松本清張の作品には、美しいが棘を持つ悪女や爛熟した女性が登場する事が多い。
魅力ある大人の女が、知恵を絞った悪事を暴くのは面白い。
これをもって、清張を女性について非常に醒めた目を持つ人と思ったら大違いである。
自伝『半世の記』を読んでも、彼は恋に極めて引っ込み思案だったし、内省的な人で、ほのかな淡い恋しか出来なかった。
その恋の相手は清らかで優しい人だったらしい。
昭和28年、『ある小倉日記伝』で芥川賞を取った後の作品は、実に瑞々しい。
描かれる女性も瑞々しく青い果実の様な魅力がある。
それは彼が後日出会う女性ではなく、心象の世界に生きる女性像だからではないか。
芥川賞受賞作しかり、以前の『西郷札』しかり、そしてこの『遠くからの声』の妹しかりである。
どうにもならない恋を、必死に守り抜く哀しい女心を描く。
今時流行らない完全なプラトニックラブである。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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