読書の森

薫の危機 その5



和也は以前薫の家を訪ねた事がある。
博物館見学を欠席した薫に、報告がてら資料を届けに行ったのである。

薫は玄関まで迎えてくれた。
その時の門構えも玄関の様子も今と変わらない。
しかし、客間で紹介された両親は二人ともホッソリと小柄な人だった。

その時、香りの良い紅茶とふわふわのスフレの味が夢の様に思い出す。

つまり最初の予想と異なり、薫の両親は加害者でない。
多分被害者だ。
恐らく犯人はさっき迎えたあの夫婦だろう。

犯人の狙ったのは東守が得た情報である。
東は一流企業の機密情報を探り、某国に莫大な金額で売る事が商売だ。
得た情報をパソコンに打ち込み、それをバックアップしている。
そしてハードデイスク若しくはボイスレコーダーに保存したと同時に内容を削除する。

犯人は保存したボイスレコーダー乃至CDを狙ったと思われる。


見つかって家族を始末したら犯人は逃走する筈だ。
3日後も居るのは、見つからない証拠だろう。



あの夫婦を見た途端に、和也はここまで推理して嘘をついた。
そして、何も入っていない焼き菓子の箱をプレゼントした。
探す時間のロスを狙ったのである。


そこまで説明した和也に警官は感心した。

「随分と妄想力が豊かな学生だね〜」

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