『錦繍』を渡してから何日か後、彼がちょっと照れた顔で私に本を差し出してくれた。
灰谷健次郎の『海になみだはいらない』である。
「『錦繍』良かった!これは僕からのお返しです」
元々宮本輝が好きな人で、読書の話も豊富だった。
灰谷健次郎も彼の好みなのだろう。
私は殆ど有頂天になった。
歳が違い過ぎる二人の仲が、部内で噂になった。
彼と、半同棲中の女性は、仕事は出来るし、彼一筋である。
一方、私は訳ありの、いつまで経っても大人になれない女である。
身体に障がいを持つ事が同情を集めていた。
私と同年代の上司達は彼を危険な輩と見做した。
一方彼の友達は、シカトする事で私を虐めた。
限りなく貶められている事を感じた。
ただ、熱い思いを本で伝えただけの恋は終わった。
世間の常識の棘は私の心を傷だらけにしてくれた。
テレビドラマで、17歳歳下の男を恋した女の思いを描いてた。
勿論まるで違うストーリーである。
思い出は、秋のモミジのように色を変え、移ろっていく。
しかし、『錦繍』という文学作品の抒情豊かさはいつまでも人の記憶に残っていく。
いつも読んでくださる方有難うございます。
ある試験勉強の為に、勝手ながら暫く休ませていただきます。
又再会出来る日までお元気で!
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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