Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

Silver Star

2018-05-29 13:59:47 | Column

かれこれ10年以上共にしているトーカイシルバースター。10年の間にPU等のアッセンブリーはすべて交換しほどんどフェンダーなのですがネック、ボディはトーカイそのまま。なんだかフェンダー以上にストラト臭さ満載でフレットも滑らかに低くなっていいコンディションになっています。ジャパンビンテージ等と持ち上げる気はありませんが一生懸命に本家フェンダーを研究した形跡を随所に見受けられるのがこのトーカイシルバースター。フェンダーに永く在籍しピックアップ製造をされていたアビゲイル・イバラ女史が巻いたか監修したかのカスタム69PUが適度に雑味もあってバイト感満載です。

90年代に最大の売り上げを上げていた楽器業界もそれ以降販売網の再編や需要の低下から近年老舗メーカーの間違った戦略を引き起こしブランド消滅の危機を招いたりと混沌としています。本家の分野以外の事業を吸収したり超定番のギターに法外な付加価値を付けた価格のモデルをリリースしたりとそれらはメーカー自体の引き起こした要因が大。エレクトリックギターの始まりは誰もが手にできる手軽な楽器が本質ですがクラシック音楽で使われるような手作りの楽器のような付加価値を付けた時点で本来の意味が変わります。メーカー側は販売金額を上げるためにローコストとハイエンドの商品開発に走り過ぎて定番のスタンダード商品の価値を下げてしまったことに一番の問題があります。70年代からコスト削減の代償から品質の低下、小規模ハイエンドメーカーの乱立で選択肢が増えた分魅力のある楽器が薄まっていった方向になっていきました。老舗メーカーは歴史がある分自らのスタンダードを復刻しましたがそれもおかしな価格のハイエンドモデルを出してしまう始末。50~60年代の過去のスタンダードを普通に復刻すればいいのに変な言い訳のようなストーリーとレリック処理で何倍もの価格設定がシラケる原因を自ら作ってしまいました。コアな話題の「ウエイトリリーフ」は要するに騙し商売。レスポールはソリッドギターなのに重量調整の秘密の穴を開けていたなんて大変なことです。もっともらしく70年代後半から普通にしていたようですがそれらが数十年おきに度々やってくる経営困難の要因だと理解できない米国的商売なのでしょう。嘘をつかない普通の材料で開発された当時の仕様で適正な価格で製造販売していればユーザー離れを起こさないはずなのに。楽器業界の乏しいアイディアでは普通のボッタクリ手法と同じなのです。単純に単価を上げたいだけの「何とかリミテッドラン」とか巨大メーカーの中の一部の職人が手作りしたとかで2倍もする価格の同じストラトやレスポールがあること自体が悪の根源なのです。老舗メーカーの古き良きスタンダードを独自に解釈したハイエンドメーカーは素晴らしいですが老舗メーカー自らのスタンダードを勝手にハイエンドに仕立て上げた瞬間に定番のスタンダードを否定するスタンスに変化してしまいます。そのように過去の遺産にしがみついて何も生み出せ無かったメーカーが衰退の一途をたどるということですが同じことを繰り返してしまうのがこの業界の悪い癖。

ペダルで有名な日本の世界基準メーカーも自社製品の復刻を否定し常に新しいモデルの開発に特化していましたが、その掟を破りリイッシュや他社とのコラボ製品をリリースしたりと業界全体がネタ切れの方向に行っているのは事実でしょうね。

 

 


ピックアップアジャスト

2018-03-26 15:15:00 | Column

弦のゲージやピックを変えたりするとピックアップの高さの調整は定期的にイジリたくなるものです。このスタインバーガーシナプスのPUはボディにダイレクトマウントなのでスプリング機能はウレタンスポンジ。これが経年劣化で硬化し調整不能になりました。ビンテージフェンダーのジャズベースやプレジッションベースによくあるヤツです。スペーサーの硬質スポンジはEMGのケーブルコネクターのクリアランスも想定して2段重ねで対応します。このウレタンスポンジスペーサーは劣化するデメリット以外はPUの共鳴振動を制御しタイトな取付が可能。弦との微妙な距離のアジャスト設定出来たりとメリットのほうが大きいような気がします。

世に出ているピックアップのほとんどがビンテージフェンダー、ギブソンを世襲しています。その中で異色なのがやはりEMG。ピックアップの本体の中にプリアンプが内蔵されているのは他に見当たりません。ビンテージ推奨のパッシブ派はEMGにあまりいいイメージを持ちませんが、弱い磁力が限りなくPUと弦を近づけられるのでそのセッティング幅はワイドレンジ。軽くクランチさせた独特なコンプレッション感が無限大のピッキングダイナミクスを表現できます。この質感に慣れてしまうと無意味にハイパワーなパッシブPUの雑味が気になってしまいます。このスタインバーガーシナプスはEMGラインナップの中では比較的ビンテージライクな定番の85をフロントとリアに配置。耳障りではないですが濃厚なミッドレンジが多彩なセッティングを可能にします。2個のPUを弦との距離でバランスを取り多彩なセンターミックストーンを作れる醍醐味も。EMGは弦とPUの距離でパッシブ的なトーンやアクティブの質感、ダイナミクスコントロールまで演出できるので一石二鳥なPU。

70年代にデビューしたスタインバーガーはファイバーボディ&ネック、EMGピックアップと最先端のスタイルでしたが、24フレット仕様なのがどうしてもフロントPUがブリッジ寄りのトーンになってしまいます。80年代からの様々な24フレット仕様のギターはどうしてもフロントPUが中途半端なトーン。レスポール、ストラト、テレキャスター等の24フレット上にフロントPUのポールピースを持ってくるスタンダードスタイルはフロントピックアップを芳醇なハーモニクスを含んだトーンで歌わせることが出来ます。なのでこの22フレットのシナプスはビンテージトーンを想定したオールメープルのスタインバーガーということになるでしょう。

フロントPUの取付位置はギターのデザイン上決まりはありません。しかし、フロントPU単体で弾き倒せるトーンの位置は24フレット上に決まってきます。ハムバッカーは縦の距離があるのでPUのどこかが24フレット上にかかればそれなりのトーンになりますが、コンパクトなシングルPUのオイシイ位置は必然的にタイトになってきます。

24フレット付近のハーモニクスポイントにフロントPUを配置するのが学術的にベストとは書いてありませんがクリーン、クランチ、ディストーションの全てを含めた素晴らしい音ということに間違いはありません。長い間スタンダードと言われるモデルのほとんどがこの法則になっていますし2PUスタイルはミックストーンも重要なのでPU配置と高さはギターの重要なキャラクターの基礎になります。しかし、50年代にレオフェンダーやテッドマッカーティーはデザインとトーンの両方を同時進行で作り上げていったことに驚きしかありませんね。


モディファイペダル論争

2017-11-09 13:31:10 | Column

楽器業界不況といわれる昨今、購買数の減少、販売ルートの変化、楽器店廃業、ネタ切れ等の諸事情によりメーカーや販売店は様々な試行錯誤を繰り返し面白い状況になってきています。情報が楽器店と専門雑誌だけだった昔と違いネットでダイレクトな情報が入りますが怪しいモノも盛りだくさん。個人工房のご当地ペダルや南米、東欧諸国のハンドメイドものまで。さて、大手メーカーの人気ペダルに細工をして付加価値を付け販売するモディファイなるものが一つのジャンルとして確立しています。人気スタンダードモデルの音がさらに良くなっているなんて夢のような話です。しかし、これは人気ペダルを元にしないと全く意味がありません。ユーザーは元々のペダルのイメージが重要なので全く同じ基板を別のケースに入れて販売しても見向きもしません。基本スタイルはオリジナルのトーンの欠点を克服したようなレンジの変更や別のモードの切り替えSWを付けたりするのがパターン。手に入らない絶版したモデルを完全に復刻して音が同じでも見栄えが違うと今一つと難しいのがペダルの微妙な世界なのです。

少し前に有名ギタリストの機材チューンナップをしているメーカーが仕入れた他社のペダルにそのチューンナップメーカーのロゴを張り付けただけで高額で販売し問題になりました。また、国内でも大手販売店オリジナルのペダルがローコストのアジアン製ペダルのパーツを1つだけ変えただけというスピリチャルなチューンで販売して問題にもなりました。エンドース契約しているギタリストはお金やイメージが絡むので大変ですが、それらに対して批判的なサイトや意見も多数有りますが、しかし、重要なのは改造しているということです。純正品に手を加えているその時点で中身がオリジナルとは違い、価格のアップも承知で購入した後で騙した騙されたといってもしょうがない話です。そのあたりの良さや違いが判別できなければむやみにモディファイモノに手を出すのは危険です。逆に安全でクリーン、保証もバッチリなモディファイペダルのほうが魅力を感じ無いところが奥深い。名機といわれるペダルはスペック以上に何かひきつける魅力があります。誰もファズフェイスやビンテージビックマフの基板を見てボッタクリだ!と言いませんし。

チューナップをして音が100%良くなるとは限りません。ユーザーはモディファイペダルに対して高額なコストをかけた分、音が良くなったと満足します。そのチューンナップがどこまでのものだったら満足するかです。音がいいと思っても中を開けたらコンデンサー1個とホットボンドだけなら急に腹が立ってきて音は二の次になってしまったり、正当な開発者やビルダーの保護、ネガティブイメージから市場規模の縮小まで危惧する意見も。しかし、それに対してとやかく言うのもひじょうにナンセンスな話。モディファイは結局、売れ筋の人気ペダルのブランド力があるから商売になるのです。モディファイメーカーがオリジナルペダルをリリースしても音は素晴らしいですが魅力が今一つ足りません。ブティックペダルとはいえオーバードライブあたりの回路自体大手メーカーの開発した元ネタを脈々と受け継いでいるものです。ギタリスト側もいろいろな機材環境があるのでモディファイペダルがいい場合とダメなパターンも出てきます。改造し過ぎて別物になるとそれはそれでアウトですしニュアンスが難しいのです。チューンの目的を音質向上と言いますがそれ自体にも意味があるのかが疑問です。音の良し悪しの判断はそれぞれですしケンタウルスとBD-2と比べても使い勝手はどちらも素晴らしいですし。

ペダルは生活家電と違い中身のスペックとギタリストの満足度合いは別物です。謎のボックスとして回路をホットボンドでマスキングするのはモディファイ、オリジナルペダルとしてのチャームポイントの一つでしょう。最近はコンデンサーの乗数やパーツウンチクをうたっているメーカーもありますがそれを全て黒く塗り固めて語らないほうが個人的に好きですね。


ナショナル 30QC

2016-09-01 13:58:07 | Column

珍しくこのブログのテーマと違うアイテムの登場です。スぺクトラム5繋がりの昭和レトロ。楽器のビンテージはいいですが家電のビンテージはダメというお達しの雰囲気が漂っていますのでお勧めはできませんけど。自分が生まれる前から稼働していた代物でいまだ現役という恐ろしいナショナル扇風機。オシャレなカフェのインテリアにはちょっと厳しいルックスですが、自動首ふり、高さの無段階調整、風量調節のピアノスイッチとスペック的には問題が全くありません。驚くのが静かさ。音楽を小音量でも難なく聴き取れます。中間の風量でもほとんど音がしません。それでいて豊富な風量。この扇風機自体の重量が8kgちかく今に基準ではアウトですがこのオールスチール製の重量が安定感と静けさの秘訣かもしれません。

本体裏のラベルにはType30QCとありパナソニックのサイトでも1962年製と判別しました。メーカーとしてはそんな54年前の商品は使ってくれるなと言いたいところでしょうけど。昭和37年製となると東京オリンピック前の日本が最も発展した時期でメーカーもどの分野でも本気モードで製品をクリエイトしていたようです。ただ風を出すだけのマシンですが窓からの自然な風の流れを人工的に作り出すかを試行錯誤していたのをうかがえます。夏場の1ヶ月間しか使用しないので劣化も防げたのでしょうが完成度の高さには驚きです。海外メーカーの新しい扇風機もいくつか使っていましたが実家で現役のこの30QCの静かさを再確認し最新式とトレードし数年前に連れて帰ってきました。コンパクトさには欠けますが商品名が「お座敷扇」という洒落たネーミング。当時の販売価格が1万円オーバーということは現在の換算で20万ということらしいですね。現行のツインリバーブと同じ。

この暑い時期に狭い書斎でチューブアンプなんか使うと必需です。


Ultex Jazz Ⅲ2.0

2015-07-10 10:19:34 | Column

ペダルも深い世界ですが、保守的パーツの代表のピックもこれまたキリがありません。スタンダードの赤いJAZZⅢが定番になったと思いきや最近はもっぱらこの黒いULTEX JAZZⅢ。フラットではなくピック中心が2.6mm、外側1.2mmという変形でこれが実に持ちやすい。スタンダードJAZZⅢより一回り大きいエリックジョンソンモデルに近いですが肩部分が丸い。シャープな先の部分は使い始めはトレブリーですが先が適度に研磨されてくると滑らか。ダイナミクスが一番つくのが何と言っても右手の指ですから指に近いとなるとピックを小型化するという考え方からきています。これは人によりますが・・・・。

ピックが小さくなるとグリップの問題が出てきますが逆アングルのように親指と人差し指を伸ばした状態でつまむスタイルは小さいほうが弦をヒットした時の抵抗感はありません。逆に人差し指を曲げる「グー」スタイルは大きいピックのほうがいいのかもしれません。このULTEX JAZZⅢは小型なのに厚みがあるのでグリップの塩梅がよく先が薄めになっているのでヒット時のノイズも少ない。できればスタンダード赤の形状でこの中心厚をやってほしいものです。

しかし、小型化も際限がありません。スティーブルカサーやリーリトナー使用のマンドリン型ピックも使ってみると意外といいです。メーカーによって形状は様々ですがこのダンドレアのプロプレックシリーズ1.5mmはシックリきます。王道の材質セルロイドがソフトでいてシャープなアタックがあります。ホームベース型をマイルドにしたやつもなかなかいいですね。このダンドレアはアメリカで古くからある老舗メーカーで日本で代理店が無かったのかあまり印象はありません。昔、ビンテージギターのハードケースのポケットに数枚入っていた記憶がありますが認識はそんな程度。厚さは1.5mmですが小型な為、硬く感じますが丁寧な面取りでスピード感は落ちません。カッティングもスムースマイルド。

オーバードライブペダルのチョイスと同じでシングルノートのリードとコードカッティングをスピーディーに使い分けられるピックが重要です。前にも書きましたが自分に合うピックを見つけるというのもありますが、ピックやギターに弾き方を合わせるのも有りです。その基本はアンプから出ている音とピックをあてる角度や深さを常に気にする必要がありますね。基本は弦と平行にピックをヒットするのがコンプ感が少なくダイナミクスがつけやすいですがスピードをつける場合抵抗がついてくるので角度が必要になります。そこが一番悩ましいところです。

普通はこのJAZZⅢタイプや小さいピックはスピード重視のテクニカルギタリスト御用達ですがゆっくりなシングルノートを粘っこく弾くにも実にいい。レゲエのカッティングもバッチリ。