この夏にリリースになったロバートクレイの新作「Nothin but love」。彼のアルバムは全部聞いていますが相変わらず円熟のロバート節が炸裂しています。何も新しいことにチャレンジせず濃縮コンテンポラリーブルースのパッケージ。ジャケットセンスも相変わらず。
86年代に大ヒットした「スモーキンガン」から28年、一貫してスタイルを変えずにきていることも信用できるロバート兄貴。2000年に入ってからプロデューサーを変えて雰囲気も多少変化させましたが今回はベースにデビューからの旧友Richard Cousinsを前作から向か入れ90年の傑作アルバム「Midnight Stroll」に結成したニューロバートクレイバンドのキーボード、Jim Pughがしっかりサポートしています。またプロデュースは大物ハードロックの名盤を作り続けている現代のマーチン・バーチ、ケヴィン・シャーリーが担当。スタジオライブ的なサウンドですが細かく丁寧にミックスが施され大人のバンドサウンドを堪能できます。ドラムが素晴らしいので誰かと思いきやTony Braunagel !BBキングやオーティスラッシュ、エリックバートンなどのR&Bブラック系で活躍のプロデューサー&ドラマー。無駄の無い渋いビートは実に玄人好み。
全編、生の演奏にこだわった質感でストラトキャスターの音が素晴らし過ぎる。現行フェンダーのシグネイチャーモデルとマッチレスのコンビネーションは93年の「Shame+a Sim」から同じですが、限りなくクリーンに近いクランチはすでに定番。マイナーブルースとメンフィスソウル直系のソングライティングはひとつのブルースのスタイルを確立していますがこれが日本人には遠い存在なのが残念でなりません。アメリカのロックの根底に流れるルーツとそこから派生したモダンなジャンルには日本人が追いつけないところがたくさんありますがまさにクレイのブルースがそこにあります。シングルヒットなんか出てしまうとアルバムの価値が下がるほどの渋いナンバー集ですが、どっぷりルーツじゃないけど薄く感じないのはロバートクレイの断固たるオリジナリティーのパワーでしょう。
こんないいストラトサウンドを聞いてしまうとまたイジリたくなるフェンダー。結局このクランチがストラトの基本で力強いピッキングのハーフトンとフィンガービヴラートはストラト弾きにはたまらないところなのでこれは外せないアルバム。アタリ!