Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

Nothin But Love

2012-09-17 03:02:22 | BLUES

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この夏にリリースになったロバートクレイの新作「Nothin but love」。彼のアルバムは全部聞いていますが相変わらず円熟のロバート節が炸裂しています。何も新しいことにチャレンジせず濃縮コンテンポラリーブルースのパッケージ。ジャケットセンスも相変わらず。

86年代に大ヒットした「スモーキンガン」から28年、一貫してスタイルを変えずにきていることも信用できるロバート兄貴。2000年に入ってからプロデューサーを変えて雰囲気も多少変化させましたが今回はベースにデビューからの旧友Richard Cousinsを前作から向か入れ90年の傑作アルバム「Midnight Stroll」に結成したニューロバートクレイバンドのキーボード、Jim Pughがしっかりサポートしています。またプロデュースは大物ハードロックの名盤を作り続けている現代のマーチン・バーチ、ケヴィン・シャーリーが担当。スタジオライブ的なサウンドですが細かく丁寧にミックスが施され大人のバンドサウンドを堪能できます。ドラムが素晴らしいので誰かと思いきやTony Braunagel !BBキングやオーティスラッシュ、エリックバートンなどのR&Bブラック系で活躍のプロデューサー&ドラマー。無駄の無い渋いビートは実に玄人好み。

 全編、生の演奏にこだわった質感でストラトキャスターの音が素晴らし過ぎる。現行フェンダーのシグネイチャーモデルとマッチレスのコンビネーションは93年の「Shame+a Sim」から同じですが、限りなくクリーンに近いクランチはすでに定番。マイナーブルースとメンフィスソウル直系のソングライティングはひとつのブルースのスタイルを確立していますがこれが日本人には遠い存在なのが残念でなりません。アメリカのロックの根底に流れるルーツとそこから派生したモダンなジャンルには日本人が追いつけないところがたくさんありますがまさにクレイのブルースがそこにあります。シングルヒットなんか出てしまうとアルバムの価値が下がるほどの渋いナンバー集ですが、どっぷりルーツじゃないけど薄く感じないのはロバートクレイの断固たるオリジナリティーのパワーでしょう。

 こんないいストラトサウンドを聞いてしまうとまたイジリたくなるフェンダー。結局このクランチがストラトの基本で力強いピッキングのハーフトンとフィンガービヴラートはストラト弾きにはたまらないところなのでこれは外せないアルバム。アタリ!

 


Live In Japan

2009-09-24 01:28:00 | BLUES

Live in Japan
「 B・B KING とくればライブにつきる!」という諸先輩方はたくさんいらっしゃいます。それはあたっていますがこの1971年のBB初来日の実況録音盤は凄すぎます。下手をすると名作といわれている作品の中でNo1になるかもしれない。BB自身が40歳という脂の乗った時期の歌とギターはチョッと普通ではない。バンドもBB楽団の中では最高峰のサニーフリーマンのドラムが炸裂していてBBのギターも燃え上がらずにはいられない。

余談だがこのとき使ったBBのアンプは日本製のエーストーンのトランジスタアンプ。言われないといつもの銀パネツインリバーブと思っていた。それにしてもハムバッカーの素晴らしいナチュラルクランチ。世界中どんなアンプでも同じ音を出すBBは本当の意味でプロギタリスト。


ヤバイよ ロベン!

2008-03-27 00:28:50 | BLUES
トゥルース

2007年の夏にリリースされたロベンフォード「truth」。ブルーライン解散後からのソロ作品の中ではダントツ!最高傑作!シビれて参りました師匠。

何かここ10年間のソロ作品はバンドに執着せずコンセプトや曲、歌を大事にし過ぎてギターが炸裂していなかったような気がする。ところがこれは凄い。ダンブルアンプと数々のギターの音、フレーズがワイルドで生々しい。アンプのサランネットに頬ずりして聴いている様だ。楽曲も好きなようにギターが弾きたい!という曲ばかりでどれもカッコ良く渋い。ギターのテンションだったら88年の「TALK TO YOUR DAUGHTER 」あたりと同じ、いや渋さが加わってそれ以上だ。

歌うシングルノートのブルース。フレットボードを縦横無尽に動く絶妙なタッチ&トーン。まさに職人技としか言いようが無い。参加ミュージシャンも大御所から若手まで。JAMの雰囲気がダイレクトに伝わる録音。なんたってみんな憧れるこのオーバードライブサウンド。こんなのを待っていました。

カールトンとのジョイントライブ終了後、ギターオヤジたちが最前列でロベンのダンブルアンプを携帯のカメラで撮っていたら、ギター・テックがロベンのギターを持ってきて説明し始めたのには驚いた。私も同じく撮ったのがこの写真。

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これはライブでメインに弾いていたカールトンの57年製オールドレスポールゴールドトップ。迫力ありました。その後に説明し始めたのがジャケットに映っているロス在住の日本人ギター製作家、サカシタ氏の美しい工芸品のようなレスポールモデル。これがまたいい音。足元にはかなり使い込んだショーバットのヴォリュームペダル。鳥肌立ちました。

ブルースとジャズが混ざり合っているが、キッチリ濃い大人のブルースロックの傑作。


オリジナルジャケット

2008-03-21 22:01:18 | BLUES

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いまさら説明不用の1968年リリース「エレクトリックレディランド」のオリジナルジャケットアナログ盤。気づいたらこの音源、アナログ2枚、CD3枚も所有していた。何百回聴いたかわからない。このニューヨークのプロの御姉様たちの曇った微笑みとアルバムタイトルが妙にスピリチュアルでアートだった。

このジャケットは欧米で発売禁止となり、現行CDのジミの顔のアップになってしまった。現在のデザインを最初、輸入CDで見たときはブートと思ったほどだ。とかくこの時代のロックには発禁になるジャケットが欧米には多く存在する。それは宗教上か政治的問題か何某かの意図があった。アルバムジャケットのデザイン集団「ヒプノシス」なんかが手がけたハードロック、プログレッシブロックなんかのアルバムは発禁が数多い。しかし、そんな問題を含んだオリジナルジャケットが平気で販売されていたのは日本だけである。民族の違いなのか精神性の違いなのか、わかってなかったのか世界的にも珍しいオリジナルジャケの宝庫の国。

当時のロックミュージックが放つメッセージはサウンド、ジャケットアート全てがトータルである。聞き手も音を聞きながらジャケットをナメまわすように読んだ。ライナーノーツにロック評論家がそれぞれの見解を書く。コアなリスナーは耳と目で情報を仕入れ、そうやってアルバム全体を堪能する。今のようなダウンロード販売、売れる為のインパクト重視のジャケットだとその辺の感覚は理解不能だ。名盤と呼ばれるものはジャンルを問わずジャケットが皆素晴らしく、ジャケットだけでもそのサウンドのイメージが湧いてくる。

記録媒体の変化とストレートじゃないと許されない表現の現代においてジャケットの重要性ってあるのだろうか。聴覚や視覚で感じ取るその裏の匂い。そこが一番重要でパワフルなところだと感じるのだが。そこを理解すると何万回聴いても飽きないのである。

次第にジミはこの裸の御姉様たちで何を表現したかったのかが見えてくる。


グレート!レイヴォーン

2008-03-19 20:58:00 | BLUES

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大変レアなスティービー・レイヴォーン1985年の最初で最後の日本公演 の模様を収めたレーザーディスク。いかにも日本人がデザインした様なベタなジャケット。一部ブートであるらしいが正規にDVDにもなっていない日本が誇る作品。

しかし、内容はとんでもなく素晴らしい。レイヴォーンの死後、世界中でいろいろな映像がリリースされたが、どれも現地のTV番組的なものであっさりしたものばかりだ。ブレークする寸前の死だったために正規版の映像作品としては無かったのだが、よくこんな凄い映像を日本で作っていたものだと感心する。

1985年はまだブルースがリバイバルする前の一番冬の時代。レイヴォーン自身もデビットボウイの「レッツダンス」のセッションで世界的に名前が売れ始めたときに真っ先に目をつけるなんて日本人もやるもんだ。それもレイヴォーンがアルコール中毒でドクターストップ寸前の一番濃いプレイを90分近くにまとめた編集無しの1日だけの実況版。他のメンバーはほとんど映らなくレイヴォーンオンリーのショット。手元でのコントロールは全て判別できるギタリストにとっては美味し過ぎるものばかり。映像全体が暗く照明も地味だが、ギターのトーンはどのスタジオテイクのCDよりラウドで最高だ。あの歴代のストラトを全て使用し、それぞれのキャラクターの違いを確認できるというオタクも喜ぶ内容。ストラトサウンドの究極がある。それにしてもギターワークが素晴らしい。「イン・ステップ」以降の多少ポップな味付けもいいが、最初の絶頂期のトーンが満載だ。

後になって関係者のコメントに演奏が始まってからのメンバーの控え室には空のジャックダニエルが3本転がっていたらしい。デジタルマスタリングしたDVDでの再発を全世界のストラト野郎が望むだろう。