かれこれ10年以上共にしているトーカイシルバースター。10年の間にPU等のアッセンブリーはすべて交換しほどんどフェンダーなのですがネック、ボディはトーカイそのまま。なんだかフェンダー以上にストラト臭さ満載でフレットも滑らかに低くなっていいコンディションになっています。ジャパンビンテージ等と持ち上げる気はありませんが一生懸命に本家フェンダーを研究した形跡を随所に見受けられるのがこのトーカイシルバースター。フェンダーに永く在籍しピックアップ製造をされていたアビゲイル・イバラ女史が巻いたか監修したかのカスタム69PUが適度に雑味もあってバイト感満載です。
90年代に最大の売り上げを上げていた楽器業界もそれ以降販売網の再編や需要の低下から近年老舗メーカーの間違った戦略を引き起こしブランド消滅の危機を招いたりと混沌としています。本家の分野以外の事業を吸収したり超定番のギターに法外な付加価値を付けた価格のモデルをリリースしたりとそれらはメーカー自体の引き起こした要因が大。エレクトリックギターの始まりは誰もが手にできる手軽な楽器が本質ですがクラシック音楽で使われるような手作りの楽器のような付加価値を付けた時点で本来の意味が変わります。メーカー側は販売金額を上げるためにローコストとハイエンドの商品開発に走り過ぎて定番のスタンダード商品の価値を下げてしまったことに一番の問題があります。70年代からコスト削減の代償から品質の低下、小規模ハイエンドメーカーの乱立で選択肢が増えた分魅力のある楽器が薄まっていった方向になっていきました。老舗メーカーは歴史がある分自らのスタンダードを復刻しましたがそれもおかしな価格のハイエンドモデルを出してしまう始末。50~60年代の過去のスタンダードを普通に復刻すればいいのに変な言い訳のようなストーリーとレリック処理で何倍もの価格設定がシラケる原因を自ら作ってしまいました。コアな話題の「ウエイトリリーフ」は要するに騙し商売。レスポールはソリッドギターなのに重量調整の秘密の穴を開けていたなんて大変なことです。もっともらしく70年代後半から普通にしていたようですがそれらが数十年おきに度々やってくる経営困難の要因だと理解できない米国的商売なのでしょう。嘘をつかない普通の材料で開発された当時の仕様で適正な価格で製造販売していればユーザー離れを起こさないはずなのに。楽器業界の乏しいアイディアでは普通のボッタクリ手法と同じなのです。単純に単価を上げたいだけの「何とかリミテッドラン」とか巨大メーカーの中の一部の職人が手作りしたとかで2倍もする価格の同じストラトやレスポールがあること自体が悪の根源なのです。老舗メーカーの古き良きスタンダードを独自に解釈したハイエンドメーカーは素晴らしいですが老舗メーカー自らのスタンダードを勝手にハイエンドに仕立て上げた瞬間に定番のスタンダードを否定するスタンスに変化してしまいます。そのように過去の遺産にしがみついて何も生み出せ無かったメーカーが衰退の一途をたどるということですが同じことを繰り返してしまうのがこの業界の悪い癖。
ペダルで有名な日本の世界基準メーカーも自社製品の復刻を否定し常に新しいモデルの開発に特化していましたが、その掟を破りリイッシュや他社とのコラボ製品をリリースしたりと業界全体がネタ切れの方向に行っているのは事実でしょうね。