山内ジョージ ソ連兵はやっぱりこわかった
図書館で借りたもう1冊。
それは戦後、旧満州から引き揚げた漫画家達のお話です。
敗戦後の満州から日本本土への引き揚げは、それは困難なものでした。
この引き揚げ者の中に、驚く程多くの未来のそうそうたる漫画家の卵がいた事を、私は初めて知りました。
赤塚不二夫、ちばてつや、石子順、などなど有名な漫画家で、10名以上います。
今は故人が多いですが「中国引き揚げ漫画家の会」なるものがあったそうです。
恐らく、着の身着のままの引き揚げは、周りの人よりさらに貧しかったと思われます。
学歴もコネもなかった彼らは、食べていく為、得意の漫画を描いたのです。
もはや失う物はないと言う強さが、子ども心に植え付けられて、創作の肥やしになったようです。
本土へ逃亡する途中、零下20度という冬の凍てつく満州で、飢えた引き揚げ者はバッタバッタと死んでいったそうです。
その数は不明で、18万とも24万とも言われてます。
遺体を埋めようにも土が硬く、どこも掘れない。
そして生き残った人も凍死しそうなのです。
そこで、亡くなった人の着ていた服を剥がし生きてる人が着こんだと言います。
子供だった漫画家たちはそのような地獄を見聞きしたのですね。
帰国しても引き揚げ者として特殊な目で見られる事もあったとか。
このような命がけの体験をした後、突き抜けた楽天性が生まれたと言います。
「自分の生存場所を確保しいじめを克服する」
「生死紙一重のこわさが生きる力になる」
そんな実感を得たそうです。
幸いにして今生きる人の殆どは戦争を知りません。
何事も実体験がなく、事情が分からないと、伝わってこない事が多いです。
しかし、全編に流れるマイナスの体験をプラスに変えていくエネルギーは勇気を与えてくれるものです。
「若い人の励ましになればと思ってこの本を作った」という著者の言葉は実に暖かく響きました。