宮本輝の最初のエッセイ『二十歳の火影』は1980年代初めに上梓された。
芥川賞受賞作『蛍川』の前後に書かれた豊かな感性の滴る様なエッセイが集まっている。
エッセイの一つ一つが優れた短編小説で、贅沢過ぎて勿体無い気がしてしまう。
宮本輝のファンならご存知だと思うが、小説家になるまでの彼の人生はドラマティックだった。
波乱万丈な人生行路は、全て破天荒な父親が開いたものである。
彼は父親が50歳の時に仲居をしていた母との間に出来た子どもである。
子に恵まれる事の無かった父親は狂喜して溺愛した。
今まで築いた財産もよく出来た妻も全て捨て、母と子を連れて転々とするのである。
父親は、豪快で事業を起こす実力があった人だが、熱い心を持ち情に脆かった。
彼の幼少期は、父親の流転と共にあった。
父親は彼の為に懸命に頑張るが、事業は有為転変を繰り返す。
貧乏は音を立て一家を襲う。
自棄になった父は若い女の許に走り、母は自殺を図る。
幸い未遂に終わったが、まだ子どもの作者の前で酒で憂さを晴らす様になった。
尋常でない出来事をまるで哀しい音楽の様に宮本輝は語っていく。
この人にかかるとひどく惨めな生活が不思議な魅力を持って迫るのだ。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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