジェンドたちのお約束ピックですが当時はこれしか無いのと1枚25円程の値段がそうさせたかもしれません。

古くは戦前のアメリカのダンドレア社のセルロイドピックが化学素材のハシリのようですが1940年創業のハーシュマン楽器が1960年代に入ってナイロン製のピックとして作ったのがHERCOブランド。1966年にリリースしたボールゴールドがflex50、ハイヨーシルバーがflex75としてヒットしたのがその後のギターレジェンドたちのフェイバリットになったのとリンクします。海外での流通とは違い、70年代後半日本国内でHERCOピックを見かけたことは記憶にありません。ギター周辺アクセサリー製造の製造元は日本というのが60~70年代がピークで国内メーカーのピックが充実していてあえて海外のアクセサリーを輸入する必要も無かったのでしょう。事実、HERCOの鼈甲タイプピックは日本製だったようです。

海外でも少し遅れて1965年、スコットランドからカリフォルニアに移って立ち上ったのが現在の最大手ジムダンロップ。1992年にHERCOブランドを吸収しやっと世界で流通するようになりました。現在でも活躍の大御所ギタリスト等の若いころのインタビュー記事でも使っているピックは「ハーコの金、ヘルコの銀」なんていうのを読んでいた世代がオジサンになってやっと嗜むことができるようになりました。

新素材、新形状のハイエンドピックで溢れかえっている今日、自身もピックマニアとして地獄を彷徨っていますがこのHERCO flexを使ってみると今までいかにピックで弾かされているかを確認できます。スピード感、弦離れ、トーン等をピックに委ねること自体が違って見えてきます。さて、このHERCOはというとflex75が厚さ約1mm、flex50が0.6mmと数値よりかなり薄く柔らかいタッチでスタンダードのティアドロップ型と若干異なるスタイル。弦に引っ掛かるストレスが無くコンプ感があって無駄なパワーを弦に与えない感じです。アコースティックギターのストロークにはもちろん最高。ですが太いロックの音がするのは丸く形成された先が柔らかいのがいいのかもしれません。滑らかに太いトーンを求めるとピックと弦を平行に、鋭いアタックやスピードを出す場合角度を付けてヒットするといいですね。鋭く硬く厚いハイエンドピックはスピードを求めても右手の力が少なく済みますが音量は少な目、HERCOは滑らかなで音量は豊富にダイナミクスをコントロールできます。そして、驚きは耐久性。薄く柔らかいのに全く研磨されないのはナイロンプラスチックの配合由来か謎です。グリップメッシュが握りをタイトにしてどのフォームでも角度調整にも不思議とストレスを感じ取ることはありません。

60年代当時の形状、厚さ硬さを復刻したモデルも数種類出ていますが基本は厚さ違いのナイロンピック。調べていくと自身が影響を受けたギタリストのほとんどがこのHERCOを使っていたことが判明し、音の太さ、トーンとピックの硬さは関係ないことを再確認しました。KISSのジーンシモンズがflex75をシグネチャーモデルにしているのも最高です。

自分に合うピックを探すよりピックに弾き方を合わせたくなるピックに出会った感じとも言えますね。


JAZZ3 考察2 TUSQ pick

2020-03-27 18:00:42 | PICK

JAZZⅢばかりでウルサク申し訳ございません。小さいピックになればなるほど材質、形状、厚さで弾き心地が大幅に変化します。前回でも書きましたが、あるようでなかったセルロイドのJAZZスタイル・ダンドレアPro PlecをスタンダードJAZZⅢのように作り変えます。最近は手軽にピックをカットするアイテムも出ていますが1mm用なので厚い素材は出来ません。JAZZⅢの形状が一番シックリくるのですがジムダンロップ自ら形をアレンジしてしまっていますから複雑なところに陥ります。となると自分でJAZZⅢを再現するしかありません。昔使った金属ピックの一番加工しやすいブラスをJAZZⅢ形状に作り替えてそれを型に様々なピックを加工してみます。

ティアドロップのアクリルや昔の鼈甲ピック等をJAZZⅢにアレンジしましたが結構大変です。先の部分のカットはアタックやトーンに影響を与えますがスモールピックになればなるほど両サイドの肩の部分の形状で持った弾き心地がかなり変わります。それはピックの握り方にもよりますが逆アングルのように握るよりツマム感じになればなるほど収まり方の違いを感じます。

そこで以前から気になっていたアコースティックギターのナットやブリッジで有名なタスクのピックのティアドロップを入手。ティアドロップでもJAZZⅢのようなスモールタイプ。このタスクピックは特殊な熱硬化樹脂のようで本体自体が金属的な硬い乾いたトーンなので0.8mmのうすいピックでアコースティックギターのストロークを弾くといい効果が表れます。エレクトリックギターでそのあたりのインパクトは少ないですがスタンダードJAZZⅢに近い1.4mm厚のものが良いでしょう。オリジナルJAZZⅢは1.38mmのナイロンなので柔らかく感じますが同じような厚さで硬い材質が無かったのでこのタスクはかなりお勧めです。形状は肩の部分が滑らかに落とされた感じ。逆アングルではピック先が人差し指と同じ方向を向くポジションだとザラッとした倍音が多く出るトーンになります。3種類のカラーがあり厚さは同じですが樹脂の粒子の違いでアタック音に変化が出る感じでしょうか。耐久性は高くないですが先が丸くなってからのトーンが長くいい感じになるのはチキンピックスに通じるニュアンスがあります。


JAZZ PICK 考察

2019-09-11 17:59:18 | PICK

油断していたら面白いピックがたくさんリリースされていました。ここ最近はチキンピックオンリーでしたがJAZZⅢスタイルのニューカマーが盛りだくさん。ウルテムや樹脂系新素材等ひと昔前だとありえなかったくらい種類も豊富です。ネタも尽きたところで石や硬い木材、骨、角等の自然素材を用いたモノまで登場する始末。これらも一見ワイルドですが考えられたエッジカットで大変滑らかで弾きやすくトーンも最高。

ピックの真ん中がくぼんだ黒いのがイタリア製EssetipicksというピックのZIRIYAB 、EASY、HEARTの3種類。防弾チョッキに使われる軽量で硬いケブラー繊維というもので作られていて、弾き込んだようなサイドエッジの削れ方は弦に対してアングルの付いたピッキングをしても平行にヒットするような工夫がされています。スタンダード角度とレフティ又は逆アングル用の2パターンをチェックしないと使えないピックになってしまうのが要注意。ピッキングスピードは出ますが様々なピッキングスタイルを瞬時に変えたりするギタリストには難しいかもしれません。おいしいポイントを探るには時間がかかるタイプの代物でしょう。

今まであったようでなかったアクリル素材のピックですがそれをメジャーにしたのがVピック。常識外の形状のイメージを覆す自然な弾き心地は病みつきになりますが同じアクリルを使ってスタンダードな形状で作ったのがグラビティです。最近は同じくダダリオからも1.5mmアクリルのAcryluxシリーズが出たりとアクリル素材が熱いですね。アクリルは硬くメリハリがあるブライトなトーンでタッチによるトーン調整もスムースです。アクリルでいうスタンダードな厚さの1.5mmはグラビティ、ダダリオの両ブランドから出ていますが若干グラビティのほうが厚みがあり、JAZZⅢでも形状が違います。ジムダンロップのJAZZⅢ愛好者は形状は良いですが少し柔らかいナイロン素材に満足できないギタリストが待ち望んだようなのがグラビティ003シリーズ。レッドが1.5mm、ブルーが2mm、オレンジ3mmと見やすく色分けされています。厚いピックにありがちな硬いアタック音が少なく厚くなるにしたがって丸いトーンになっていきます。ピックの弦にあてる角度を同じでも弾き心地が変わらないのはピックサイドの研磨角度が素晴らしい証拠です。

 

そんなグラビティピックもアクリル素材に飽き足らずゴールドシリーズという3年にわたって開発した新素材を使ったモデルまで出してしまいました。価格もアクリルの5倍のハイエンド。その割にルックスはよろしくないロゴマークとカフェオレのようなカラー。弾き心地、トーンはアクリルとチキンピックの中間の立ち位置ですがタッチが柔らかいのに音がスピーディーに立ち上がる不思議な感覚。どんな握りでも馴染むエッジ処理はハイエンドを納得させるレベルにあります。厚い2.5mのほうがマイルドなトーンでピッキングにかかる質感は1.5mmと違いが無いという不思議な感覚。このゴールドシリーズ・003Miniの形状は忠実に元祖ジムダンロップのJAZZⅢを再現しています。この形状もJAZZⅢスタンダードとエリックジョンソンモデルとは微妙に形状が違い弾き心地は全く違い、ウルテム素材のJAZZⅢは全てエリックジョンソンモデルの形状を元にしています。最近ジムダンロップで出したプライムトーンはオリジナルJAZZⅢのスタイルにハンドメイドでエッジ加工されてこれも素晴らしいモデル。

小振りなJAZZⅢスタイルは厚さが0.01mm違いで雰囲気がガラッと変化します。同じ素材のナイロンでも色によって違いがあったり素材で硬さが変わるのでいろいろと試さないと選ぶことが難しいのが小さいピックですね。流行りのウルテムもいいですがスタンダードのJAZZⅢの厚いセルロイドがありません。最古のピック素材セルロイドは意外とフラットなトーンで好きなのですが厚い小振りなセルロイドとなるとダンドレアPro PlecのJAZZモデルしか見当たりません。丸みのあるカットでスタンダード1.5mmをラフな感じで握り込むJAZZスタイルのピッキングにマッチしそうです。老舗フェンダーからもウルテム素材でJAZZスタイルも出していますが薄くちょっとハズレ感あり。個人的にはやはりフェンダーはセルロイドで作ってほしいものです。