読書の森

秘密の張り込み その3



藤堂は24時間張り込みを続けている振りをしながら陰で秋田の身元を調査した。
昔の親しい刑事仲間に事情を話して秋田の商売の実態を調べてもらったのである。

その結果とんでもない事実が判明した。
秋田は表向きは古美術商だったが、まがい物ばかり並べた店の別室で大量の麻薬取引を行っていた。(つまり自分の信頼の出来る人間と実際の会話で取引している。残る証拠を消す為会話しかしない)
もっとも、麻薬の現物は店になく、各地に散らばる秋田の古い馴染みの売人の連絡先になっていた。
秋田は彼らの行動の調整を図り、古美術の輸入と偽って海外からヤクを仕入れていたのである。実際に連絡するのはこれも信用できる手先である。

ヤクと金欲しさの売人たちが、盛り場で客に声をかける。
客が客を呼び、イタチゴッコの様に悪事は無くならないのだ。

実は、小山麻美は夜の新宿を彷徨う中で売人に間違えられたのだ。
本来素人の女がうろつかない場所にいた事と、その時の彼女の鋭い荒んだ表情が誤解の的だったらしい。
多分同じような体型の女性が売人仲間にいたのだろう。
大量のヤクを受け取った時、疲れきっていた彼女は殆ど朦朧としていた。何を受け取ったのかも確認していない。
ただ受け取ったモノを無意識のうちに自分の鞄の中にしまっただけである。

彼女は帰宅後その鞄をクローゼットの中に入れた。これも無意識の習慣だった。
彼女の非常に激務だった医局勤務時代の名残りである。

そしてそれはずっとそのままだった
何故なら医局勤務時代に持っていた鞄自体彼女にとって捨てきれないが不要のものであったからだ。



秋田はなんとしてもこの大量のヤクを取り戻して、そのあと人知れず麻美の始末をつけたいだけである。
しかし、堅気のしかも在宅勤務の女をこっそり始末するのは、下手すれば自分たちの組織が知られる恐れが大である。
そこで血の気の多い藤堂をストーカーにしたて、麻薬を取り戻した上で、最終的には無理心中を装って二人とも始末しようとしたのだ。

藤堂は知人の助けを借りてここまで調査して唖然とした。
そして秋田の悪辣なやり口に、怒り心頭に達したのだった。

彼は、涼しい風が吹き始めた晩、自分の住む安アパートに秋田を呼んだ。

追記:
冒頭で、コロナ禍によって一層過酷な労働を強いられている世のお医者様方に失礼極まる発言をした事を深くお詫び致します。

ただ、自分としては作品の出来不出来が1番気になるものです。
非常に出来の悪い箇所で、しかも医大生の彼女の失恋した部分が人気を得たのを疑問に思って想像力を逞しくして、あのような失礼をお医者様に働いた次第です。
申し訳ありませんでした。



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