70年代後半からギターを弾き始めた人はピンと来ないギターピックが伝説のHERCO。60年代から活躍するギターレジェンドたちのお約束ピックですが当時はこれしか無いのと1枚25円程の値段がそうさせたかもしれません。
古くは戦前のアメリカのダンドレア社のセルロイドピックが化学素材のハシリのようですが1940年創業のハーシュマン楽器が1960年代に入ってナイロン製のピックとして作ったのがHERCOブランド。1966年にリリースしたボールゴールドがflex50、ハイヨーシルバーがflex75としてヒットしたのがその後のギターレジェンドたちのフェイバリットになったのとリンクします。海外での流通とは違い、70年代後半日本国内でHERCOピックを見かけたことは記憶にありません。ギター周辺アクセサリー製造の製造元は日本というのが60~70年代がピークで国内メーカーのピックが充実していてあえて海外のアクセサリーを輸入する必要も無かったのでしょう。事実、HERCOの鼈甲タイプピックは日本製だったようです。
海外でも少し遅れて1965年、スコットランドからカリフォルニアに移って立ち上ったのが現在の最大手ジムダンロップ。1992年にHERCOブランドを吸収しやっと世界で流通するようになりました。現在でも活躍の大御所ギタリスト等の若いころのインタビュー記事でも使っているピックは「ハーコの金、ヘルコの銀」なんていうのを読んでいた世代がオジサンになってやっと嗜むことができるようになりました。
新素材、新形状のハイエンドピックで溢れかえっている今日、自身もピックマニアとして地獄を彷徨っていますがこのHERCO flexを使ってみると今までいかにピックで弾かされているかを確認できます。スピード感、弦離れ、トーン等をピックに委ねること自体が違って見えてきます。さて、このHERCOはというとflex75が厚さ約1mm、flex50が0.6mmと数値よりかなり薄く柔らかいタッチでスタンダードのティアドロップ型と若干異なるスタイル。弦に引っ掛かるストレスが無くコンプ感があって無駄なパワーを弦に与えない感じです。アコースティックギターのストロークにはもちろん最高。ですが太いロックの音がするのは丸く形成された先が柔らかいのがいいのかもしれません。滑らかに太いトーンを求めるとピックと弦を平行に、鋭いアタックやスピードを出す場合角度を付けてヒットするといいですね。鋭く硬く厚いハイエンドピックはスピードを求めても右手の力が少なく済みますが音量は少な目、HERCOは滑らかなで音量は豊富にダイナミクスをコントロールできます。そして、驚きは耐久性。薄く柔らかいのに全く研磨されないのはナイロンプラスチックの配合由来か謎です。グリップメッシュが握りをタイトにしてどのフォームでも角度調整にも不思議とストレスを感じ取ることはありません。
60年代当時の形状、厚さ硬さを復刻したモデルも数種類出ていますが基本は厚さ違いのナイロンピック。調べていくと自身が影響を受けたギタリストのほとんどがこのHERCOを使っていたことが判明し、音の太さ、トーンとピックの硬さは関係ないことを再確認しました。KISSのジーンシモンズがflex75をシグネチャーモデルにしているのも最高です。
自分に合うピックを探すよりピックに弾き方を合わせたくなるピックに出会った感じとも言えますね。