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「薫に頼まれてた届け物をしに来た」と予め用意した嘘を伝えると、門は開いた。
ここでヨシミは門の陰にいた。
何せ機密情報のスパイと話をするのだ。
和也が戻らなければ、予め連絡しておいた和也の叔父に電話する。
叔父は警視庁に勤めていた。
ダークブラウンで統一された玄関には、ゆったりと笑みを浮かべた恰幅の良い夫婦が出てきた。
「初めまして、海南高校一年長浦和也です」
「いつも薫がお世話になります。で、つかぬ事を聞くが、薫はいつ連絡してきたのですか?」
「三日前です。それをこの焼き菓子と一緒に箱に入れてあります。何せ秘密だそうですから」
夫婦の表情が一変して険しくなった。
柔らかな仮面が剥がれると残忍な目つきに見える。
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「君も知ってるのか?」
「全然、何しろ封印した袋を渡されただけです」
「本当だね」
「はい」
そう言って和也は菓子箱を夫婦の手に渡した。
「お大事にとお伝え下さい。じゃあ失礼します」
言うが早いか、門に行く。
さっと門を出るとき間一髪のところで閉まった。
ヨシミが心配そうに近寄った。
その手を取ると和也は一目散に駆け出した。
息を切らした二人が着いたのは交番である。
「怪しい夫婦が、他所の家に侵入してます」
和也は一気に言った。
「僕の友達が3日前から学校を無断で休んでます。
多分閉じ込められてると思うんです。僕の見たご両親と違う夫婦が家を占領してます」
警官だけでなく、ヨシミも目をパチクリさせた。
「君、もっとゆっくり順序立てて話してください」