谷崎は『母を恋うる記』、芥川は『杜子春』など、子どもの心に帰った作品を残してます。
最初は平易な物語から入った私、その内シビアな作品に惹かれるようになりました。
シビアな作品と言えばミステリー、描く世界は不条理に満ちてますが、その泥沼を読む以上に、事件の謎や真犯人を探っていく過程、過程に相当な魅力がありました。
中学、高校と理屈っぽい盛りに「探偵小説』を読むのが大好きでした。
ただし、幾何や物理など理科系が苦手でした。今更遅いけどしっかり理数系を勉強してれば良かったと後悔しきりです。
理数系の学科をきちんと学べば、物事の筋道を正確に推理する能力が付くと思うからです。
話が飛びました。ごめんなさい🙏
さて、文豪の探偵小説を収めたこの文庫本。
さて、文豪の探偵小説を収めたこの文庫本。
『途上』は既に何回も紹介してるので、今日は谷崎潤一郎の『私』と芥川龍之介の『藪の中』を改めて紹介します。
先ず谷崎潤一郎の『私』は、冤罪?を扱ったものです。一高(今の東大)の学生寮で頻繁に起きた盗難事件の犯人と疑われている私の話です。
ここで谷崎潤一郎は実に平易に人の心の真実を明かしてます。悪意の怖さだけでなく善意の思い込みについてリアルに描く物語にしてます。
言葉遣いなど読みにくい点はあるにしても、今のご時世にも通じるお話です。
芥川龍之介の『藪の中』は戦後間もなく『羅生門』の名で映画化され、海外でも評判でした。
芥川龍之介の『藪の中』は戦後間もなく『羅生門』の名で映画化され、海外でも評判でした。
時は平安時代、身分ある旅人夫婦が悪名高い盗っ人に襲われた物語であります。
夫は無残にも殺害されるのですが、生き残った証人(現場に居合わせた人、盗っ人、生き残った妻など)の話はそれぞれ違うのです。物語の最後に殺された男の死霊の告白が記されてますが、果たしてこれは真実なのか?
本当に男は殺されたのか、殺されたなら誰に?か、妻を強盗に凌辱されて自決したのか、妻はどう言う思いで逃げたのか、夫を愛してたのか、盗賊は最初から殺す目的だったのか、果たして凌辱か合意か、、、。
など見方によってどう解釈も出来る、非常に残酷な物語です。
事実がそのまま伝わらない、真相は一つの筈なのに、関係者の証言が人によって全く異なる、そこには嘘もあろうし、勝手な解釈もあるし、生きてる人の都合に合わせた部分もあると思えます。
これも現代に通じる物語です。
谷崎潤一郎も芥川龍之介も人間心理について非常に鋭敏な神経を持っておられると感じます。
怖いものさえ感じますね。
息抜きにゼリーをいただきました。
私、暑い季節はこれが一番美味しく感じます。